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クレタ島の偶然

これは実際にあった出来事です。
2014年、私が26歳だった時のこと。

私は村上春樹さんの「遠い太鼓」のクレタ島の回を読んでいてお腹が空いたので、最近見つけて気になっていたコーヒーが美味しいで有名なカレー屋さんに行った時のことです。

そこはおばちゃんが一人で営業していました。
私はカレーとコーヒーを注文しました。

料理を待っている間、「遠い太鼓」の続きを読んでいました。
しばらくして料理が運ばれてきました。
運ばれてきたカレーは具沢山で、スパイスの効いたカレー。ナス、ピーマン、ズッキーニ、その他諸々、大きくカットされた野菜がゴロゴロ入った迫力満点のカレーです。

コーヒーはハンドドリップで丁寧に入れたこだわりの豆のコーヒー。
私は夢中で食べました。

そんな私に、おばちゃんは話しかけてくれました。
ありきたりな話をしている中で、旅行から帰ってきて今日が久しぶりの営業だとおばちゃんは私に言いました。

どこに旅行に行ったのか聞いて欲しいんだな、と悟った私は、
どこへ旅行に行ったのか尋ねました。

おばちゃんの返答を聞いた私は、まるで失われた宝物を意外な場所で見つけたような驚きに包み込まれたのです。

「ギリシャのクレタ島ってところに行ってきたの。あなた知ってる?」

知ってるも何も、今その旅行記読んでいたところですよ、興奮を隠しきれず、私は読んでる本をおばちゃんに見せました。

まるで村上春樹さんの「東京奇譚集」の偶然の旅人、に出てきそうな出来事が起こったのです。

そこから話は盛り上がる一方です。

ギリシャで買ってきたお酒を2杯もストレートで飲ませてもらい、ギリシャで買ってきたコーヒー豆まで頂いてしまいました。

カレー、コーヒー、ギリシャの酒、ギリシャのコーヒー、クレタ島の土産話、しめて750円。

安い!

おばちゃんありがとう。
心が和んだひとときでした。

さらに、このカレー屋さんに入ったのも偶然で、行くつもりだった焼き鳥屋が貸切の予約で渋々諦め、前々から行ってみたかったインドカレー屋さんは貸物件になっており、さて、どうしようかとトンカツ屋とカレー屋で最後まで悩んだ末に辿り着いたのが、このコーヒーの美味しいで有名なカレー屋さんでした。

様々な偶然が引き起こしたこの出来事はただただ脱帽です。

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時はたち、このカレー屋さんは店をたたんでいました。

きっとおばちゃんは、クレタ島が楽しすぎて、クレタ島に移住してしまったのだろう、きっとそうだ。そうに違いない。

晴れ渡る空を見上げ、私は歩き出しました。

クレタ島、私も行きたいな。



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