見出し画像

復興シンドローム【2017/07/01~】㉗

このままコンビニのバイトともう一つの仕事で、ほそぼそと人生を終えるのか。

夏真っ盛りを喜びもしない。そう、もうそんな歳ではないのだ。
「無駄に歳を取ったな……」

最近、毎日のルーティーンが本当に速く過ぎていく。いや、過ぎるというよりは「流れる」と言った方がいいだろう。

ボクの毎日が、流れていく。昨日と同じ今日、そして今日と同じ明日が来るであろう。

最近、どうも気分が沈む。震災直後から今の今まで、この福島の変容をつぶさに見てきた。自分の生活も一向に向上しないまま。

まぁ、もうお金よりも大切なものを探すのも疲れた。

「死にたいな」

部屋で一人そう呟いた。嘯いた?いや、きっと本音だ。無意識に「死にたい」と口にする回数が徐々に増えていく。

ある日、ボクはコンビニのバックヤードで倒れた。
(コールドドリンクの後ろ)

脱水症状だった。

涼しいところで仕事をして、自分の汗が蒸発していることも知らずにずっと仕事をし続けると、自分が知らない間に水分不足になるらしい。

「すいませんでした」

「お大事にね。明日は休みな」

オーナーの優しい一言が自分に少し人間らしさを思い出させてくれた。
そして、それに甘えさせてもらった。コンビニの夜勤を毎日しているため、明け方の街しか知らない。そして、もう一つの仕事午後から始まり、夜中に終わるため、午後7時からのにぎやかな繁華街なんて、遠い記憶の向こうだった。どちらの仕事も休んで、ぶらっと町中をドライブ。

数年前と比べると、明るいネオンの数が増えた。

街が生き返った?そう?

もはや自分には福島の復興のことなど、興味がないのかもしれない。とても冷めた目線で何の興味も持ちえない。ただ、この街が何事もなかったかのように夜の賑わいを取り戻していくことに、何か忘れていないかという不安だけが少し心の奥底に残っていた。

このまま、人々が故郷に戻って、街に活気が戻りました。チャンチャン♪でいいのだろうか。

きっとダメだろう。あれだけの大惨事を僕らは過去の遺物にしようとしている。しかも、忘れようとしている。ダメだ。本当はダメだって分かっている。でも、それを考えたところで、自分の暮らしも、福島も何も変わらないじゃないか。
だから、前を向いて歩こう......とみんなは言う。

だから、消えてなくなりたい・・・・・そう、ボクは思う。

見解の相違は仕方ない。人それぞれ歩んできた人生が違うから。ボクはきっともう疲れてしまったんだ。

2011年のあの日「どんなことをしてでも生き抜く。生き馬の目を抜くように」と誓った気概はもはや0になっていた。

仕事もプライベートも何もない。震災からここまで何とか生きてこれた。それだけでいいじゃないか。自分にはもはや、夢とか目標なんてものはない。ただ、呼吸をして生きているだけだ。観葉植物と同じようにこの街ですべての変化を見つめているに過ぎない。

自殺未遂。

自分の心にふと何かがよぎった。

福島県のどこかに住んでいます。 震災後、幾多の出会いと別れを繰り返しながら何とか生きています。最近、震災直後のことを文字として残しておこうと考えました。あのとき決して報道されることのなかった真実の出来事を。 愛読書《about a boy》