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「地球環境を守る夢」 ⁃ 日本に放牧が導入されるだけで、地球の裏側にある地下水を節約でき、砂漠化防止に貢献できる

日本の現在の飼料自給率(畜産動物に与える飼料のうち、国内で生産されているものの割合)は約25%
つまり、国内で飼われている動物の75%は、アメリカなどから輸入された穀物を主に食べて暮らしているということです。

このまま輸入穀物に頼った酪農畜産を続けると、地球のどこで、何が起こるのでしょうか?
今回は、そういうお話です。

アメリカの水を飲み干す動物たち

飼料作物を育てるために消費される資源としてまず思いつくのは、水です。
自然の雨だけで事足りればよいのですが、商品として輸出できるほどの大量の穀物を安定して育てるには、どうしても真水を常に使用する必要があります。

ここで問題になるのは、その真水は果たして、いつまで使い続けられるのかということ。
例えば、トウモロコシなどの主な輸入元であるアメリカのオガララ帯水層(世界最大級の地下水層)は現在、過度の灌漑により枯渇の危機を迎えています。

センターピボット方式と呼ばれる灌漑法。スプリンクラーの届く場所のみ緑が育つ。
雨の少ない地域では、穀物生産を地下水に頼るほかない

そのうえ、世界の人口はもうしばらく増え続けるでしょうから、それを養うための穀物の需要は、これからさらに上がっていくと考えられます。
そうすれば、地下水は今よりももっと早いスピードで消費されていくことになります。
このまま行けば、ある日水を汲み上げようとしたらからだった、なんてことが近い将来に起こっても不思議ではありません。

これは大変な危機です。

緑豊かな日本に住んでいると、干ばつ、砂漠化と聞いてもあまりピンとこないかもしれません。
しかし、世界ではたくさんの命が、渇きが原因で危機に瀕しているのです。
その危機を広げているという自覚がないまま、動物を太らせるために大量の穀物を買い続けている日本は、世界の目から一体どのように映るでしょうか。

それだけではなく、作物の収穫や輸送のためには大型機械を使用します。ということは、その過程で莫大な量のエネルギーが消費されています。
この問題を放置したままでは、日本の酪農畜産は「持続可能」を名乗ることは到底できない。私はそう考えています。

放牧酪農という環境対策

だからこそ、放牧の推進こそが弊社の使命であると信じて疑わないのです。

日本に放牧を広めるということは、近くの牧草で動物たちのお腹を満たして輸入量を抑え、地球の裏側の穀物生産に使っている水、化石燃料やエネルギーを減らせるということにつながります。

家畜が自分の足で歩き、草を食べ、糞尿をまくということは、それらを運ぶために現在頻繁に用いられているトラクターの利用を減らし、CO₂の排出を減らせるということにもなります。

それに加えて、ただ動物たちを放っておくのではなく、土づくり、草づくりを必ず適切に行うこと。これにより耕作放棄地が減り、土の反転も減り、炭素を地中に留めておくことにも貢献できます。

つまり簡単に言えば、放牧は究極の環境対策になるのです。

頭数管理と生態系の維持

野生動物対策の分野も、環境と大いに関わりがあります。

小社が提案しているのは、野生動物コントロールシステム。
生態調査用のセンサーカメラや田畑を取り囲むフェンスを用いて、アライグマやエゾシカなどが人里の食糧を荒らすのを防ぎます。
この措置が、野生動物の個体数の過度な増加を抑制することにつながっているのです。

社屋裏に姿を現したエゾシカ。弊社のセンサーカメラにて撮影


野生動物がぐるっと一周皮を食べるだけで、木はたちまち簡単に枯れてしまうものです。適切な頭数管理を行い、森林の破壊を防ぐことが重要です。
それが、豊かな生態系の維持につながります。

そもそも、野生動物が増えすぎてしまっている一因は、人間が捕食者を絶滅させたことや、本来はそこにいないはずの外来種を持ち込んだことなどにあります。
一度食物連鎖を断ち切った以上、その先の森林環境の管理は、責任を持って行わなければなりません。

環境抜きでは語れない夢

ファームエイジが掲げる「5つの夢」は、それぞれが理念、指針としての重要な意味を持ちながら、一方でそれぞれがお互いを牽制し合うという特長を備えています。

例えば、「食産業を守る夢」ばかりが先行すれば、安定した食糧生産のための農薬を、小社でどんどん販売しようということになるかもしれません。
しかしそこへ「共生の理想を実現する夢」や「地球環境を守る夢」が同時に存在することによって、
・特定の種類の生物だけを死滅させることの是非
・長期的な環境負荷
など、別の角度からの視点で改めて検討することが可能になります。

特に「地球環境を守る夢」は全体のバランスをとっていることが多く、絶対に欠かすことのできないものです。
これは世界でSDGsとして示されるよりもずっと前の創業時から、ミッションとして強く感じていたことでもあります。

 

そんな「5つの夢」についてのお話は、次回で最後となります。

「幸せを生み出す夢」、よろしければお付き合いください。


#農業 #酪農 #畜産 #放牧 #野生動物 #SDGs #ファームエイジ
#環境問題


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