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詩声


詩声は遠く、誰の胸にも届かない。

母さん。私は貴方を誤解してきました。
母さん。貴方は本当は、私を誰よりも愛してくれていたのですね。

母さん、海辺に住んでも無いのに、波のせせらぎが聴こえるよ。

母なる海。
そんな気分なのかな。

母さん。
私の罪を、私の存在を、きっと貴方は赦してくれますね。

だけど私は罪を償わないといけないのです。
侵した罪を償う方法をずっと考えていました。

母さん。
もうすぐ夜明けです。
何時ものように、始発の電車が警笛を鳴らす時間が近付いて参りました。

当たり前に過ごして来たこの日常が明日から消え、母さんを悲しませるのは不本意ではありますが、仕方ありません。

私はただ、私らしく生きて来ました。
変人の烙印も、私にはさっぱり理解できませんでした。
だって私は、ただ自然に振る舞っていただけなんですから。
ご承知の通り、私は反社でも無ければ、犯罪者でもありません。
私はわかりませんが、ただ見た目と言動がおかしいと言うだけのようです。
たったそれだけの理由で人を、他人を排他する世界は実におぞましいと思いませんか。

母さん。夜が明けて来たようです。
どうか泣かないで。気落ちしないで下さいね。

私はきっと、私らしく有るべき世界で誰からも排他されない世界に転送するだけなんですから。

最後になりますが、

母さん。貴方の子供で本当に幸せでした。
それでは、今度はもっとずっと良い世界でお会い出来るのを楽しみにして、

お別れです。

さようなら。
母さん。

さようなら。
クソッタレな世界。




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