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和菓子の美味しい大伴家持とハンサムな大仏さんのまち高岡、再びの駅ビル「くるん」で新名物「牛すじうどん」

今週は普段の梅記事と比べ若干熱量高めの旅記事を書き続けているが、北陸編は一応これでひと段落。高岡についてです。

高岡は好きな街のひとつだ。声を大にして「大好き!」と叫ぶほどではないにせよ、親しみはあり、近くへ行く機会があれば、時間に余裕がある限り立ち寄ってぶらぶら歩きたくなる。
そういう街が全国にいくつかある。そのひとつが高岡である。少し鄙びた雰囲気と、高岡大仏さんが好きなのだ。

高岡大仏は駅から徒歩10分足らずで行けるのと、街中にいきなり大仏さんがどーんと現れる景観がほのぼのとして大層良い。しかも拝観は無料。とても身近な大仏さんだ。

よく言われるように高岡の大仏さんはハンサムだ。「イケメン」でも「格好良い」でもなく「ハンサム」を使ったのは、私にとってそういう感じの見目の良さだから。

高岡大仏さんの建立は1933(昭和8)年と奈良・鎌倉の大仏さん方と比べてはるかに新しく、それ故少々現代的な顔つきに感じる。現代的と言っても令和や平成では無論なく、大正末期から昭和にかけてのレトロモダンな平らかで穏やかな顔つき。すっきりとしてハンサムだなあと思う。
与謝野晶子は高岡大仏を「鎌倉大仏より一段と美男子」と称したそうだが、奈良にも鎌倉にも大仏さん方各々の良さがあり、私にとって高岡大仏さんは「ハンサム」、鎌倉の大仏さんはちょっと可愛げのある感じ。下から眺めるとまるでぶつぶつ愚痴を言っていそうな表情に見え、その可愛さが良い。つまり私は割と大仏好きなのかも知れない。奈良の大仏殿も好きで、長時間でも眺めていられる。

だが今回久しぶりに高岡へ来て気付いた。大仏さんの手前におわす二体の仁王像、彼らがまた大層格好良いではないか。びっくりした。
冒頭に載せた大仏さんの全景を撮ろうとしてそのスタイルの良さに「あれ?」と思い、後ろに回って再度驚く。背筋や腕の筋肉の感じが躍動的で、仏像を見て筋肉を感じるというのもなんだかおかしな話だが、大変均整の取れた美しい体つきをしておいでだ。

美マッチョですなあ
本当に良いスタイル

ああ気が付いてよかった。これまで気付かずにいたのはおそらく天候のため。雨に濡れ、黒く見えると気付き難かったかも。これでまた高岡に来る目的が増えた。

私が高岡を好きな理由のひとつに美味しい和菓子がある。高岡には和菓子の名店が多く、各店個性的な銘菓を創出している。今回は各店定休の水曜に来たので帰りの新幹線に乗る前に新高岡駅で買い揃えたが、欲しいものがちゃんと揃った。嬉しい。
「大野屋」さんの高岡ラムネに「とこなつ」、「おがや」さん(※高岡と思い込んでいたら氷見でしたすみません)のぎんなん餅。いずれもお抹茶をたてたくなる上品な味わいで、この趣がいかにも北陸らしい。

これらの銘菓が殊に旅情を感じさせるのは、随所に和歌が織り込まれているからだ。それも大伴家持の歌が多い。丸くて可愛い「とこなつ」はその歌に由来し、ふんわりした求肥にすっとした甘さが癖になるぎんなん餅にも和歌の小札がそっと忍ばせてある。この和歌はなんと約百種類もあるそうだ。

大伴家持と高岡とのつながりは、かつて奈良時代に越中の国府が置かれ、国守として赴任していたこと。天平18年、家持は29歳だったと言われる。彼が編纂に携わったとされる万葉集にはその歌が多数収められ(なんと万葉集全体の一割超。それ故編纂に関わったと考えられている)、うち半数近くの223首が越中時代に詠まれたそうで、関わりは非常に深い。越中の景観から着想を得た歌も多かったはずで、そう思いながら歌を眺めると一段と趣は深まる。

情景が浮かんで来る良い歌。ぎんなん餅がより美味しく感じられる

とはいえ私が「高岡=和菓子のまち」のイメージを持ったのは、以前仕事でお世話になったデザイナーの方が高岡短大卒だったから。様々な書籍の装丁を手掛けていたその方は日本美術や和風の可愛いものへの造詣が深く、ちょこちょこお土産にくださる品がいつも可愛く、私の退職時には「梅ももさんのイメージで」と九谷焼の絵付作家さんの手によるかわいい箱入り豆菓子と、ひと粒ずつ箱に入った珍しい白い苺をプレゼントしてくださった。
豆箱はあまりにかわいいので、今でも小物入れとして大事に使っている。その方のお話から、高岡は和菓子の美味しい住みよい街と知った。

金沢「まめや」さんの手描き豆箱。豆菓子ももちろん美味しかったです

そしてその方も食べたであろう高岡駅ビルの駅うどんが今遠征最後のランチ。
ここは以前「今庄」という店で、そばとうどんを一玉ずつ豪快に入れた「ちゃんぽん」が名物だった。近年駅ビル改修に伴い店舗が替わり、現在は「くるん食堂」になっている。

角度が少し異なりますが同店舗です(2017年)

外観のみ確認するつもりだったが、「松坂牛」の文字につい目が留まる。

西日本で肉と言えば牛肉、肉うどんもやはり牛。能登牛や氷見牛ではないのね…と思わなくもないが、貼りだすのはご自慢だからに違いない。それは是非食べてみたい!と氷見帰り、新高岡へ向かう前に入店。
店内の様子は「今庄」時代とほぼ変わりない。券売機の場所も同じ。以前はソフトクリームを売りにしていたが今はない、それぐらいの違いだろうか。お店の方の穏やかで親切な感じもそのままだ。

現在の店内
2017年、「今庄」時代

券売機で牛すじうどんとトッピングのわかめを買って2分程度で呼ばれる。購入と同時に厨房に注文が入り、受取時に食券と引き換える。

たっぷりの惜しみない牛すじ。ちょっと脂が強いので、うどんより丼向きかも

とても綺麗でかわいらしい小型の丼。これと麺のつるつるとした感じで、店が変わったことを実感した。「今庄」さんのうどんは太くもちもちとしたつゆがしみ込みやすい麺だった。こちらは伸びにくいつるつる麺。つゆの色や味も随分違う。

今庄さんの「ちゃんぽん(当時300円)」。そばも太めで、つゆがとても美味しかった

とは言え、私は駅に駅麺があるだけでありがたく思う。それに「今庄」さんは今も高岡駅南口に店舗があり、恋しくなったら行ける。「くるん食堂」さんはこのボリュームたっぷりの牛すじ以外にも新メニューを打ち出しており、その意欲的な感じがこの先も楽しみだ。
そして実は「くるん食堂」には「そば」がない。うどんとラーメンのみ。それも「今庄」時代と大きく変わった点で、次に来る時にどんな変化があるか、是非また確かめたいところである。

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