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痛み止めはどのようにして痛みを抑えているのか説明する回

痛みとは


一言で痛みと言っても、それには多くの種類がありますよね。
心の痛みもあれば、身体の痛みもあり、痛みを伝える神経自体が傷んで起こる痛みなど様々です。

その中でも最もポピュラーな痛みとでも言うべきものは、身体の痛みだと思います。今日はこの身体の痛みにフォーカスしていきたいと思います。

怪我した時の生体反応とは


怪我した時痛いですよね。ジンジンしたり、やめてほしいです。

怪我をすると、組織が壊れて、炎症が誘発されます。
炎症には発赤(炎症の起きている組織が赤くなる)、発熱(体温の上昇または局所の熱感)、腫脹(炎症部位の腫れ)、疼痛(痛みの発生)などがあります。これを炎症の4徴候といいます。怪我をした部位では炎症が起きることで、今ここでまずいことが起きているという警戒情報を出しているのです。

組織が壊れると、炎症の元になる炎症性物質が産生されます。

これは、主にプロスタグランジンという物質です。

プロスタグランジンの発見


プロスタグランジンは、もともと羊の精嚢腺にある平滑筋を収縮させる生理活性物質として発見されたようです。
精嚢腺は前立腺に合流し、射精の時に放出する精液を作っている器官です。
精液は子宮の平滑筋に作用して、子宮の収縮を促し精子が卵子と出会える確率を高めるのです。なんか身体の仕組みってすごいですよね。僕はこういうよく出来た仕組みを知るたびに、薬とか医学に魅了されてしまいます。

プロスタグランジンの名前の由来とその機能

前立腺は英語でProstate glandと言います。
そうです、prosta+gland+inでプロスタグランジンと名付けられました。
人類の皆が悩まされる痛みの原因物質の主役が、羊の精液から発見されたとはなんか意外ですよね。

プロスタグランジンは、
①痛みを伝える感覚神経の感度を上げます。
②組織の修復促すために血管に作用して局所の血流を増やします。
③脳の視床下部という部位に到達すると、体温のセットポイントを上昇させます。

結果として、
①では、痛みを感じやすくなり
②では、発赤、腫脹が誘発され
③では、発熱が起こります。

プロスタグランジンは、このように警告物質としていくつかの反応を誘発し身体の安全を維持するために働いています。

熱が出たり、痛みがある時に処方される薬で有名なものに、ロキソニンとかイブプロフェンなどがありますが、これらの薬は数多ある薬の中でも多くの人に馴染みのあるものなのではないでしょうか。

これらは、プロスタグランジンを作るための酵素(COX)の働きを抑えることで、プロスタグランジンの産生を抑制します。プロスタグランジンは発熱や疼痛の原因物質なわけですから、この薬を飲むことで熱が下がり、痛みが和らげられるのです。熱を平熱より下げない理由は、熱が上がらないようにしているだけなのでそれ以上下がらないということは理解し易いと思います。

多くの人が、コロナのワクチンの後に解熱鎮痛剤を服用したと思いますが、ワクチンの接種後には体内で炎症が起こるので、このようなメカニズムで痛みがでたり、発熱が起こっていたのです。

とりあえず、今あるこの症状をどうにかするという対処方法を対症療法といいますが、コロナのワクチン接種後に使った解熱鎮痛薬も対症療法の一つということになります。

薬って複雑で、よくわからないと思いますが、ちゃんと想定される理論があって、結構シンプルな考え方で整理できるのです。数はたくさんあるので、一つ一つ覚えるのは大変で薬学生泣かせかもしれませんが。笑

今日はここまでにして、また痛みについては今後も取り上げていきたいと思います。

それでは、ごきげんよう。


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