彼方(Kanata)

1990年生まれ|男の子(1歳)の母|元研究職の現主婦|岡山→札幌→大阪→博多|ミルク…

彼方(Kanata)

1990年生まれ|男の子(1歳)の母|元研究職の現主婦|岡山→札幌→大阪→博多|ミルクティーが好き|#あの会話をきっかけに投稿コンテスト入賞記事を固定しています

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祖母との電話

「大変ね」 その言葉に、わたしはほとほと疲れてしまっていた。 夫婦で新天地に移住した矢先に、新型コロナウイルスの流行。 妊娠が判明した直後に、緊急事態宣言が発令。  立ち会い面会すべてNGのなか、初めての出産。 出産直後に再び緊急事態宣言が発令され、家族を頼ることもできず始まった初めての育児。 そんなわたしの状況は、側から見るときっと「大変」なのだろう。 妊娠中も出産後も、家族はたくさん電話をしてくれた。 そして優しさから出たに違いないこんな言葉をかけてくれるのだった

    • 家から家へ

      11月30日。 この日は購入したマンションの引き渡し日だった。 一通りの手続きを終えたのち、新しい住所の報告を兼ねて、実家の両親にメッセージを送った。 すると母からこんな返信が来た。 ”おばあちゃんち”というのは、母の実家のことだ。 祖父が十数年前に亡くなり祖母がひとりで暮らしていたのだが、その祖母も数年前に高齢者向けマンションに入居し、ずっと空き家になっていた。 今年に入ってからもう売ろうと手続きを進めていたらしいのだが、遂に今日、売却が完了したのだという。 このお

      • Home sweet home

        中古マンションを購入した。 10月頃に良い物件を見つけ、内見に行くと夫婦ですっかり気に入り、そのままするすると契約が進んだのだ。 正直あまりにするする進みすぎて、「次の賃貸に引っ越すぞ~」くらいの感覚しかまだない。 とは言え、わたしたち夫婦にとってはここがマイホーム、息子にとってはここが実家になるのだ。 そう思うと、今まで住んできた賃貸マンションとは異なる、愛情のようなものがわいてくる。 このマイホームという新しい家族を迎えるにあたり、「こうありたいな」と思うことがいくつ

        • 11月22日の思い出

          今日は11月22日、いい夫婦の日だ。 これは、わたしが小学生の頃の11月22日の思い出の話。 *** 当時両親は共働きで、わたしと弟はいわゆる鍵っ子だった。 宿題も終えソファに寝転んで本を読んでいた午後6時頃、ガチャリと玄関の鍵の開く音がした。 ただいま〜という声と共に、父がリビングに入ってきた。 いつもより1時間も早く帰宅した父は、何やら綺麗に包装されたビンを抱えていた。 「そのビン何なん?」 と聞くと、父はこう答えた。 「これはボジョレーっていうお酒だよ。 今日

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        祖母との電話

          黄色いランドセルの女の子

          それは夏休み明けの、2学期の始業式のことだった。 校長先生の長々としたお話のあと、司会の先生がこう言った。 「ここで、今日から新たにお友達になる転校生を紹介します。」 ”転校生”という言葉にざわつくこどもたち。 校長先生に連れられて、ひとりの女の子が登壇する。 その姿を見て、こどもたちはさらにざわめいた。 その女の子は、まばゆいほどに黄色いランドセルを背負っていたからだ。 司会の先生に促され、その女の子はこう挨拶した。 「◯◯小から来た◇村です。 前の小学校ではランド

          黄色いランドセルの女の子

          夫と小麦粉とパン粉と

          夫婦で料理番組を見ていたら、夫が急にこんなことを言った。 「俺、昔パン粉のことが全くわからんかったんよね。 なんで粉末のものを固形にしてまた粉末にするんや?意味ある?って。 でも見た目ほぼ一緒でもさ、パン粉は小麦粉と違って粒が尖ってたり香ばしい風味があったりすることが分かって。 あ、粉末が固形を経てまた粉末に戻るのも意味のあることだったんだなって思ったんよね。」 夫は続ける。 「で俺、これ自分たちにも言えることだなって思ったんよ。 例えばなにかに挑戦して失敗して、もとの

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