あひる

 きのうがおわり、今日が始まる。あたりまえで、連綿で、息継ぎが毎回むずかしい。

 きのうは、エミューを見に行った。自転車で行った。心配だった、雨にもあたらなかった。

 ひさしぶりの外出だった家族の、自転車をこぐ様子をときどき振り返ってみる。

 たよりないかんじがする。でも、それはわたしだけの感触で、本当はちがう。
現に、遠い距離意を最後までへばらずついてきたのだ。

 

 エミューを見る、信じられないけど、エミューが、こんなに近くに見られるところがあるのも驚きだったけど、立ち入りを、誰も制限されておらず、管理人もいない。エミューは一頭だけで、オスなのかメスなのかわからなかった。看板に名前が書いてあったけど、ずいぶん古い。

 エミューをみて、ほかにも動物小屋があったため、中に動物がいるか探してみる。

 あひるが、いた。あひるが、ひとりで、うずくまっている。

 おおきな、あひるだった。黄色い卵焼きのような色のきれいなくちばしをもつ、あひる。羽は汚れている。糞がついているし、からだが重そうだ。

水浴び用のプールもあるのに、と思ったけれど、あひるはどうも年をとっている様な感じで、呼吸も苦しげで、羽に艶がなかった。あひるの小屋の前に、名前の札はなかった。だから、わたしは、家族と二人で「あひる、あひる」と呼びかけた。


名前はのりたま、かもしれない。今考えると、消えたのりたまの、何番目かの、のりたま。

 幼稚園の敷地の中の一画だっから、きっと、平日の昼間は、ここはにぎやかで、園児の元気な声が、響きわたっているだろう。

 雨がぱらぱらふってくる。

 エミューに、たんぽぽの葉っぱをあげると、食いついてたべてくれる。動物に餌をやって、コミュニケーションしたつもりになって、なんだか、どこもかしこも、寂しさのかたまりなんだな。と思う。孤独をおそれているのかもしれない、と思いつつ移動する。

 またおおきな公園を通り抜け、神社の静けさの中、すこしまわり道をして、家路へ。

 スマホを忘れてきたため、写真が撮れない。写真を撮る場所を探しながら、わたしは写真をとるべきなんだろうな、と思う。べきって! とにかく表現しなければならない、誰かに脅迫されている、だれだろう、もしもし、だれか。

 帰りにブックオフによる。

 わたしは、雑誌のコーナーで、家族は漫画を立ち読みして、遠目から見ても楽しそうだったから、漫画に感謝。

 わたしも、芥川賞の選評が載った、文芸春秋が欲しいなと探す。全部もっているやつだった。

 最高で古いのが、中村文則がとったときのだから、何年前のだ? 選評が楽しい。もはや趣味。

 そして、スタジオボイスという雑誌を発見。BRUTUSとか、クロワッサンとか、本特集のときは、飛びついてかってしまうのだけれど、スタジオボイスも「今最も面白い小説150冊」っていうタイトルだったから、買うことにする。

 雑誌を小脇に抱えて、漫画の方へ。

 家ではよめないのを立ち読みする。鳥飼茜の「サターン・リターン」を読んで、また業に燃やされそうな気持ちになる。小説家がでてくるから、おもしろいのだ。レンタルで前に読んだけど、本当はじっくり読みたい。時間と金、そして、ひとりの空間が欲しい。それだ、それ。ひとりきりに、なりたい。静けさが今は、まわりにない。不協和音が常時、静かに奏でられている。夜が怖い。

 スタジオボイスの購入の決め手は、ECDの本が紹介されていたから。

彼は、植本一子さんの旦那さんで、もう病気でなくなられている。植本さんの著書を読むうちに、彼の本を読んでみたいなと思っていた、本そのものじゃないけど。読みたいな。
雑誌はブックオフのポイントで、無料で購入できた。

 隣のスーパーで、食料品を買い込む。果物が食べたいけど、高い。りんごを、買う。高い。やっていけるのか、人生。健康に適度に生きたい、贅沢しなくてもいいからさ、と思う。まあ、共働きの世帯はいいな、と思う。いろいろあるけど、母子ってきつい。食品のアウトレットコーナーみたいなところに、ときどき掘り出し物があって、のぞいてみる。フローレットという、不思議なお菓子を購入。ジャケ買い。帰り道、食べる。

 外は、まっくらだった。着色料が入っているものを、わたしはあまりかわないけど、今回はジャケに免じて。

 味は、好き嫌いがわかれそうな、ラムネに人工的な味を混ぜて、触感が独特だった。かわいいお菓子だなあと思う。九州の方のお菓子だった。

 今日は、わたしの数少ない友達に隣の市まで、ドライブがてらランチに連れて行ってもらうのだ。だから、午前は忙しい、と思いつっつ、日記を書いてしまった。


リンゴはボケていて、今朝家族に剥いてもらい、電子レンジで焼きリンゴに。


本当は、エミューと、あひるの間の小屋に、ウサギが一匹いた。
それは、病気かけがをしているウサギで、前足がただれているのか、もうなおっているのか、わからなかった。毛のない皮膚の部分が痛々しいような感じがした。

目も濁っている。
ウサギのことは、呼ばなかった。
静かに、見ただけで、ウサギもそうだった。

小屋に帰るとき、きい、っとウサギは鳴いたような気がするけれど、風が小屋をきしませただけかもしれない

 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?