X'mas Present
数えていた。今日、クリスマスまでの日々を。一つずつ指を折りながら、あなたを思いながら。
いまどこ?
近くに来てくれてるよね?
私はあなたに伝えたこの部屋で、祈るような気持ちで待っている。クリスマスを一緒に過ごそうよ。
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「少し時間が欲しい」
あなたがそう言い出したのは付き合って2年を過ぎた頃。お互いに忙しい仕事をやりくりして会う時間を作ってきたけど、すれ違うことが少しずつ増えてしまっていた。このまま無理して一緒にいる意味があるのかと迷っていたのはあなただけじゃなくて、私も迷っていた。
あなたから時間が欲しいと言われたときには動揺したけど、どこか気持ちが楽になるような気がしたことも確かだった。距離の取り方が分からなくなって、二人で過ごす時間が少ししんどかったんだ。
あなたと離れて半年。ときどき連絡をしあうけど会う時間を作らずにそれぞれが自分の気持ちに向き合った。そんな立ち止まる時間が欲しかったのかもしれない。
でもあなたを思い出さない日は一日もなかった。ふとした瞬間にあなたが浮かぶ。本当にちょっとした瞬間に。晴れた空を見上げたとき、おいしそうなケーキを見つけたとき、仕事の区切りがついたとき、歯を磨いているときでさえも、鏡の中にあなたが浮かんだ。日常のどんな場面にもあなたがいる。
そんなふうにあなたの存在の大きさを感じはじめていた頃に、街はどんどんクリスマスの色を濃くしていた。去年のクリスマスを思い出す。体を寄せ合いながら海沿いのクリスマスイルミネーションを眺めたよね。寒かったけどあなたがいれば暖かかった。
今日はすごく寒い。
そう思った瞬間、寂しさがじんわりと体に広がっていった。
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クリスマスに会いたい。
私はあなたにメッセージを送った。離れてみて分かったんだよ。あなたのことがすごく好きだってはっきり分かった。そばにいたい。もう時間なんていらないよ。会いにきてよ。
ホテルの窓にもたれて外を見ると視界に入るすべての光が不安げに揺れていた。来てくれないかも。もしかしてもうダメなのかな。返事がなかったからね。
涙がこぼれそう。
その瞬間、ドアベルが鳴った。胸が高鳴る。慌ててドアに向かった。ドアノブに手をかけながら反対の手を胸に当ててドキドキする胸の高鳴りを抑えた。
それからゆっくりとドアを開けると、そこにはサンタの衣装を着たあなたがいた。
「メリークリスマス!」
手には衣装と同じ真っ赤なバラの花束。
「待たせてごめん」
来てくれたんだ。落ちそうだった涙がぽろぽろとこぼれた。変わらないあなたの笑顔。
「全然、待ってない」
そう言って首を振った。本当はずっと待ってたよ。今日だけじゃない。あの日から何日もずっと。あなたがまた来てくれるのを待っていた。そんなこと、きっとあなたも分かってるよね。
「ごめん。心配させてごめん。もう大丈夫だから」
その言葉に涙があふれて、あなたの顔もバラの花もぜんぶぼやけてくる。まっすぐに私を見つめるあなたのまなざしに、もう迷いは感じられない。
「結婚しよう」
うれしくてどうしようもなくて、言葉にならない。だから返事の代わりにあなたの胸に思いっきり飛び込んで、あなたを力いっぱい抱きしめた。あなたも力を込めて、私を抱きしめてくれた。
「ずっと一緒にいよう」
大好きなあなたからのクリスマスプレゼントは、プロポーズとバラの花束。こんな素敵なクリスマスは一生忘れない。
「ありがとう。大好き」
「うん、大好きだよ」
ねぇ、クリスマスはハッピーエンドがいいよね。
お気持ち嬉しいです。ありがとうございます✨