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32歳OL、一人飲みデビュー戦で撃沈

今日は待ちに待った有休。
気になっていた最寄り駅のワインバーへ繰り出そうと決めている。
ワインの種類が豊富で、料理がなんでも美味しいそう。

最近突然ワインに目覚めたにわか者の私だが、今日は舌を肥えさせるため、自分のためだけに有休を使って飲みに行く。ハァ~~大人って感じ。

おめかしをしていざ、出陣ッ…!!!

「CLOSED」


・・・エ?
やっていない…だと?
目当ての店を横目に見つつ、シュバッと路地に入って電話をかける。
優雅にワインを嗜むどころか、下っぱ刑事みたいな挙動をしてしまった。

「はい、ワインバー○○です」
「あの、これからそちらに伺いたいんですが開いてらっしゃいますでしょうか…?(超絶低姿勢ビジネストーン)」
「やってますよ~」

強風によりOPEN/CLOSEDの札がめくれてただけでした。
私の初陣をどうか翻弄しないでいただきたい。

無事入店を済ませ、マスターの目の前にあるカウンターを陣取った。
一人飲み客の特等席である。

一人きりの時間

特等席を陣取ったもののメニューを凝視しながら5分ほど硬直。「ドリンクはどうされますか」というマスターの声かけでやっとオーダーできた。既に大人の余裕など皆無。32歳にもなってこんなにもテイカー気質だったとは、なんという恥さらし。

「アンマリお腹スイテナクテェ~、エヘヘ」とニヤニヤする不審な一見客にも、マスターは優しく前菜の盛り合わせを提供してくれた。
キャロットラペをつまみながらワインを流し込む。やっと緊張がほぐれてきたぞ。
しかし相変わらず自然な会話を発することはできず、目の前のシンクを見つめながらラペを咀嚼した。


常連客風の男性が入店


そんな異様な雰囲気を切り裂くように、男性が一人入店した。

彼はカウンターに座るや否や「今日は~オレンジワインもらおっかな、あとコレとコレ(おつまみを指さす)」と自然にオーダー。
ははぁあ。これが常連客か。完敗完敗。乾杯したいよあんたに。

心なしかマスターもこなれた手つきでオレンジワインをサーブし、男性の一人飲みタイムがスタートした。

オレンジワイン飲んでみたい


意外と喋らない。
あ、こんなんでいいのね。

男性が増えたことによって【それぞれの世界】で過ごしている感が生まれ、なぜか沈黙も心地よく思えるようになってきた。


インフルエンサー風の女性が入店


また入口ドアの鈴が鳴る。シックな店内に突如現れたショッキングピンク。
いかにもジム帰りというジャージ姿の女性が入店した。
メイクはバチバチで金髪ロングをポニーテールにしている。レディディオールとかトイプードルを携えていそうな風貌だ(偏見)


本当にこんなピンクだった


この女性の入店がまた空気を変えた。彼女、めちゃくちゃ喋るのである。
「私ここ初めてで~!ワインとか全然わからなくておすすめありますか?」
「え~!美味しい~!!どうやって作ってるんですかこれ~!!」

なんと素直な感情表現だろう。寡黙だと思っていたマスターも次第に口数が増え、表情も心なしかほころんでいた。

私も彼女が来るまでに「これ美味しいです」とかは口に出していたのだが、それじゃあ「ありがとうございます」しか言えないよなぁ~~ナルホド。

一方、常連の男性客は空気のようにワインを嗜んでいる。

私はというと二人の会話に小さく相槌を打ちつつ酒を飲み続け、静かなる泥酔客へと変貌を遂げていった。



それぞれの一人飲みを見て

居酒屋やバーで一人飲みをしている人を見たことはあったが、どんな楽しみ方をしているかまで知らなかった。
一人飲みの楽しみ方は人それぞれであり、心地よいと感じる雰囲気もバラバラなのだと学ぶことができた。


「どんな風に飲みたいか」が定まらないまま店へ繰り出してしまい、中途半端な客になってしまったことが今回の反省点だ。マスターも扱いに困っただろう。

喋りたいなら喋ればいい。お酒と向き合いたいなら静かに飲めばいい。
それだけのことで、一人飲みにルールなんてないのだ。

思い返すと「人間と話したくて街に降りてきてオドオドしている悲しきモンスター」みたいになっていたような気がしないでもないが、初陣で撃沈したのもいい思い出になることを願う。


料理もワインも美味しくてとても良いお店だったので、また行こう。
私の一人飲み奮闘記はまだ続きそうだ。

次の日はもちろん二日酔いだった。

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