月と森のサブマリン 23前線基地…の巻
(森でひとり潜水艦)
森には、
コンビニも(無)ネ-。
家も(無)ネ-。
テレビも無(ネ)-。
電気も無(ネ)-。
水道もネ-。
屋根もネ-。
寝る所もネ-。
何にもね-。
…。
というわけで、
雨ざらしの道具の保管や、
作業をする前線基地造りを考えた。
何が良いか?
安く、
造るのに時間がかからず、
堅牢の基地。
…。
そして、白羽の矢を立てたのは、
JRの払い下げコンテナ。
即効で前線基地を設置しなければ、
戦いに負ける…。
何の?。
…。
JR貨物に連絡を取ると数カ月待ち。
希望者が多いのだという。
さらに廃棄してよいコンテナが時折しか出ないとの事。
なんにしろ予約した。
そして、
数カ月後連絡があった。
…。
値段は驚く程安く数万円。
…。
そんな安くていいの~。
って位安い。
ネットで販売している価格の十分の一。
人気があるわけだ。
…。
さて、
問題は運搬。
業者に頼めば運送賃はコンテナ代の倍程高くなる。
貧乏人としては、
自前で運ぶのが利(リ)。
古い4トントラックで運ぶ。
だが、
コンテナのサイズとトラックの荷台のサイズが合わない。
どう合わないのか?。
コンテナの方が大きいのだ。
結果。
固定ができない。
よって、
運搬中にコーナーでゴロンと落ち、
対向車の上にドカンで、
大事故とか…。
そんな事になったら、
森でひとりぶくぶく潜水艦なんてやってられない。
…。
思案の末、
鋼材を切り貼りし、
コンテナの足部分をトラックに固定する金具を製作。
その秘密金具を取り付け、
遠方にあるJRの貨物列車基地に出かけるべく、
4トントラックの戸を開けた。
ガチャ。
ギ-。
バッタン。
コキ。
ブロロロろろ呂呂RoRo…。
ガチ。
ブキュ-ン。
…。
山間のアスファルト道路を走る。
ブロロロろろ呂呂RoRo…。
やがて遠くにJRの貨物基地が…。
…。
基地に着くと、
古くなったコンテナがゴロゴロ並び、
それらを職員の方々が修理している。
その中から、
耐用年数を過ぎた物を売ってくれるのだ。
巨大なフォークリフトでトラックに載せてもらい、
ゴロンと落ちないように、固定し、
出発。
ドキューン。
…。
事故も無く、
なんとか持ち帰った。
…。
何にもね-森に。
このコンテナを改造して前線基地造るのだ。
あはは。
そして、
朝から晩まで。
コンテナ改造。
コンテナは鉄製。
結果、
アングル(鋼材)を直接コンテナ本体に溶接し、
道具の収納棚を造りまくり。
さらに、
でかいエンジンウェルダーや、
様々な電動器具を詰め込んだ。
…。
それがこれだ。
…。
その収納密度の高さ。
家造りを忘れ、
コンテナ改造に熱を上げた。
出来上がってゆく変化に、
フツフツと脳が喜ぶ。
ドパーミン放出。
…。
あハハ-。
なかなかいいZoo-。
…。
俺の秘密潜水艦基地。
…。
ここを根城に、
深海を目指す。
ぶくぶく。
…。
そんな週末が次々と過ぎ、
肉体労働者は、
夜、
静かに頭脳戦に突入してゆくのであった。
体を使った後は、
頭だ。
その頭が問題だ。
だが、
逃げてはいられない。
戦うのだ。
…。
そう、あいつと。
建築構造とやらの暗号解析の知脳戦。
…。
家族が寝静まった夜。
ひとりみかん箱の前、
建築構造の本を開き、
ガマの油状態。
トラス構造とは…。
ムムムム…。
なんだそりゃ?。
…。
だが、
月日が過ぎ、
男は次第に理解してゆく。
根性と継続だ。
なになに、
トラス構造とは…。
(注、イメージ化し簡略して語っています)
中箱を抜いたマッチ箱の開口部の対角線上に、
マッチ棒を一本瞬間接着剤で貼り付ける。
すると、
この空き箱に横方向から押しても潰れない。
なるほど、
このマッチ棒がつっかえ棒となり、
反対方向から押すと、
このマッチ棒が引っ張り棒となり、
潰れない。
フムフム。
開口部に三角構造ができる。
これがトラス構造…。
なるほどトラスとは三角形の事。
鋼材の橋や、
高圧電線の鉄塔を見ると、
鋼材が三角形に組み合わされている。
強度満点の構造だ。
加わった力が鋼材を曲げる方向には働かず、
直線的に加わるから強い。
ふむふむ。
それで、
さらにこの中箱抜きマッチ箱に横方向からの力を大きくしてゆくと、
この斜めに入れたマッチ棒が折れるか、
接着部分が剥がれ、
マッチ箱が潰れる。
この時が、
強度の限界だ。
なるほど。
で、
どの位の力でこのマッチ棒が折れるか、
接続部分がどの位の力で剥がれるか。
それを調べれば良い。
ふむふむ。
分かるぞ~。
鋼材の座屈強度は計算できるし、
接続部の鋼材の厚さ等が分かれば、
引っ張り力による破断強度も計算できる。
なるほど…。
で建物の強度が分かると…。
…。
ところで、
その横方向からの力とは何だ?。
…。
風や、地震。
…。
その力をどう求めるのか?。
…。
良く分からんな~。
…。
まだまだ謎は尽きない…。
…。
フ~。
…。
頭が疲れ、
冷やすべく、
窓から外を見る。
…。
暗い闇の中、
風に木々の枝が揺れ、
その空に、
黄色い月が笑う。
ふふ。
…。
■
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?