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【可変システムに有する時間】|マンチェスター・シティ×トッテナム|23/24プレミアリーグ第14節|マッチレビュー

前節リヴァプールと勝点を分けあったマンチェスター・シティ。ここ数試合リードはするものの、そのリードを守れずに勝点を落とす試合が多いペップシティ。失点数も重なっておりそこは今のチームの一つの課題なのは間違いない。そんな不安要素がこの試合でも浮き彫りに!?

シティがホームで迎えるは難敵中の難敵。トッテナム・ホットスパーFC。今季からスパーズを率いるはポステゴクルー監督。セルティック、そしてJリーグでマリノスを率いた監督がプレミアリーグの舞台で、ペップ・シティと真っ向勝負を演じた。

それでは簡単ではありますが、試合を振り返っていきましょう!

▪️WG経由でIHを前向きに

試合開始直後。試合は早速動いた。
スパーズがロングカウンターからソンフンミのゴールで先制。もはやソンフンミのカウンターからのゴールはこの一戦においてお馴染みだろう。

今回もそんなお馴染みの形からスパーズが幸先よく先制に成功した。

先制を許したシティだったが、前半の戦い方は決して悪い出来ではなかった。

ボール保持ではスパーズのハイプレスを再現性を持って剥がすことに成功したし、ボール非保持ではアグレッシブにスパーズ以上の圧力のあるハイプレスで彼らの自由を奪っていった。

シティはボールを保持するとこの日もCBに入ったアカンジが中盤に入る偽CBを用いた、後方[3-2]ビルドアップを披露。

このシティの保持配置に対してスパーズは前からプレスをかけて高い位置でボールを奪うトライを見せた。

前線3枚でシティの可変した3バックへプレス。ロドリにはクルゼフスキがマンマーク気味で監視。一列中盤に上がったアカンジにはロチェルソが監視し、シティの後方[3-2]配置に噛み合うように人をぶつけてきた。

さぁこのスパーズのハイプレスに対してペップ・シティが出した答えは?

その一つが上の図でフリーになり易いエリア、選手は誰だと思いますか?そう、マークが浮き易い選手はベルナルドやアルバレスと行ったIHを務める選手。このシティのIHへボールが入ることでスパーズのハイプレスを掻い潜っていった。

後方の配給役からそんなIHへ直線的パスが通れば簡単だが当然そうは上手くいかない。スパーズのハイプレスを仕掛けた前線の選手たちはしっかり中央レーンはケアしながら前に出た。

そこでシティは後方からWG経由でIHへパスを届けていった。ウォーカー→WGフォーデン→レイオフ→ベルナルドという形から何度か右サイドからスパーズのハイプレスをひっくり返していった。

ベルナルドにボールが入るとスパーズの中盤ビスマがスライドして対応。

すると今度は逆サイドのIHアルバレスがフリーとなりそこへベルナルドがパス供給。

フリーとなったアルバレスはボールを持ち運ぶと左ワイドで待つドクへボールを供給。これによりドクは時間とスペースがある状態をプレゼントされ、何度も前半はそんな彼のドリブル突破からチャンスを作り出すことに成功したシティ。

▪️可変配置が整う前に

ボール保持で押し込んだシティはボールをロストすると即時奪還。今度はトランジションプレスでスパーズに襲いかかったシティ。

スパーズもシティ同様にボールを保持しながらゲームを支配したい理念を持っているチーム。ポステコグルー新監督の下、今のスパーズの1番の真骨頂はボール保持局面。そんな彼らのストロングを覆い隠すようにシティがいつも以上の圧力でハイプレスを仕掛けていった。

ポステコグルー・スパーズのボール保持局面の最大の特徴はSBの立ち位置だろう。マリノスで指揮をしていた時のように、SBは縦に横に。逆サイドまでボールに関わる縦横無尽、神出鬼没にボールに関わり相手のプレスをずらすプレーが1番の特徴のはずだ。

特に左SBのウドジュは非常に攻撃的なアクションを見せる。左SBの位置からIHの位置まで上がったり、相手最終ラインの背後へ抜け出すアクションも見せる。

そんな縦横無尽なSBの立ち位置。流動的な立ち位置を用いたスパーズのボール保持に対してシティはどう対応したのか?

それは彼らが攻撃的な立ち位置、システムを可変する前にボールの出所を抑えることだった、

スパーズの前節。アストン・ヴィラ相手で用いたボール保持。左SBウドジュが左IHの位置に上がり、逆SBのボロが中盤斜めに入り、後方を2CB +2CH +右SBロボの後方[2-3]の陣形を作りビルドアップをする形だった。

今節でもスパーズに並んだメンバーを眺める限り、前節のアストン・ヴィラ戦同様にこの配置を整えてボール保持、ビルドアップを試みたかったはずだ。

この様に配置を可変することで相手のプレスのズレを作る効果が生まれる(なんでSBがこの位置にいるの?中に入るSBには誰がついていくの?俺がついていくとサイドに誰もいなくなるからどうするよ?こんな感じに混乱が生まれる→プレスがズレる、プレスが遅れる)。

しかし配置を可変するには時間が必要に。SBの選手はIHの位置まで上がるには当然時間が必要に。その可変に有する時間を与える前にシティはハイプレスをお見舞いしスパーズの自由を奪っていった。

先制点を許したシティだったがしっかりハーフタイムのロッカールームに辿り着くまでにスコアをひっくり返していった。

▪️可変の時間をなくして

逆転をされたスパーズが今度は動き出す。
後半に入るとWGブライヤン・ヒルに代わって中盤のホイビュアを投入。トップ下だったクルゼフスキをWGポジションに移して、ビスマとホイビュアを中盤の底に2枚並べる形に変更した。

ホイビュア投入に伴う、ポステコグルー監督の狙いは何だったのだろうか?

その答えの一つがボール保持における可変をする時間をなくしたということだった。

前述で述べたが、スパーズはボールを保持するとSBを中心に配置を可変させて相手のプレスをずらす。しかしそれには時間が必要。その時間をとりあげたのがシティのハイプレスに込められたいたことは説明してきた。

そこでポステコグルー監督は可変をしなくてもボールを動かせる陣形を準備してきたのだ。それが後半頭に投入されたホイビュアには込められていたはずだ。

またGKヴィカーリオを関与させてボールを動かすことも後半から見られた変化だった。

前半早々に見せた1発で長いカウンターを狙うアクションは減少し、シティからボールを取り上げるとしっかり後方でボールを動かす振る舞いを増やしていった。それに伴い明らかにバックパスが増えた。GKヴィカーリオがボールへ関わる回数も増えていった。

それにより前半6割強もシティに持たれたボール保持も、試合終了までに45%まで回復。後半だけみればシティよりもボールを長く保持することに成功した。また後方でボールを保持することでシティのハイプレスを自陣深くに集めることになり、シティの陣形を前後で分断。集めて集めて、空いた中盤を経由したカウンターパンチをお見舞いするシーンも増えていった。

当然バックパスを増やして、GKヴィカーリオを加えてよりボール保持をすることでリスクも生まれる。案の定自陣深くでボールをロストしてシティに3失点目を奪われたが、結果として後半はシティよりも1つ多くのゴールを奪い勝点1を持ち帰ったので、ポステコグルーの後半の戦術変更は成功したと言えるだろう。

▪️おわり

試合は両チーム3点を奪い合い勝点1を分けあった。シティからしてみれば2度のリードを守れずに勝点3を失ったとも言えるだろう。スパーズはアウェイの地でしっかり追いついて勝点1を持ち帰った。勝点は同じだが、その数字に込められた重みや意味合いは両チーム異なる結果となったはずだ。

この結果によりシティは3試合連続ドローとなった。試合内容も乱打戦ばかりで、守備に不安はあるものの見ている側からすれば非常に面白い、エンターテイメント性に溢れる試合で私たちサッカーファンを大いに楽しませてくれている。

さぁ次節の相手はこれまた難敵のアストンヴィラ。もうそろそろ勝点3が欲しいところだが、また楽しいフットボールを私たちサッカーファンに届けてくれることを楽しみにしたいと思う。

最後に、この世界最高峰の舞台プレミアムリーグで、ペップ・グアルディオラ監督率いる、昨季欧州王者に輝いたマンチェスター・シティと真っ向からぶつかり合ったスパーズ。そんなチームを率いた監督が日本で、Jリーグで、マリノスを指揮していたポステコグルー監督ということは非常に感慨深い気持ちにさせられた。

この一戦は日本のサッカーファン、そしてマリノスファンには是非見てほしい。


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