橋尾 京果

(ハシオ キョウラ) 小説やエッセイの投稿をさせていただきます。 小説は、結末はほっこ…

橋尾 京果

(ハシオ キョウラ) 小説やエッセイの投稿をさせていただきます。 小説は、結末はほっこり、希望のある物語の執筆を目指しています。 エッセイは事象として興味のある 宇宙、古代文明。又は、建築業界について投稿していこうと思っています。

マガジン

  • 長編小説【護符】

    長編小説 護符 (全20話 111,000文字程度)をまとめました。 古代エジプト 第18王朝時代が舞台。 アンドロイドと人類の友情がテーマです。

最近の記事

[小説]ボンドブレイカー 003)工事課事務職 緒野の野心(2)

〔003 本文〕 「は?」 社員が襲われたなんて、思ってもなかった話を聞いて、きっと私はとんでもなくマヌケな表情を見せただろう。 恥ずかしい。 無意識では、誰かの部署異動とか、そういった類いについての聞き取りだと思ってたような気がする。 話について来れそうにない私を放っておくことに決めた様子で、秋河さんは一方的に話を続けた。 「襲われたのは今週月曜の夜。ほら。前期の引渡し物件について、本社の審査が入ることになったから。その対応で、その日は、ほとんどの社員が残業したじゃ

    • [小説]ボンドブレイカー 002)工事課事務職 緒野の野心(1)

      〔002 本文〕 十一月に入った最初の金曜日。 小会議室の扉を開けると、総務課の犬飼課長と秋河係長が窓を背にして座っていた。 働くっていうのは、面倒なことばっかりだと思う。 ウチの会社は東証プライム上場企業のハウスメーカー。 ハウスメーカーと言っても個人の住宅だけじゃなく、ニーズがあれば、アパートや店舗なんかも建ててる。 ただ、比率は断然、住宅が大きい。 全国に支店があるから知名度も有るし、テレビのCMにも人気俳優を使ったりしてる。 きっと、まあまあ儲かってるんでし

      • [小説]ボンドブレイカー 001)加害者

        〔概要〕 大手ハウスメーカーが舞台。 容疑者は全社員。誰が襲われて 誰が襲ったか。 未だに男性優位の建築業界で働く技術職、女性社員の憤りとたくましさ。建築家として生きること、設計士を選択すること。登場人物達の成長と選択を描きます。 〔001 本文〕 透明ガラスの向こうに、台車を押して行くあいつの姿が見えた。 明るい廊下を横切って行く白いシャツを、事務室の中から目で追う。 あいつが台車に積んでいるのは、上半期の間に建物が完成し、検査を終えた物件のファイルだ。 各物件ごとに

        • 良いことあるといいな

          スピリチュアルなことを少しだけ信じてみようというお話しです。 二ヶ月ほど前、山の中の車道を歩いている時、少し先の道路に黒い紐のようなものが落ちているのが目に入りました。 自転車のタイヤ部分が外れて、捨て置かれているようにも見えましたが、それにしては少し長いようだと思いました。 目を凝らして見ていると、じりじりと、道路を横切るように動いているのが分かりました。 蛇でした。 緑色がかった黒い感じだったので、多分、アオダイショウとか言うやつです。 突然遭遇するとけっこう怖

        [小説]ボンドブレイカー 003)工事課事務職 緒野の野心(2)

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        • 長編小説【護符】
          20本

        記事

          ハイパーカミオカンデで働きたい!

          私は物理学を学んだ者ではありません。 ただの宇宙好きです。 宇宙好きのボヤキに、今回はお付き合いください。 皆さんは『カミオカンデ』をご存知でしょうか? この題名で、この記事を開いてくださった時点でご存知の方が多いと思いますが、まずは、簡単にご説明をさせていただきます。 カミオカンデは岐阜県飛騨市神岡町の山の中、地下600m~1000mに造られている施設です。 主に、ニュートリノと呼ばれる素粒子を観測している装置が『カミオカンデ』になります。 太陽ニュートリノの観測と

          ハイパーカミオカンデで働きたい!

          熱い想い:その会社が合わなくても(建築デザインの仕事をしてみた)

          #創作大賞2024 #エッセイ部門 アトリエ系と言われている建築設計事務所に勤めていた時のお話。 ※アトリエ系 建築設計事務所とは? 建築の設計を生業としている企業の中で、顧客に対して、特に意匠・デザインにこだわりのある提案をする事務所 私が建築の専門学校を出て入社したのは、 『俺達は設計で飯を食っていくんじゃない。デザインで飯を食っていくんだ!』 と言う、建築デザインに対して熱い想いに溢れた設計事務所でした。 設計の仕事ができればいいと、あまり深く考えずに就職を決め

          熱い想い:その会社が合わなくても(建築デザインの仕事をしてみた)

          完結のご報告とプレ自己紹介

          完結のご報告小説『護符』全20話(111,000文字程度)で完結いたしました! 読んでいただいた方、これから読んでみようと思ってくださっている方、ありがとうございます。 スキを押していただいた方、本当に支えていただきました。 感謝しております。 取り敢えずや、ビギナーに対する優しさで、スキを押していただいた方もいらっしゃると思いますが、気にかけていただいているというだけでも励みになります。 今後は、作品の中身にも興味を持っていただけるように頑張ります。 護符へは

          完結のご報告とプレ自己紹介

          小説 護符 020)(最終話)カマル【この先もずっと】

          #創作大賞2024 #オールカテゴリ部門 〔020 本文〕 オペトの大祭を一週間後に控えた日の夕暮れ、カマルは王家の谷の山の頂きに立っていた。 眼下には、かつてイアフメス=ネフェルタリ王妃が封印された墓の入り口が見え、西の空を仰ぐと上弦の月が浮かんでいる。 大きな波動を持つイアフヘテプ王妃の恨みを鎮めるためには、多くの段取りとたくさんの人々の協力が必要だった。 まず、メリメルセゲルの祖父に全てを説明するところから始まった。 王妃の恨みを鎮めるとは結局のところ、恨みを

          小説 護符 020)(最終話)カマル【この先もずっと】

          小説 護符 019)メリ【ホルス神】

          *アク:死者の形態。魂を構成する五つの要素の中で、カァとバァが結びついたもの #創作大賞2024 #オールカテゴリ部門 〔019 本文〕 カマルの秘密を聞いた翌日。 夜明け前に、メリメルセゲルはセンネジェムの屋敷へ急いだ。 出勤前のセンネジェムと話をして、ネフティトに会わせてもらわなければと思ったのだ。 センネジェムの部屋へ使用人に案内されて行く間、メリメルセゲルは緊張で喉を詰まらせていた。 出かける準備をしていたセンネジェムは、部屋に一人で居た。 「遅い」 メリメ

          小説 護符 019)メリ【ホルス神】

          小説 護符 018)カマル【精神力】

          #創作大賞2024 #オールカテゴリ部門 〔018 本文〕 「そもそも、カマルは何のために。何年も、俺の近くに居続けてきたんだよ」 訳が分からないと言うように項垂れて、メリメルセゲルは額を両手で覆った。 「失態を正すためだ」 「失態?」 「ベス神に仕込んだ細工を回収できないでいることだ」 あの護符が発掘されれば、この時代にそぐわない人工物が出土することになってしまう。 「そう言うことか」 恨みがましい眼で、メリメルセゲルがカマルを睨んできた。 「この間、封印に協力す

          小説 護符 018)カマル【精神力】

          小説 護符 017)カマル【親友】

          *カァ(魂の形の一つ):生命力 #創作大賞2024 #オールカテゴリ部門 〔017 本文〕 カマルはもう一人の自分を、自分の横に座らせてくれるように、メリメルセゲルへ頼んだ。 昨日の新月の日まで、カマル自身だったボディだ。 今、古代エジプトに来ている旅行者達が未来へ戻る時に、一緒に回収される予定の備品だ。 未来から届けられた今の身体へ、データを移して稼働させたばかりだったが、また元のボディに戻ることになる。 元のボディでもバッテリーに問題は無い。 意識の無い人間と

          小説 護符 017)カマル【親友】

          小説 護符 016)メリ【冥界】

          *カァ(魂の形の一つ):生命力 #創作大賞2024 #オールカテゴリ部門 〔016 本文〕 「何だって!?」 メリメルセゲルのこめかみから冷や汗が流れた。 「どうしてそんなことに」 「ヘベヌト様のお屋敷で、ネフティト様の居場所を聞いたと申されていました。私は、シラを切っていたんですが。そのやり取りを聞き留めたネフティト様が、自ら姿を現されまして。しばらく、お二人で話をされた後。ネフティト様が、これをメリメルセゲル様に渡してくれと」 ジフが差し出した手の平の上には、イ

          小説 護符 016)メリ【冥界】

          小説 護符 015)メリ【王妃の壁画】

          #創作大賞2024 #オールカテゴリ部門 〔015 本文〕 翌朝、日の光に照らされた町は大変なことになっていた。 人々から纏っていたモヤが消えているのを確認すると、メリメルセゲルはネフティトが自分の屋敷にいることを伝えるため、ヘベヌトの屋敷にジフを走らせた。 そのジフによると、人々はどうして自分がこんな所にいるの分からなくなっており、身に覚えの無い怪我を負っている者もあったと言う。 「メリメルセゲル様。カマル様がお見えになりました」 ジフに告げられ、メリメルセゲルは

          小説 護符 015)メリ【王妃の壁画】

          小説 護符 014)ネフティト【あの日からずっと】

          *生命の家:将来官職に就く者を育成する学校 *アク:死者の形態。魂を構成する五つの要素の中で、カァとバァが結びついたもの #創作大賞2024 #オールカテゴリ部門 〔014 本文〕 落ち着きを取り戻したネフティトはメンチュ神殿を出て、センムウトの屋敷へ向かうことにした。 横に並んだメリメルセゲルが、ネフティトの手をごく自然に繋いできた。 戦いの後で抱き締め合ってから、お互いの気持ちが繋がったような気がしているが、胸は早鐘を打った。 今まで偶然手を繋いだことはあるけど、

          小説 護符 014)ネフティト【あの日からずっと】

          小説 護符 013)ネフティト【戦いの舞】

          #創作大賞2024 #オールカテゴリ部門 〔013 本文〕 「ネフティト。舞いを踊ってみないか」 ネフティトがセンネジェムからそう告げられたのは、メリメルセゲルと一緒に、邪悪なモノと対峙してから数日後のことだった。 「十日後に、イシス神殿で豊穣祭が行われる。踊り手の一人としての参加になるが。やってみないか?」 ネフティトは二つ返事で引き受けた。 大勢の中の一人であろうと関係無かった。 踊りたくて身体がウズウズしていたのだ。 センネジェムが安心して微笑むのを、ネフティ

          小説 護符 013)ネフティト【戦いの舞】

          小説 護符 012)メリ【一族の誇り】

          (*アク:死者の形態。魂を構成する五つの要素の中で、カァとバァが結びついたもの) #創作大賞2024 #オールカテゴリ部門 〔012 本文〕 これは自分の夢だと分かっている。 メリメルセゲルは夢の中で王家の谷を歩いていた。 耳を尖らせ、道案内をするように前を歩いて行く黒猫の後ろをひたすら追う。 空には大きな月が輝いていて星の光は余り見えなかった。 何となく記憶にある景色の場所へ来た。 山の稜線を覚えている。 そうだ。 パディの夢で見た場所だ。 だとすると、ここは例

          小説 護符 012)メリ【一族の誇り】