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【#8】“英語好き”を育てる教師のMindset❶ 〜「教育評価」は何のため?〜

こんにちは!
Sakaue Wataru | English Teacherです😊

今年で教職12年目になりました。
毎年同じような仕事や役割を任せていただいていると、いい意味で効率よく、スムーズにできることが増えてきます。

ただ気をつけたいのが、仕事をこなすことが目的になり、「なぜ、それをする必要があるのか?」という本質的な部分が蔑ろになる(形骸化する)ことです。

自分の仕事が、子どもたちはもちろん、周りの同僚や組織に還元できるように、大切にしたいと思っている「マインドセット(mindset)」について言語化していきたいと思います。

1.「マインドセット」とは


「マインドセット」とは、人が行動を決める「考え方」や「ものの見方」のことを言います。これを教師に当てはめると、

「授業観」(授業でどんなことを大切にしているか)
「指導観」(どんな児童生徒を育てたいか)
「児童生徒観」(子どもの実態や学習状況、興味関心など)

に当たると考えます。

マインドセットは、大きく2種類に分けられるようです。
「固定マインドセット」(Fixed Mindset)「成長マインドセット」(Growth Mindset)です。以下のwebsiteで分かりやすく解説されているので、気になった方はぜひご一読ください。

今回は、「教育評価」を行う際のマインドセットについて取り上げます。というのも、昨日行われた研修会でとても貴重な学びを頂いたからです。
以前のnoteでお伝えした研修会です↓

京都大学特任教授の田中容子先生をお招きして行った本研修会は、ハイフレックス形式で開催し、60人を超える先生が申し込んでくださりました。

2024/02/23 関西英語授業研究会Harvest京都支部研修会@下京いきいき市民活動センター

2.「教育評価」は何のため?


田中容子先生のご講演の題名は「生徒たちが元気になる授業と評価」。つまり、「評価」とは子どもたちに自信をつけ、「もっと上手くやってみたい」「もっとできるようになりたい」という前向きな気持ち(向上心、自己肯定感)を引き出すためのアプローチだということです。

さらに、田中容子先生は「教育評価」についてこうおっしゃっています。

「教育評価」は、教える者と学習する側の両方がより良い方向へ発達していくことを目的になされるものです。

つまり、「評価」をするプロセスで、教師が自分自身の授業(指導)を振り返り、自分が改善すべき点や、これから必要になる学習や指導などを明確にするためでもあるということです。

3.「ルーブリック」が形骸化していないか?


田中容子先生は、「Can-Doリスト」という概念があまり認知されていなかった2006年から、目標に準拠した指標として「ルーブリック」を学校現場に採用されました。これは、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)という、ヨーロッパへ移住してきた移民の方々の外国語運用能力を測る指標として使われていたものを参考にして作られたものでした。今でこそCEFRは英語検定やGTECなどでも共通の指標として示されるようになりましたが、当時は「学びの質」(どんな力をつけるか)ではなく、wpmやアウトプットの語数などの「数値目標」をもとに作られたものが多かったそうです。

引用:『新時代の高校生を育てる高校教育サイト キミのミライ発見』

恵まれたことに、私は2012年から5年間、田中容子先生と同じ職場で「ルーブリック」「パフォーマンス評価」について研究をさせていただきました。その中で、「ルーブリック」を設定するだけでは子どもたちの資質・能力を育てることはできないことを痛感しました。「ルーブリック」を設定し、子どもたちに示した後、「あること」をすることが重要だったのです。

それは、「子どもたちがルーブリックの表を見て、自分の到達度を把握する場面を意図的に作ること」でした。例えば、単元末課題に「スピーチ」を設定したとします。単元の序盤では、「今日は5段階のうち、“3”のレベルに到達できるように頑張ってみよう」と声かけをします。授業の最後には、到達度を確かめるために、ペアやグループで発表し、相互評価をする機会を設けるようにします。または、タブレット端末で録画した自分のスピーチを見て、客観的に自己評価することも可能でしょう。

つまり、単元を通して、子どもたちが常に「ルーブリック」の到達目標を意識できるように働きかけをすることが大事だと言うことです。これは私の失敗談なのですが、単元の最後にいきなりルーブリックを示してしまったことがあります。これでは、子どもたちは見通しを持って、安心して学ぶことができません。

「ルーブリック」は指導者が意識するだけでは不十分です。子どもたち自身が意識できるような授業を作ることで初めて機能し、子どもたちの自律学習を促す効果が期待できると考えています。

4.「できた!」を引き出す「責任」がある


ルーブリックは、「全員をこのレベルまで到達させるように授業をするという教師の覚悟」。田中容子先生がそうおっしゃるのを聞いて、首がもげるくらい何度もうなづいてしまいました。

子どもたちは、誰しも「できるようになりたい」という純粋な気持ちを持っています。ただ、どうすればできるようになるか分からずに困っているケースが多いように思います。では、どこでつまづいているのでしょうか。そこを診断するのが教師の役割であり、責任なのだと思います。

例えば、英作文がなかなか書けない生徒がいたとします。

① 書きたい内容はあるが、どう表現したらいいか分からない。
② 書きたい内容が整理できない。
③ どの語順で英単語を繋げればよいか分からない。

など、生徒のつまづきは様々です。

の場合、友だちと意見を交流で「そうすればいいのか!」と気づきを促すことができます。②の場合は、マンダラートやセマンティック・マッピングなどの思考ツールを使う指導が考えられます。そして③の場合、英語特有の文構造(SVOなど)を意識して表現したり、音読したりする活動を仕組むことができます。アウトプットの際は、③でつまづく生徒が多いように思います。英語はいちいち「主語」を述べる言語です。英語の授業では、「主語から始める」ことを普段から意識させることが大事になってきますね。

パフォーマンス課題の際は、英語教師のフィードバックをルーブリックと共に返すことが大事です。「ここができるようになったね」「ここができると5になるよ」と、具体的にコメントをする(形成的評価)が、子どもたちのモチベーションアップにつながるからです。時間はかかりますが、学期に1度は、そんなふうに丁寧にフィードバックする機会を持ちたいところです。

5.おわりに


評価は、子どもたちを「格付け」するためのものではありません。
子どもたちが、英語学習にさらに前向きになれるような「励まし」のメッセージが込められているものであるべきではないでしょうか。

もちろん、それは「甘く評価をつける」と言うことではありません。
甘くつけたところで、きっと子どもたちは「嬉しい」とは思わないはずです。人は、頑張ってできるようになったからこそ、「達成感」や「成就感」を抱くことができるからです。頑張ったことを褒めてもらえた時には、じんわりと心が温かくなります。

英語教育は、子どもたちを元気にする可能性に満ち溢れています。
「教育評価」を見つめ直し、子どもたちを元気にする英語の授業をする。
そんなことを考えていると、週明け、子どもたちに会うのがなんだか楽しみになってきました☺️

「必要なのは、勇気ではなく、覚悟。
 決めてしまえば、全ては動き始める」
 ー高橋 歩(作家・写真家、1972~)


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