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Koyfinで極める米国株分析:財務ハイライトで見抜く企業の実力(第2回)

米国株投資の財務分析ツールKoyfinの活用、第2弾です!前回の「プレ・ファンダメンタル分析」に続き、今回は企業の財務力を見極める本格的なファンダメンタル分析に挑戦します。 Koyfinが提供する豊富な財務データの中から、企業の実力を測る6つの重要指標にフォーカス。売上高、粗利益、EBITDA、純利益、希薄化後EPS、CAPEXに対する営業キャッシュフローの比率の読み解き方を、実際の画面を使って丁寧に解説します。 本記事では、Koyfinの財務ハイライト画面を使いながら英語表示の壁を乗り越えやすいように工夫しました。実際のデータを使った分析の具体例も作成しました。これにより、Koyfinの膨大な財務データの中から優先順位の高い情報を効率的に抽出し、企業分析に活かすスキルが身につきます。一緒にKoyfinを使いこなし、あなたの投資戦略を次のレベルに引き上げましょう!
なお、本記事にはAmazonアソシエイトリンクを含みます。


1. ファンダメンタル分析の流れ

・KoyfinのSnapshotsのOverviewのデータから事前分析を実施する。(事前分析のやり方はリンク先の第1回目を参照)
・対象企業の財務分析ハイライト画面に行き年次、四半期の財務データ(🔴売上高成長率、🟠粗利率、🟡利払い前・税引き前・減価償却前利益率、🟢純利益率、🔵潜在株式調整後1株当たり当期純利益、🟣営業キャッシュフローに対する資本的支出の比率、丸印の色と図中の枠色は一致)を見てトレンドを確認する。
・競合と比較して理解を深める。

2. Financial Analysis Highlightsの各項目を棒グラフでトレンド確認をする

・Koyfinのサイト(https://app.koyfin.com/)に行き、無料アカウントでサインインする。
・Financial Analysis(①)をクリック。現れたメニューから直下のHighlights(①)をクリックし、Financial Analysis Highlights(財務分析ハイライト)画面を表示させる。
・さらにAnnual(Y)(②)のタブをクリックし年次のデータを表示させる。年次のFY(例えばFY2023)はFiscal Year(会計年度)の略。

図1. Financial Analysis画面

・各項目の左に表れている棒グラフが秀逸。トレンドが一目瞭然。Annual(年次)、Quarterly(四半期)、Last 12 Months(各四半期までの1年分)のタブをクリックすると、棒グラフも変化する。
・棒グラフにマウスオーバーすると、拡大画面がピクチャー・イン・ピクチャーで拡大表示され便利。左上のOpen Graphをクリックすると、独立ウィンドウで表示も可能。
・無料アカウントで数字を確認できるのは年次データは過去3年分だが、グラフだと実は10年分の傾向が確認可能となっている。

図2. 各項目のトレンドの棒グラフ

3. Key Financials

図3. Financial Analysis画面における注目項目について

🔴①Total Revenues YoY Growth %(売上高成長率)

・Total RevenuesのYoY Growth %の欄に記載されている過去3年分の売上高成長率のトレンドを確認する。
・もしTotal Revenuesが見当たらない場合はトグルメニューの中に畳まれている。Key Financialsの左が+ボタンになっていることを確認してからクリックすると、展開され見つけることができる。展開後は+ボタンは−ボタン表示になる。

🟠②Gross Profit Margin(粗利率)

・Gross Profit Margin(粗利率) = 粗利÷売上高
・最低過去3年分のトレンドを確認する。
・競争力の高い企業は一貫して高い粗利率を示す傾向がある。バフェットさんによると一貫して40%以上が望ましいとのこと。
・高い粗利率を維持できるのは、競争力が強く高い価格設定ができるから。弱いと値下げで競争するしかなくなる。

🟡③EBITDA Margin(利払い前・税引き前・減価償却前利益率)

・EBITDAはEarnings before Interest, Taxes, Depreciation and Amortizationの略で利払い前・税引き前・減価償却前利益のこと。
・EBITDA Margin = EBITDA ÷ Total Revenues
・最低過去3年分のトレンドを確認する。

🟢④Net Income Margin(純利益率)

・Net Income Margin = Net income ÷ Total Revenus
・バフェットさんによると20%以上あると競争力が高い企業ということになる。

🔵⑤Diluted EPS(潜在株式調整後1株当たり当期純利益)

・Diluted EPS(Diluted Earnings Per Share)=潜在株式調整後1株当たり当期純利益
・上昇トレンドであること。バフェットさんによると10年スパンで一貫して上昇トレンドの会社が望ましいとのこと。

4. Cash Flow分析

🟣⑥Cash from Operationsに対するCapital Expenditureの比率

・Cash from Operations(CFO=営業キャッシュフロー)は商品の販売や仕入れといった営業活動におけるお金の動きを表すもので、プラスなら支払った額より稼いだ額の方が多いということ
・CFOの成長トレンドも確認する
・Capital Expenditure(CAPEX=資本的支出)は有形・無形の固定資産取得のための支出のこと。主に設備投資。
・CFOがCAPEXより多いと健全。言い換えると、CFOをCAPEXで割った数字が1より大きいほど良い。

5. 実際にやってみた(GoogleとAmazonの比較)

GoogleとAmazonの比較

まず、GoogleとAmazonについて上記①から⑥の項目の過去3年分と2023年の全四半期の数字をKoyfinから抜き出しました。(※数字は執筆時点の'24.07.13のものです。)

比較からの気づき

  1. 収益規模と成長率:

    • Amazonの総収益はGoogleの約2倍

    • Amazonの成長率の方がやや高い。

    • 両社とも安定した成長を示しているが成長率は鈍化傾向。ただし、2023年は徐々に成長率上昇し4Qで顕著であり、ガイダンス次第で2024年には再加速もありうる。

  2. 利益率:

    • Googleの粗利益率は一貫して55-57%台と高く、競争力の高いビジネスモデルと言える。

    • AmazonのGoogleより低いものの、2023年から急激に改善。製品ミックスの変化(AWS?)があったかもしれない。

    • 両社とも粗利率が40%を超え維持されている。

  3. EBITDAマージン:

    • GoogleのEBITDAマージンは30%前後と高く、事業の収益性が高い。

    • Amazonは10-16%と低めだが、改善傾向。

    • 両社とも2023年の第4四半期でやや低下。

  4. 純利益:

    • Googleは安定して高い純利益を維持。

    • Amazonは2022年に赤字を記録も、2023年に大きく回復。

  5. キャッシュフロー:

    • 両社とも営業キャッシュフローは堅調、特にAmazonの第4半期は突出。

    • AmazonはGoogleよりも多額の設備投資を実施している。

    • Googleの方がCFO/CAPEX比率が高い。

    • Googleの設備投資は年末に向けて増加、Amazonは年間を通じて比較的安定。

抽出した仮説

  1. Googleの高い利益率は、デジタル広告市場での強固な地位を反映している可能性あり。

  2. Amazonの利益率改善は、eコマース以外の高収益事業(特にAWS)の成長によるものかもしれない。

  3. Amazonの大規模投資は、長期的な競争力強化を目指したものであり、今後数年で更なる収益性の向上につながる可能性がある。

  4. Googleの高いCFO/CAPEX比率は、既存インフラの効率的な活用を示唆、今後の投資余力が大きいかもしれない。

  5. Amazonの収益力は改善傾向だが、これは投資や戦略の転換が実を結び始めた可能性がある。

6. 最後に

いかがでしたでしょうか?同じ数字を見ても、人によっては他の気づきがあるかもしれませんし、別の仮説を立てられると思います。仮説が立てられれば、検証のための裏付けデータを探す動機ができるはずです。
深掘りが進めば、分析対象企業の理解がさらに深まっていくでしょう。
次回は、今回抽出した仮説をもとにもう少し深掘りできるかやってみる予定です。

参考図書について

本記事を執筆するにあたって、参考にした図書を紹介します。


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