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反抗期と教育虐待


私の母は専業主婦であり、昔から完璧主義なところがある。
大金持ちではないが、平均よりはやや裕福な家でお金に困ることなく育ってきた。

そして私は小さい頃から塾に通い、競争社会の中で生き抜いてきた。
テストの成績で容赦なくクラス替えが行われる塾、それに伴うヒエラルキー。

中学生までの私は絵に描いたような優等生であり、カーストのトップに君臨していた。

「えむちゃんは成績も優秀で可愛くてしっかりした子ね~」
なんて保護者や先生含め、周囲の大人からの評価は高く、母親は鼻高々であった。

周囲の期待通り、私は県内随一の進学校に合格した。

が、燃え尽きてしまった。

勉強が面白くない、志望する大学も学びたいことも将来の夢もない。
目標を失い、なぜ勉強するのかわからなくなった。

目標や夢ができないまま、勉強を強要され、はじめて勉強が嫌いになった。
代わりに中学生まで注力できなかった部活に面白さを感じた。

部活での活躍に反比例して、学業の成績は地に落ちた。
母親は憤怒した。

勉強しなくていいの?の繰り返しと
○○ちゃんはやってるのに…
○○くんは△位なのに…
あなたのためにどれだけのお金をかけたと思ってるの?
あなたのためを思って言ってるのに!
せっかく〇〇してあげたのに…

何回言われたことか。

そして日々友達と比較される。
私がしっかり勉強しているか、そーっと部屋に覗きに来る
(部屋のドアを閉めることを許されていなかった)
朝早く、私が寝ている間にスマートフォンの中身をチェックしにくる
(当時、スマホを使用する時間は管理されており、パスワードをかけることも許されていなかった)

そんな監視下に置かれた私は
次第に精神的なストレスがたまっていった。

家で勉強している時、寝たくないのに睡眠薬でも飲んだかのような猛烈な眠気に襲われ、いつのまにか寝てしまっているということが増えた。(学校ではそのようなことはなかった)

当時は自分のせいだと思っていたが、あれは確かに気絶に近く、異常だった。
たぶん、精神的なストレスからくるものだったのだと今は思う。

母親の監視は次第にエスカレートしていった。

門限を1分でも過ぎると鬼LINE、鬼電
時には私の友達や彼氏の親にまで連絡されたことがあった。
母親の怒りが100に達した日、真冬、氷点下の寒さの中、家に入れてもらえないことがあった。

さすがに心配の域を超えておかしいと思った。

専業主婦だった母は、私が帰宅する頃には必ず家におり、鍵を持って学校に行く必要がなかった。
だが、また家に入れてもらえないのではと思い、こっそり家の鍵を持って学校に行くことも増えた。

そんな中、衝撃的なことが起こった。
今まで見たこともない最悪の順位が書かれた模試の結果。
母親はこれを見るなり、
私の目の前でびりびりに破り捨て、燃やしたのだ。

悲しいより先に驚きだった。
今まで頭が真っ白になるということが無かったのだが、
想定外の出来事に放心した。
そして悟った。

ああ、
この人は頑張ったというプロセスは一切評価に入れず、成績でしか私を評価しない人であり
優秀な私でないと母は気に入らないんだなと。

才色兼備の娘が母親のステータスであり、
そのステータスを失いヒステリックになっている母親を見て、
やってられるかと思った。

私は母親の道具じゃないと思った。

それから毎日毎日、母親とは怒鳴り合いの喧嘩をした。
時には掴み合いの喧嘩もし、警察を呼ばれたこともある

私を守れるのは私だけだったから。
私を否定する母親に徹底的に反抗した。
(父は単身赴任中であり、あまり育児に口を出さない)

正直母親は戸惑ったであろう。
今まで親の言うことを素直に聞く子供で
手がかからなかったのに、なんで?
なんで言うことを聞いてくれないの?と。
同じ塾出身の子は今でもあんなに成績良いのに、
なんで?と

(ちなみに「小さい頃は本当に手がかからなくて、かわいい子だったのに。今の方が大変よ!」と23歳になった今、母親から離れても言われる)

部活では国体候補になるくらい、かなりいい成績を残していたが、
勉強より褒められることが無かった。
褒めたとしても
勉強もこれくらい頑張れると良いのに…と一言多かった。

そんなこんなで受験期も勉強のモチベーションが上がらず、かろうじてセンター試験で通過した大学に進学した。

母親は失望しただろう。
恥ずかしくて進学先を言えないわとボソッと呟かれたこともある。
どうやら大学生時代の私は母親にとって汚点であり、恥ずかしい存在だったらしい。
周囲は国公立大学、医学部、早慶が多かったからだ。

私もこの結果に何も思わなかったわけではない。
自分の不甲斐なさを感じたし、惨めにも思った。
だから大学に進学させてもらえる環境、
今までお金をかけてくれたことに感謝し
大学ではしっかり勉強し、早い段階から将来のことをしっかり考えておこうと心に誓った。

そして私はバイトや遊びに明け暮れることもなく、淡々と勉強し優秀な成績を収め、順調に就活を終えて今に至る。

そんなこんなで激闘の反抗期から数年経ち、
母親とたまに出かけたりするくらいには関係が修復したように思われるが、

やっぱり私は母親が苦手だ。というか嫌いだ。
人間として価値観が違いすぎる。

LINEを返信しないと拗ね、突然、罵詈雑言を浴びせてくることもある。

そして2023年、社会人になり自分で稼げるようになった私は、やっぱり母親からは距離を置こうと決意した。


===

ここまでつらつらと書いてきたが、
自分を守るために全力で反抗して良かったと心底思う。

あのまま母親の言うなりになっていたら、
きっと母親が死ぬまで母親に縛られていたことだろう。

そして私も自分の意見とか目標とか、夢とか、
そういったものを自分で見つけ選択し、
自分の意思で決めた道に、責任をもって生きていくことはできなかったと思う。

最近、「教育虐待」という言葉を耳にするが、
私の母親はまさにそれに足を踏み入れていた。

もし反抗していなかったら、、、
私は教育虐待の事件のように、母親を手にかけていたかもしれない。

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子供って勉強させようと親が躍起になっても
勉強しません。するどころか勉強が嫌いになります。むしろ放っておいた方が危機感を持って勉強したりするものです。

親として、子供には幅広い選択肢があることを教えてあげることが大切だと思います。
親が決めた進路ではなく、子供が決めた進路を尊重し、子供にある程度責任を持たせてその道を歩ませるべきだと私は思います。

進路について、しっかり考えているのかわからない
といった親の目線からの悩みもあるかと思います。
子供は何も考えていないわけではなく、
ただ単に親に言い出すことが怖い、馬鹿にされそう、否定されたくない
といった理由が大半だと思います。
無意識のうちに子供の夢を潰すような発言、していませんか?

勿論、子供の進路を全肯定することは難しいし考えが甘いこともあるかと思います。
その際は「何言ってるの?できるわけないじゃん。社会はそんなに甘くないのよ!嘘でしょ、そんな仕事目指してるの?もっと手堅い道に進みなさいよ」とただ否定するのではなく、親としてそう思う根拠をしっかり伝えること、一旦受け入れることが大事だと思います。



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