【集めて.開けて.ゴールへ】プレミアリーグ第8節 ウルブス×マンチェスター・シティ|マッチレビュー
チャンピオンズリーグ2連勝を挟んで久しぶりのプレミアリーグ。前節はジェラード監督率いるアストン・ヴィラに辛抱強く凌がれ勝点を分け合う結果に。そんなフラストレーションを爆発するかの様に試合開始からペップシティの攻撃力が大爆発。
それでは簡単ではありますがゲームを振り返っていきます。
集められたウルブス。全てはゴールへの道標
いきなり試合は動く。
ホームのウルブスはプレミア王者に対しても積極的な姿勢を見せた。4-3-3の布陣でシティのビルドアップへ出ていったウルブス。先日行われたCLドルトムントが見せた様な、4バックを後方に配置して、その前に5-1の陣形で中央を締めながらボールへアタック(4バックのお皿に6角形が乗るような陣形)。
しかしこのプレッシングが機能しないままあっという間にシティが先制点を奪った。
この日シティの最終ラインには右からストーンズ、アカンジ、ディアス、カンセロが並んだ。
ビルドアップ局面になると右SBストーンズはインサイドに入ってアンカーロドリの脇でボールに関わる。対局の左SBカンセロも同じタスクをこなす。
これによりウルブスの6角形はボールサイドに集められてしまった。ボールに寄りすぎ、食いつき過ぎれば当然、他のエリアに広大なスペース生まれるのはサッカーというスポーツの性質だ。
ボールサイドに寄って陣形を圧縮し時間とスペースを削り落としボールを奪う戦術もあるが、これは違う。
シティが自発的にウルブスがボールへ集まるシチュエーションを作り出した戦術。能動的にそんな状況を作り出した。その全ては自分達がゴールへ向かうスペースを創出するためにだ。そして狙い通り、ウルブスをボールへ集めてあっという間に前半2点を奪って見せた。
先制点は開始1分に生まれた。まさに電光石火だった。
シティのビルドアップを右サイドで引っ掛けたウルブス。しかしシティが即時奪還。この時デブライネはボールサイドとは逆のハーフスペースで待ち受けていた。ココにボールが来るのを知っているかのように。そしてデブライネの予想は的中する。
左サイドからロドリがボールを即時奪還。前を向くとドフリーの左ハーフスペースで待つデブライネに横パスが入り一気にスピードアップ。右で幅をとるフォデンへ展開→デブライネオーバーラップ→フォデンお洒落ヒールパス→デブライネ高速クロス→ニアでハーランドが潰れてグリーリッシュが押し込み先制!
少しゴールシーンを巻き戻そう。なぜデブライネがフリーだったのが?シティで一番警戒しなければいけない選手がなぜフリーだったのか?それは右SBのストーンズが中央に絞っていたからだ。右SBのストーンズが中央に立っていることでウルブスの左WGゲデスが彼をマーク。それにより本来デ・ブライネが立っていたハーフスペースをケアするはずの男がおらずにデブライネがフリーになったメカニズム。ビルドアップ局面にSBがインサイドに絞ったことで生まれる副作用が早速現れた。
次は16分に生まれたシティの2点目。
ウルブスは1トップ(ポデンセ)よってシティの2CBのどちらがフリーになる。シティのCBはフリーでボールを行けるとアレが発動する。アレとは『CBの運ぶドリブル』だ。目の前に開けられたスペースにボールを運ぶドリブルをすることで前進。または相手の中盤を引きつけてボールをリリースすることでプレスのズレが生じることも狙いの一つ。
シティの『CBの運ぶドリブル』の精度は極めて高い。それを発動させられてしまうと瞬く間に守備ブロックに亀裂が入る。そうはさせまいとウルブスも当然対策は用意していた。それはWGが縦にスライドして2CBにプレスに出ることだった。しかしこの対策もシティに対策される。対策の対策するのが大得意のペップシティ。本当に嫌なチームだ。
ウルブスのWGが縦にスライドすることでシティのCBにプレッシャーがかかる。しかしWGが前に出るとシティのSBがフリーになる。左SBカンセロは前に出ると右WGネトのプレス角度に合わせて立ち位置を中、外へ微調整してボールを引き受けて前を向く。ウルブスも負けじと中盤3人をスライド.連動させてWGが開けたシティのSBへプレスに出る。はい!それも想定済みという感じに、今度はシティのIHがひょいと顔を出しボールを引き受ける。前線のハーランドも落ちてアンカーのネベスを引きつけてベルナルドをフリーにさせる事も。そんな連動性から2点目が生まれた。
あっという間に2失点を屈してしまったウルブス。前から出たい姿勢は見せる。しかし前に出ればフリーを作られて中盤に縦パスを刺される。プレスに出なければCBに運ばれる。SBが絞る事で幅をとるWGのパスレーンも作られ、いつのまにかボールサイドへ必要以上に集められる。シティ対策を十分に講じてきたはずなのに、いつの間にかバラバラにさせられたしまったウルブス。
そして悲劇が連鎖する。
ネベスのCB。そして固まった覚悟。
2点を奪われたウルブス。シティ相手にあまりに大きすぎる傷を開始直後に負ってしまった。しかし彼らもやっぱり力のあるチーム。特にボールを握った時スキルを発揮できる選手が多い。シティのハイプレスを食われる時もあるが、GKを含めて後方からショートパスを繋いで集めて→サイドチェンジで一気にスピードアップに成功するシーンも。
この試合最前線に入ったのはポデンセ。165cmの天才ポルトガル人。足元のテクニックが飛び抜けている彼に与えられたタスクは偽9番だったはず。彼が中盤に落ちて狭いエリアで縦パスを受けてハイプレスを掻い潜るシーンも。またポデンセが中盤に落ちる事でシティのCBを釣り出し、空いたスペースへWGが斜めに走って背後をとる狙いも見受けられた。
徐々にシティに浴びせられたダメージから回復していった最中悲劇が。
左の幅でグリーリッシュがボールを受けるとそれに対して右CBのコリンズがボールへチャレンジ。このチャレンジは失敗に終わり伸ばした足はグリーリッシュの腹部へ直撃しレッドカードが提示された。2点のビハインドがある中、しかも1人少ない状況になったしまったウルブス。
本当に難しい状況となってしまったウルブス。こんな状況に陥ったらあなたならどうするだろうか?下を向いてグチを吐きたくなる気持ちにもなるだろう。しかしこの難しい状況だからこそチームの方向性が明確になったのかもしれない。
ハーフタイムが終わりロッカールームから出てきたウルブス戦士は覚悟を決めてピッチに戻ってきた。
そして後半が始まるとウルブスは前半よりもアグレッシブに攻撃的な姿勢でシティを後退りさせていった。
ウルブスの覚悟やホームのファンの後押しだけでなく、シティが押し込まれた要因は戦術的な観点も含まれていた。
それはCBに中盤のネベスが入ったことだ。退場となったCBコリンズのポジションにアンカーをつとめていたネベスがDFラインに下がってCBに、4-4-1の陣形になったウルブス。
CBにネベスが入ったことで最終ラインからの配給の精度が一段階上がった。苦渋の決断がいい方向へ。シティのハイプレスをCBネベスを中心に剥がして前進する回数が増えたウルブス。そして前線でボールを受けた選手は、1人少なくなったことで生まれた覚悟を胸に、強引にでも突破を試みる。
先程も少し触れたがウルブスの選手たちはボールを持った時のスキルは非常に高い。両WGのネトとゲデスはもちろん、左SBのライアン・アイト=ヌーリがドリブルで狭い局面を打開しシティのゴールへ迫っていった。
しかし1人少なくなった代償が少しづつウルブスにのしかかる。体力の消耗、そして前のめりになればカウンターを受けるリスクも倍増。
そしてシティがとどめの3点目を奪いさった。
ペップシティ新たな形か。
67分右サイドからハーランド、フォデン、デブライネの3人で切り崩しとどめを刺した。
ワイドのフォデンから横パスを受けたデブライネがワンタッチで縦パス。抜け出したハーランドがサイドへ。そしてデブライネがハーフレーンからボールを持つハーランドの外へオーバーラップ。ボールを引き受けたデブライネが高速クロスを上げて最後はフォデンが合わせてとどめの3点目。
この3点目は、先制点と似たような形。デブライネがハーフレーンから大外へオーバーラップ→クロスという形から生まれた。これはペップシティの新たな形になりそうだ!
おわり
試合は3-0とマンチェスター・シティが勝点3を持ち帰った。しかしウルブスが見せた退場者を出してからの振る舞いや覚悟は素晴らしかった。
プレミアリーグ開幕からチャンピオンリーグ含めて無敗でしばしの休息(代表ウィーク)に入るペップシティ。
新戦力も確かにフィットし、いい形でシーズン序盤を過ごせているように感じている。怪我人も少しづつ帰ってきており、代表ウィークは怪我人なく戻って更にチームの競争力が高まってほしい所だ。
代表ウィーク明け1発目の試合はマンチェスター・ダービー!是非!マンチェスターの地をスカイブルーに染めてほしい!楽しみ楽しみだ。
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