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世代ごとに違うサステナビリティ意識

この記事は、当社の調査研究をまとめて刊行致します、「Sustainability in Japan 3: 再生型ビジネスへの道」から抜粋したものです。英語版はMediumで入手可能です。

サマリー

  • 若い世代は仕事とキャリアにおけるウェルビーイングな状態を感じられていないために、自らの成長の機会と自分の居場所に関する感覚を失っている。

  • Z世代たちは、職場のサステナビリティに関して最も高いコミットメントを示していますが、もっと多くの知識を学ぶべき余地がある。

  • 企業はサステナブルな製品をアピールし、ウェルビーイングな状態を広め、モチベーションを高めることで、個々人に力を与えることができる。

「世代」という考え方について

若い世代の従業員たちが何を思っているのかを理解しなければならない。彼らに古いやり方は通用しないからね。不満が噴出する前に、今必要な指導の仕方を考え直さなければ。

こうした企業のマネージャーたちの声がしばしば取り沙汰されるようになったのは、ちょうど「Z世代」と呼ばれる若者たちが大学を卒業して社会人になった3〜4年ほど前のことです。コロナ禍でリモートワークが導入されて職場のデジタル化が進んだことや、対面の機会が減ったことも、世代間での価値観や考え方、知識の違いを浮き彫りにした出来事でした。

世代間の違いは、これまで幾度も繰り返しみられてきたことです。例えば、アルファベットによる世代区分のはじまりとなったX世代は、ギリシャ語で「未知」を意味する「Xei」に由来し、一説には写真家ロバート・キャパが第二次世界大戦後に生まれた若者たちを撮影した際、彼らのつかみどことのなさから名付けたといわれています。¹ ²

ジェネレーションギャップに関する様々な議論には、「時代の問題(時代が変わったからだ)」という捉え方とともに、「ライフコースの問題(ただ単にその時の若者が既存の社会秩序になじむまでの反抗やその過程に過ぎない。前の世代の年長者も繰り返してきたこと)」という捉え方があります。³

また、世代で人びとを分類し分析する考え方はただのラベリングに過ぎない、マーケティング会社やコンサルティング会社が消費者調査や市場活性化のために作り出した概念だという批判があるのも事実です。⁴

長年世代に関する調査を行っている米国のビュー・リサーチセンターは、長期的な調査分析を念頭に、世代という考え方は社会が時間とともにどう変化するかを理解するのに役立つとしています。5

日本でも近年、政府が「就職氷河期世代」と呼ばれる年代の人びとを対象に就職支援を始めましたが、ある一つの出来事が、その時代を生きる人びとの機会や考え方に影響を及ぼすということは、社会である程度共有された考えと言えるでしょう。

一方で、世代という考え方を用いる際、社会の変化を世代にのみ帰結させないことや、ステレオタイプや過度な単純化につながる可能性があること、人は時間とともに変化するものであることを踏まえ、世代より個人の主体性と経験が優ることは留意すべき事項です。⁵

これらを念頭に置きつつ、私たちはそれが「実在するか」ではなく、「何を理解するのに役立つ方法なのか」4という視点で世代を捉えています。以降、日本社会が今どのように変化しているのか、何がより持続可能な社会への変化を促し、何がその妨げとなるのか、人を中心に据えて理解するための一つのツールとして「世代」という視点から見ていきたいと思います。

世代の違いについて理解する

アルファベットによる世代区分は欧米で生まれたもので、日本にも世代を表す独自の言葉がいくつか存在します。

私たちの調査分析では、国際的な視点で比較が可能なように、国際的によく用いられる世代区分ーベビーブーム世代、X世代、Y世代(ミレニアル世代)、Z世代を用いています。

これら欧米と日本の世代区分の対応と、各世代の概要は次の通りです。

ベビーブーム世代(1953-1964年生まれ*)

  • 団塊世代(1947-1949年生まれ)、断層の世代(1953-1963年生まれ)、新人類(1960年代生まれ)

  • 59-69歳* (本調査の対象は69歳以下のため)

  • 市場規模18.23M

  • 37%がフルタイム勤務、34%がその他の形で勤務、16%引退/無職

  • 高度経済成長期に育ち、社会人としてバブル経済及び崩壊を経験。

X世代(1965-1980年生まれ)

  • 新人類(1960年代生まれ)、バブル世代(1965−69年生まれ)団塊ジュニア(1971-74年生まれ)、就職氷河期世代(1971-1984年生まれ)

  • 43−58歳

  • 市場規模28.50M

  • 56%がフルタイム、19%パートタイム・契約/派遣

  • バブル経済に恵まれた年代も含まれるも、多くは就職氷河期時代を経験。日本版の「ロスジェネ」とも呼ばれる。

    ミレニアル世代/Y世代(1981-1996年生まれ)

  • 就職氷河期世代、ゆとり世代

  • 27−42歳

  • 市場規模22.11M

  • 56%がフルタイム、21%パートタイム・契約/派遣

  • デジタル技術の発達とともに成長。就職氷河期は終結するも、多くがリーマンショック以降の不景気を就職時や社会人として経験している。

Z世代(1997-2007年生まれ*)

  • ゆとり世代

  • 15-26歳* (本調査の対象は15歳以上のため)

  • 市場規模13.08 M

  • 34%が学生、32%がフルタイム勤務、17%パートタイム・契約/派遣

  • スマホやSNSなど、デジタル技術に囲まれた環境で育つ。多くは東日本大震災を多感な子供時代に、コロナ禍を学生・新社会人として経験する。

世代ごとのサステナビリティ意識と行動

サステナビリティの意識
今回の調査でサステナビリティへの意識を世代別で比較したところ、ベビーブーム世代で最も高く、X世代、Z世代と続き、Y世代で最も低くなっていることが明らかになりました。

どんな事柄を喫緊の課題と認識しているかを見ると、「気候変動」と「すべての仕事における生活賃金の保証」は世代共通で挙げられているものの、その優先度には相違が見られます。

気候変動をベビーブーム世代の6割近く(さらに4割以上が、自然環境への影響を減らすべきと考えています)、X世代の5割近くが脅威と捉えている一方、Y世代とZ世代でその割合は3割まで下がります。

一般的に、若い世代ほど気候変動や環境問題に対する意識が高いとされている欧米諸国とは対照的な結果です。⁶

世界のY世代、Z世代と比較しても、日本の同世代の気候変動に対する危機意識は徐々に高まってきているものの、未だ低く留まっているように見受けられます。⁷

暮らしの中のサステナブルな行動
実際に社会や環境への影響を考え実践・検討していることを尋ねる質問でも同様に、高齢層で実践している人の割合が高い傾向にあります。

ただし、これから実践したいという意向はZ世代で最も高く、若い世代の意欲は決して低くないこともうかがえます。その内容を見てみると、

  • 若い世代、特にZ及びY世代ではジェンダー平等への支持が最も高い

  • Z、Y、X世代がこれから実践しようとする項目は、省エネ・再生可能エネルギーやプラスチック消費の削減など、日常生活の中でできる環境負荷削減に関する行動が多い。X世代は電気自動車への関心も高くなっている

  • ベビーブーム世代はすでに実施している項目も多く、消費行動全体としてよりサステナブルな企業・ブランドを支持しようとしている

ということがいえそうです。

サステナブルな選択を妨げるもの

サステナブルな選択を妨げるもの
では一体何が、日本の若い人びとが環境や社会の課題を意識したり、よりサステナブルな環境・社会に向け行動することの妨げとなっているのか。

まず、その背景の一つに経済不安にあるということが、「気候変動」より「生活賃金の保証」を重要課題とする若い世代の割合が多いことから推察できます。

危惧している経済・社会課題を見ても、Z世代、Y世代が増税や家賃の支払いといった、今日明日の家計と直結する事柄をあげていることもこの裏付けといえます。

グローバルで見ても、Z・Y世代は環境の持続可能性を優先した消費をしたいと考えているものの、経済的な懸念から難しさを感じているという調査結果が出ています。⁸

また、私たちの調査でサステナブルな選択を阻む障壁を聞いたところ、若い世代の半数以上が経済的制約を挙げ、次いで時間や知識の乏しさを挙げています。

このことから時間的・経済的余裕は、人的ネットワークや情報へのアクセスなどとともに、社会や環境課題を意識し、関連する知識や情報を得て、ポジティブな影響を生む行動を起こすための重要要素であることは明らかです。もっとも、経済的な制約は全世代共通し最大の障壁として挙げられており、若い世代に限ったことではないといえます。

ウェルビーイングとサステナビリティへの意識について

今回、私たちはこの「社会的・環境的課題を意識し、ポジティブな影響を与えるための行動を起こす余裕」について、経済的・時間的な要素だけでなく、ウェルビーイング(その人個人が身体的、精神的、社会的に満たされた、良好な状態であること)を実感し、充実した生活を送れるよう、自身をケアできているという視点を通じ、より深く考察しています。分析の結果、サステナビリティ意識とウェルビーイングの状態は明確な相関関係があることが分かっています。世代別に主観的なウェルビーイングの状況を比較しても、サステナビリティへの意識が高いベビーブーム世代で最もウェルビーイングが高く、意識が低いとされたY世代では低いという結果になっています。

サステナビリティへの意欲は決して低くはないZ世代は、ウェルビーイングの状態もベビーブーム世代に次いで高いという結果からも、ウェルビーイングは個人がサステナビリティを意識したり、これに向けて行動したりする上で重要な土台の一つといえるでしょう。一方、ウェルビーイングの状況がY世代に次いで低いにも関わらず、サステナビリティへの意識はベビーブーム世代についで高いX世代については、別途考察の余地がありそうです。

項目別のウェルビーイングを見ると、経済的な安定や満足度(Financial Wellbeing)と、仕事やキャリアの充実度(Work and Career Wellbeing)が全世代を通じて低くなっています。経済的な制約は、先に見てきた通りグローバルに見ても、また日本では世代を問わず、サステナブルな行動を妨げる大きな要素です。一方の仕事やキャリアに関するウェルビーイングは、他国と比べ低い状況にあるといえます。⁹

職場におけるウェルビーイング
今回の私たちの調査では、仕事やキャリアに関するウェルビーイングについて、さらに踏み込み調査分析を行っています。全世代を通じ最も低い結果となっているのは、仕事や職場への主体的な関わりや貢献(エージェンシー・エンゲージメント)と成長・キャリアに関する項目です。

国際的な調査結果からも、日本の従業員エンゲージメントや成長実感の低さが指摘されていることからも、これらが仕事やキャリアに関するウェルビーイングを下げる要因となっていることがうかがえます。⁹ ¹⁰

世代別に見ると、エージェンシーやエンゲージメントに関する項目はZ世代で最も低く、年齢が上がるにつれ徐々に上昇しています。同項目の内容を見ると、「仕事や職場をよりよくするために自分にできることを考えたり、アイデアを思いついたりする」 「思いついたことを、同僚や上司に話したり提案したり、実現のために行動したりする」人の割合は若いほど低く、多くがそもそもアイデアや気づきを出そうと思えない、思いついても共有しようと思えない状態にあることが分かります。

一方学びや成長実感に関する内容では、Z世代で最も高く年齢が上がるにつれ一度下がり、ベビーブーム世代で微増する傾向にあり、キャリア途中でのリスキリングや学習、新しい分野への挑戦等の後押しが求められているといえそうです。

また自分の望むキャリアを歩めているとした人は全世代を通じて低く、特に就職氷河期を経験した人の多いX世代で最も低くなっています。

組織としての方向性やその中で求められる役割・業務と、個人として望むキャリアとのバランスをいかに取って行けるか、企業と個人双方の働きかけが求めれます(Ueyama Tomoeさんインタビュー参照)。

企業のサステナビリティ活動への関わりかた

 
企業が行うサステナビリティ活動への関わりについて見ると、全体で4割以上が自分の勤務先のサステナビリティ活動についてわからない(実施していない企業も含む)という結果となり、社内広報やコミュニケーション不足が垣間見えます(図10)。

取り組み内容別では、全世代で認知率2割を超えるのは社員教育・研修のみ、製品の品質と安全性で1割以上となっています(図11)。またベビーブーム世代とX世代では廃棄物削減、Y世代とZ世代ではジェンダー平等の方が認知率が高く、全般的なサステナビリティへの意識で見てきたように、世代間の興味関心の違いがあらわれています。

ここで着目しておきたいのは、「主導/積極的に推進している」人の割合がZ世代で最も高くなっている点です(図10)。取り組み別の認知率を世代別に比べても、Z世代が最も多くの取り組みを認知していることから、より幅広い概念としてサステナビリティを捉えているということがうかがえます。

また、若い層ほど勤務先の関連する取り組みについて「知らない・わからない」人の割合は多いものの、「認知しているが、関与していない」人の割合は低くなっています。

職場のサステナビリティ活動がモチベーションを上げると回答した人の割合も、Z世代では28%と3割近く(Y世代:22%、X世代:22%、ベビーブーム世代:26%)(Fabric, 2023)、若い人びとは職場で行われているサステナビリティ活動の内容やその趣旨について知り、関われるような機会があれば、主体的・積極的に貢献しようという意欲は決して低くないといえます。

一方、「認知して関わっている」人の割合は世代間でさほど変わらず、高齢層ほど「知ってはいるが、関わっていない」とみられる人の割合が高くなっています。

こうした意欲や関与度は、特別な働きかけがない限り固定化されることも想像されることから、特に高齢層のエンゲージメントが低い人層へのアプローチは別途検討する必要がありそうです。

サステナブルなアクションを後押しするためにできること

これまで見てきたように、日本のサステナビリティ意識や実践は徐々に広まってきているものの、まだまだ発展途上です。各世代の人々の、よりサステナブルな生活や仕事・キャリアをサポートするために、企業はどうアプローチすべきでしょうか。

一つは、リサイクルやプラスチック消費の削減など、日々の生活の中でのサステナブルな習慣をまず確実に進める支援とともに、省エネや再生可能エネルギー・電気自動車への乗り換えなど、自宅を中心としたサステナブルなシフトを後押しするような支援を、商品やサービス、コミュニケーションを通じて行うことが考えられます。

また、若い世代では、ジェンダー平等など社会的な課題への関心を寄せていることや、ベビーブーム世代を中心に今後消費行動全体として、よりサステナブルな企業・ブランドへのシフトも徐々に進むことも念頭に置く必要があるでしょう。
 
また、経済不安と同様に、若い世代のサステナブルな選択を阻む障壁となっている仕事とキャリアに関するウェルビーイングは、雇用主として企業が大きく貢献できる分野です。ワークライフバランスや働き方に人びとが自分ごとと捉えられること、職場の人間関係やセクシュアリティや国籍、年齢等に関係なく受け入れられていると感じられる環境などはもちろん、取り組んでいる仕事に意義を感じられるか、成長を実感し、望ましいキャリアを築けているかといった視点で見た時の、働き手個人と組織双方にとっての「持続可能性」をいかに高めていけるか、今後求められることになりそうです。特に、多くの日本企業にとって、組織としての方向性やその中で求められる役割・業務と、個人として望む方向性をいかにすり合わせ、バランスをとっていくかはチャレンジの一つとなるでしょう。

そして企業組織として行うサステナビリティ施策や活動は、それらが組織で働く人びとにとってどのような価値があるのかを伝え、自分ごととして捉えてもらい、認知度を上げていく必要がまずありそうです。そして企業は、職場でのサステナビリティ活動を通じ、そこで働く人びと、とりわけ若い世代の仕事や組織へのエンゲージメントを育んだり、異なる世代間の相互理解を促したりする機会、ひいては社会や環境への貢献意欲や実践を促すようなコミュニティをつくり出すことができる可能性を持っています。

Boomers | ベビーブーム世代(1953-1964年生まれ*)

  • Sustainability consiousness:4世代の中で、サステナビリティ意識の高い人の割合が最も多い世代です。特に環境問題へ関心を寄せる人が多く、約6割が気候変動に危機感を持ち、4割以上が自然界への影響を削減すべきと考えています。多くがすでにリサイクルなど日常的な習慣として環境負荷を減らす取り組みを実践しており、今後消費行動全体として、よりサステナブルな企業・ブランドへシフトしていく可能性が高いと思われます。一方で、以下に見るようにサステナビリティという概念理解がやや環境領域に偏っている可能性もあります。ウェルビーイングの状態は総じて若い世代と比べ良好ですが、身体的な健康や、仕事・キャリア、また日常生活の中での学びや刺激に関する満足度はやや低い状態です。

  • Engagement at work:勤務先におけるサステナビリティ活動に関しては、関与している人の割合は高い一方、認知しているのに関与していない人の割合も最も高く、ポジションや担当業務等によって二極化している可能性があります。また、認知している内容にもやや偏りが見られ、例えばサステナブルな商品やサービスの開発、倫理的な事業活動の推進、サステナブルな企業への投資やパートナーシップ、透明性のあるサプライチェーンとその管理などへの認知率は全世代の中で最も低く留まっています。

  • How to empower:今回の調査対象外の70歳以上を含めると、日本では高い人口比率を誇る年代であり、彼らの企業・ブランド選択のサステナブル・シフトを後押しすることは、一定の影響があるでしょう。例えば彼らの健康や環境への貢献を支援したり、知識欲を刺激したりするような商品やサービス、情報提供などが考えられます。一方で、社会やガバナンス領域でのサステナビリティ活動への認識はやや低いとも考えられることから、特に組織内でのこうした活動への理解促進はまだまだ必要といえそうです。

  • Key words:環境問題、気候変動、老後資金、年金、健康、日々の生活や仕事の中での学び・刺激

Generation X | X世代(1965-1980年生まれ)

  • Sustainability consiousness:X世代は、Y世代と大きく変わらず低いウェルビーイングの状態であるにもかかわらず、ベビーブーム世代に次いでサステナビリティ意識のある人の割合が多くなっています。気候変動も半数近くが喫緊の課題と認識しており、自動車の利用を控え、リサイクルを実践しています。一方で、老後資金や年金など、将来的な経済不安をよりリアルに感じている人の多い世代でもあり、彼らがさらなる環境や社会への貢献に取り組んでいけるかどうかは、今後の経済状況にも影響を受けそうです。

  • Engagement at work:バブル経済や就職氷河期など、社会経済の変化に翻弄されてきた世代であり、他の世代と比べ、現状の仕事は安定していると思える人は多くありません。組織の中では、責任あるポジションにある人も多くなる年代にもかかわらず、全体的に望ましいキャリアを歩めていると思える人の割合は4%以下に留まります。しかし少数ではあるものの、学びへの意欲や成長実感はZ世代に次いであり、仕事や職場に対するエージェンシーも他世代に比べある層です。

  • How to empower:企業は、彼らが仕事に対し十分なエネルギーを持って安心して働ける環境を作り、より様々な分野でリーダーシップを発揮し、望ましいキャリアを築いていけるような支援ができる存在です。生活においては、日常的な環境負荷削減の次なるステップとして、省エネや再生可能エネルギー・電気自動車への乗り換えなど、自宅を中心としたサステナブルな生活変容を後押しするような支援が考えられます。

  • Key words:再生可能エネルギー、電気自動車、老後資金、雇用安定

Generation Y/Millennial | Y世代/ミレニアル世代(1981-1996年生まれ)27-42歳

  • Sustainability consiousness:4つの世代の中でサステナビリティ意識も実践している人の割合も最も低く、約7割が否定もしくは意識の低い層に分類されます。気候変動より生活賃金の保証を重要視する人の割合が多く、半数近くが老後のための貯蓄や増税に不安を持つなど、経済不安がネックとなっている人の割合が高いと考えられます。また、ウェルビーイングの状態も他の世代と比べて低く、特に仕事とキャリアに関する満足度は2割程度です。

  • Engagement at work:職場においては、責任あるポジションにつく人も増える年代にも関わらず、現職でありのままでいられない、ポジティブな気持ちでいられないという人の割合が高く、学びや成長実感も低くなっています。

  • How to empower:日本のY世代が、欧米の同世代のようにサステナビリティに意識を向け行動するにはまず、彼らが過度な経的不安のない充実した生活を、とりわけキャリアの面で充実感を感じ、他者や社会、環境へと目を向けられるような状態をつくることが重要です。その上で、サステナブルな社会を築いていくことが、彼らの生活をよりよくしウェルビーイングを高めることにつながると認識してもらう必要があります。具体的なサステナブルな選択としては、日常生活の中で実践でき、かつ環境と自分たちの生活双方をより持続可能なものにしてくれるような提案が、比較的受け入れやすいと考えられます。仕事や職場では、彼らの関与・貢献したいという意欲の芽を摘まず、成長を感じ続けられるような環境づくりが求められます。組織のサステナビリティ活動に関しては、彼らにとっても意義のある取り組みであるという共通認識を築き、自分ごと化してもらう必要がありそうです。

  • Key words:経済的安定、生活賃金の保証、キャリアにおける成長実感、私にとって持続可能な仕事と生活

Generation Z | Z世代(1997-2007年生まれ*)15−26歳

  • Sustainability consiousness:日常生活と職場双方で、社会・環境への貢献意欲は決して低くない世代です。気候変動等の環境問題に加え、賃金保証や特にジェンダー平等やLGBTQ+関連課題、地域など、社会課題への意識が比較的あり、経済的な制約はあるものの、これからより多くのサステナブルな実践をしたいという意欲も持ち合わせています。ウェルビーイングの状態も、年配世代と比べメンタルヘルスへの満足度がやや落ちるものの全体的には高く、特に日々の生活の中での刺激や学びを得る機会は多いようです。

  • Engagement at work:組織の中では若手ということもあってか、エージェンシーが最も低くなっています。また他世代と比べ、評価や待遇への満足度も低く、仕事の意義・やりがいを感じにくいようです。一方で、組織内でのサステナビリティ活動への関与には積極的で、環境課題に関わらず、様々な領域へのアンテナもあります。

  • How to empower:日常生活と職場双方で、Z世代の社会・環境への貢献意欲は決して低くないことを鑑みると、彼らをエンパワーメントしていくことは、社会全体や企業としてサステナビリティへ向けた取り組みを加速する上で重要です。特に職場での活動への関わりに積極的であることから、例えば、彼らが関心を寄せるサステナビリティ分野の取り組みに、主体的に関われる場を提供するなど、サステナビリティを通じエンゲージメントを高め、仕事への意義ややりがいを感じてもらうのは有効な方法となり得ます。日本では世代を問わず、個人の持つインパクトより集団的なインパクトの方が大きいと見る傾向があることからも、職場は彼らが似たような興味関心を持つ人とつながり、より良い影響を与えていこうとする大切な場やコミュニティとなりえるでしょう。

  • Key words:ジェンダー平等、LGBTQ+、メンタルヘルス、ローカル、働く意味


参考文献

  1. Henseler, C. (2014) Generation X: What’s in the Label?. HuffPost. https://www.huffpost.com/entry/generation-x-whats-in-the_b_5390568

  2. Hirose, R. (2021) 世界の人口における割合は32%?世界的に注目されるZ世代はなぜ「Z」と呼ばれているのか. 新社会人のための経済学コラム. 日本生命. https://www.nissay.co.jp/enjoy/keizai/137.html

  3. Mathews, G. & White, B. (2004) Introduction: Changing generations in Japan Today, in
    Mathews, G. & White, B. (ed.) Japan’s Changing Generations: Are Young People Creating a New Society? London: Routledge.

  4. Nast, C. (2021) It’s Time to Stop Talking About “Generations”, The New Yorker. https://www.newyorker.com/magazine/2021/10/18/its-time-to-stop-talking-about-generations

  5. Dimock, M. (2023) 5 things to keep in mind when you hear about Gen Z, Millennials, Boomers and other generations. Pew Research Center. https://www.pewresearch.org/short-reads/2023/05/22/5-things-to-keep-in-mind-when-you-hear-about-gen-z-millennials-boomers-and-other-generations/

  6. Nadeem, R. (2021) Gen Z, Millennials Stand Out for Climate Change Activism, Social Media Engagement With Issue, Pew Research Center Science & Society. https://www.pewresearch.org/science/2021/05/26/gen-z-millennials-stand-out-for-climate-change-activism-social-media-engagement-with-issue/

  7. デロイト トーマツグループ. (2022). Z・ミレニアル世代年次調査2022 予測不可能な未来を見据えるZ・ミレニアル世代のキーワードとは? https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/about-deloitte/about-deloitte-japan/jp-group-genzmillennialsurvey-2022.pdf

  8. The Deloitte Global 2023 Gen Z and Millennial Survey (2023). https://www.deloitte.com/global/en/issues/work/content/genzmillennialsurvey.html

  9. グローバル就業実態・成長意識調査-はたらくWell-beingの国際比較 — パーソル総合研究所 (2023). https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/global-well-being.html

  10. Gallup, I. (2023) Indicator: Employee Engagement, Gallup.com. https://www.gallup.com/394373/indicator-employee-engagement.aspx


ファブリックは、企業がより革新的で持続可能な未来に向かって進むことを支援し、戦略的デザインの構築やサステナビリティ活動が直面する、様々な課題の解決を支援するコンサルティング企業です。2004年の設立以来、東京を拠点にグローバル企業や地元企業に対してデザイン思考、サステナビリティに関する知見、深い人間洞察力を結集し、優れた戦略をクライアントに提供しています。

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