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ステキな学び場Vol.1 ヒミツキチ森学園

まさか間をおかずして再訪することになるなんて想定外だったのですが、7月の訪問からまだ日の浅い9月、再び神奈川県の葉山にあるヒミツキチ森学園を訪問してきました。
前回お話を伺ったグループリーダー(先生)のあおちゃん、そして今回お話を伺った校長のちほさんからのメッセージを交えてレポートしますね。


子ども真ん中、とも違う

2020年の教育改革のころから、「子どもを真ん中にした学び」という言葉をよく耳にするようになりました。
教師主導型で受け身の学びからのパラダイムシフトですよね。私も、ついにそういう時代が来たね〜と膝を打ったものです(ずいぶん偉そうやなw)。

でもね、でもですね、
ヒミツキチは「子ども真ん中」とはちと違うんですよ。

それは多分、こんな感じだから。

子どもが真ん中っていうのは、大人(保護者と先生)の間に子どもをおいて考えるっていう感じ。
だけど、ヒミツキチは軸が外側じゃない。自分ど真ん中なの。

校長がやることは、ただ自分の声を聞くこと、自分の真ん中をずらさないっていうことしかない。

校長のちほさんの言葉が、それを体現しているよね。
まず大人が自分ど真ん中で生きていなかったら、子どもたちのど真ん中を支えられない。
そんな信念を感じました。

ここはニュージーランドの小学校なの?!

NZで視察した小学校を見た時、日本の学校でもこんな光景が広がったらいいなって思ったの。

NZの小学校で見た光景

子どもたちが自分のラクな姿勢で授業を受けている。使うのもノートやPC、自分の方法にあったものを選ぶ。

椅子に座って話を聞く時間のほうが少ないくらいのNZの小学校低学年クラス
みんな自分の心地よい学び方が分かってる

ヒミツキチに行ってまず驚いたの。
だって、このまんまの景色が目の前に広がっていたんだもん。

ヒミツキチで見た光景

子どもたちが自分で選ぶ。
学ぶ場所も、使うツールも、その日の学ぶ内容だったり自分の気分だったりに合わせて、選択して決めることができる。

ノートを開く子もいれば、タブレットを使う子もいる。漢字を書いてる子の隣で、発表の資料をまとめる子がいる。
分からないことがあれば周りに聞いたり、大人を探し求めたりして、自由に動き回る。

学校でよくある「先生、トイレ行っていいですか?」なんて声はない。だって、トイレも水分補給も自分のペースでいいんだもん。

ヒミツキチには時間割はないけど、ゆるやかな一日のスケジュールはある。でも、必ず守るものではないから、当日のようすによって時間がズレたりする。
私が訪問した2回も、朝のサークルタイム(みんなで丸くなって対話する、朝の会みたいなもの)の時間が全然違った。サクッと終わって次の活動へ移った7月、一つのことを時間をかけて話し合う9月。その時の状況に応じて活動時間が変わる。

ベースはオランダのイエナプラン

ヒミツキチの教育のベースにあるのはオランダのイエナプラン。
イエナプランのコンセプト「一人ひとりを尊重しながら自律と共生を学ぶ」をベースに、こんな風に学園の学びを定義しているよ。

ヒミツキチ森学園HPより

ね、自分どまんなか!
他者と協働するためには、まず自分という個と向き合うことが大切になる。それをスタッフも子どもたちも共有しているのを感じました。

ゆるやかな時間と空間が紡ぐもの

ヒミツキチにないもの

チャイム、教科書、時間割、先生、学年、校則、、、
学校には当たり前にあるものが、ここにはない。そこにいるメンバーたちによって作られているゆるやかな学びの流れがある。

当たり前といえば当たり前のこと。
学ぶ内容やその日のコンディションで学び方って違うよね。ただ、「学校」ではそれは許容されていない。
決まったクラスで、決まった席で、決まった内容を、決まった時間の中で学ぶ。

学ぶ目的が何かっていうことを考えたときに、何を大切にしたいかって一度立ち止まって考えてみてもいいなじゃないかと思う。

撮影NGだったので、ヒミツキチで学ぶ子どもたちのようすはinstagramを見ると一発で分かります。
 ヒミツキチ森学園instagram ⇒ こちらから

自分の時間を生きている

日本の子どもたちは忙しすぎると、たびたび国連から勧告を受けているのはあまり知られていない話。
夜10時すぎに塾のカバンを背負った小学生が一人で電車に乗っている国なんて、海外から見たら異常なんだよね。
多忙なサラリーマンだって、一日のうちに何社も営業に回ったら疲れちゃうでしょ。ところが子どもたちって、幼稚園・学校の後に、学童が行ったり、おけいこをはしごしたり、曜日ごとに違う場所で違う人と違うことをしなきゃいけなかったりする。
それって、本当に子どものため??

ひょっとしたらヒミツキチの子どもたちの中にも、家に帰ったらそういう時間が待っている子もいるかもしれない。
でも、少なくとも日中は自分のペースでいられる時間と空間が保障されている。これは、子どもたちが自己対話をするうえでとても大切なことなんだよね。自分と向き合うことを通してしか、他者と向き合えるようにはならないから。

「自分は今、何をしたいのか」
「自分は今、どう感じているのか」

そう自分に問いかける時間があって、どんな答えであっても受け止めてくれる人たちが周りにいる。
こころの安心基地が、ヒミツキチにはあるのを感じたよ。

「フツーの子たちだね」の裏に

前回の視察の後に、参加者のお一人がポロッとこぼした言葉。

「意外とフツーの子たちだったよね」

そうなんだよね。
フリースクール=学校行けない子が通うところ=課題がある子や学校に行けない引け目を感じている子たちがいる
そんなイメージを持っている人ってけっこう多い。

2022年度の小中学生の不登校者数(年間30日以上の連続した欠席がある子)は29万人。断続欠席や休む選択ができない潜在的不登校者数まで含めたら50万人を超えるのではないかとも言われている。小中学生数は約93万人だから、3分の1が顕在的不登校、半数以上が潜在的不登校って、あなたはどう思う?

「意外とフツーの子たち」が今、学校にNOって答えを出している。「意外と」フツーじゃなくて、「フツー」の子たちなんだよ。

「フリースクールは、国家の根幹を崩しかねない」発言から見えてきたこと

かなり大きな話題になったから、ご存知の方も多いよね。
滋賀県の東近江市長が「フリースクールは、国家の根幹を崩しかねない」などと発言をしたこと。
この発言自体も時代錯誤甚だしいんだけど、それ以上に私が感じたのはヤフーやツイッター(X、ね)のコメントから、街の人たちのフリースクールに対する認識だったの。
 学校に行けない子の受け皿
 居場所がない子たちが過ごす場所
 学校に戻れるようにするための練習場所

フリースクールが学ぶ場としてはまだまだ認識されていないということが、コメントを通して伝わってきた。もっと知ってほしい、伝えていきたいなって思ったんだよね。

学校に行けないんじゃなくて「行かない」選択をする子
学校ではできない学びを求めている子
自分が心地よく学べる場として選択する子

そんな子どもたちが増えているんだよ。

ヒミツキチで学ぶ子たちもおんなじ。自分が学びたいと思える場所を探してたどり着いた子たちがたくさんいる。
もちろん、きっかけは親だけど、最終的に選んだのは子どもたち。ヒミツキチでは入学前に子どもたちの意思も確認する。
学校に行けなくてっていう子もいるけど、あえてヒミツキチを選ぶ子たちも多い。小学校入学の段階からヒミツキチに来てる子もいる。

余談だけど、ヒミツキチに通うために都内から移住するファミリーもけっこういるんだって。葉山は海も山もあるし、買い物もそんなに困らない。こじんまりとした町で暮らしやすいよね。

フリースクール、オルタナティブスクールに対する認識が変わっていったらいいなって思う。この発信が、少しでも役に立ったらいいな。


ヒミツキチ森学園の基本情報

名称 ヒミツキチ森学園
住所 〒240-0111 神奈川県三浦郡葉山町一色624-2
アクセス バス停「一色住宅」にて下車、徒歩3分
 ○ JR逗子駅東口の1番乗り場から衣笠行きに乗車、バスで12分
 ○ JR衣笠駅から3番乗り場から逗子駅行きに乗車、バスで18分
公式HP https://himitsukichi-school.com/


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