また夏が来る。
「誰かに恋しなよ」
ってあなたが言った。笑いながらそう言った。ひどい男。あなたはとってもひどい男だ。私があなたに恋してるって分かってるくせにそんな傷つく言葉を言うんだよね。
平日の夜にだけやってきて甘い言葉で私を包むくせに、たまにそうやって私を突き放す。
じゃぁ他の誰かに恋しようかとちょっと心を動かすと、あなたはすぐに気づいて私を強く抱きしめる。どこにも行くなよ、俺のものでいろよって体で私に訴えかける。
そうしてまた、私はあなたに溺れる。
「君は自由だよ」
って言うくせに、自由になろうとする私の手に鎖をかける。見えない鎖は見えなくて外せない。
私は私だけを見てくれる愛がほしいのに、私がほしいのは私だけを見てくれないあなたの愛。それじゃ、永遠に手に入らないんだね。私のほしい愛。
「ねぇ、今度、花火を見に行こうよ」
私が明るくそう言うと、あなたは笑って頷く。
「ねぇ、今度、赤い観覧車に乗りたい」
私がウキウキしてそう言うと、あなたは笑って頷く。
どれも叶わないのに、頷かないでよ。
どれも叶わないけど、頷いてよ。
どの言葉も拒否しないあなたが私は好きだから。
#短編小説 #超短編小説 #掌編小説 #愛 #拒否 #あなた #花火 #観覧車 #夏
お気持ち嬉しいです。ありがとうございます✨