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「痛いの痛いの飛んでいけ」は本当に効果があるのか考える回。

こんにちは。

薬剤師医学生おじさんです。

今日のテーマは「痛いの痛いの飛んでいけ。」という、
魔法の言葉についてです。

この魔法の言葉は全国各地、多くの人が子ども時代に聞き、大人になってから言う機会の増える言葉なのではないでしょうか。

例えば、子どもが転んで地面に頭を打った時なんかは、びっくりするし痛みが出るので泣きます。

子どもが転び頭をぶつけた状況を見た親は、子どもの痛みを癒そうと頭をさすり魔法のコトバをかけるのです。

「痛いの痛いの飛んでいけ~。」

この方法なんかウソっぽいと思いつつも、多くの人がやってしまいますよね。でも、これには鎮痛効果の科学的な裏付けがあるようです。今日はそれをわかりやすく説明していきたいと思います。

痛みは末梢にある侵害受容器というレセプターで感知されます。これがあることで、様々な痛みを感知できます。

ちなみに、
末梢神経系とは中枢神経系(脳+脊髄)に対する概念であり、簡潔に言うと脊髄の先の神経ということになります。末梢というと手足の先とかイメージされやすいですが、脳と脊髄を除く神経は末梢神経だと考えればいいと思います。

末梢では熱刺激、機械刺激、化学刺激とか様々な痛みの原因になりそうな刺激を受け取り、それをまず脊髄へ、続いて大脳へと情報を送ります。このように、動物は外界の情報を脳というtransducerを介して認知し、それを自分の行動・運動などに反映させる処理をしていきます。

子どもの感覚と行動は、
1.痛い→2.何らかの外因により痛みが生じた→3.これ以上のストレスがかからないように、助けを求める→4.泣く→5.助けてもらって安心する→6.泣き止む

こんな感じだと思います。

痛みは末梢から脊髄に入る時に当然神経細胞を介して情報伝達されますが、様々な情報の感覚神経の神経細胞が脊髄に集まってくるので脊髄に合流する入り口は痛み以外の感覚細胞も来ています。つまり、脊髄の入り口では多くの感覚神経が混在しているのです。

例えば他の感覚には、震えを感知する振動覚、圧力を感知する圧覚、身体の中での空間的な場所を把握する位置覚などがあります。

ここまで細かく説明しすぎたので、この後は軽めにいきたいと思います。

感覚には情報のpriorityが存在します。
痛みの情報は、その痛みが強い時に、それを脳へ伝えるためにその他の感覚を抑えて痛みの情報に特化させる機構が働きます。

神経が他の神経の情報伝達を抑制する仕組みを側(方)抑制というのですが、わかりにくい人は、次の例を想像してみてください。

学校の教室で、伊丹くんが突然大声で叫びました。伊丹くんの周りに居たあつ子さんや、進藤くん、イチローくんはその大声にびっくりして息をのみ、叫んだ伊丹君に注目しました。

この状況、なんとなく想像できるのではないでしょうか。これが側抑制が起こる状況の例えです。

ここでは痛みの情報が選択され、脳にその情報が伝わりやすくなります。

では、逆に、触覚や圧覚の神経を刺激したらどうなるでしょうか。

あつ子さんが急にめちゃめちゃ叫びだしたら、伊丹君もさすがに驚き、黙るかと思います。

これがゲートコントロール理論と呼ばれる神経伝達の考え方です。
感覚の情報は、様々な感覚が相互に作用し、モジュレーションを受けて脳へ伝達されるのです。

つまり、子どもがぶつけた頭を親が愛情込めてさする(触る)ことで、その感覚が痛みの神経伝達を側抑制の機構で抑え込み、実際に痛みは少し軽くなることがあるのです。

もちろん、痛みが強すぎると、触覚を刺激しても手に負えないくらいの情報伝達が起きるので、ほぼ効果がないことが想像できます。

「手当て」とは文字通り、痛い場所に手を当てることから来ていると思いますが、昔からあるこの言葉にはちゃんと理由があったということです。

結論として、「痛いの痛いの飛んでいけ~。」は科学的にも多少は効果があるみたいです。

それでは、ごきげんよう。

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