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俺俺系女児と過ごした日々は温かさで溢れていた

前回こんな記事を書いた。
そこで当時の担任が小娘を信じてくれたおかげもあり、改心したお話である。

当時小娘のクラスにはちょっと変わった女の子がいた。その子は、容姿のせいなのか、性格のせいなのか、友達が少なかった。担任の先生はその子と仲良くしてみたらと声をかけてくださったのである。

小娘はというと、一定の友達(いつメン)はいなかった。自分に自信があったのか何なのかわからないが、広く浅い交友関係が主で、何なら学年を越えたお友達もたくさんいる程だった。クラスの子全員とお喋りするし、話したことのない子はいなかった気がする。いわゆる遊牧民系女児である。

先生と約束した「相手に思いやりを持って行動する」というのを貫くために、まずはこの子と仲良くなろうと心に決めた。

アツコ(仮名)

一人称が「俺」の女児。身体つきは大きいが、運動はどちらかといえば不得意な部類。人とのコミュニケーションは良好ではない。いつメンと呼ばれる友達は周りにいない。明らかに浮いていることに漬け込まれ、揶揄われたり、嫌がらせをされたりしていた。

周りの変化と小娘の変化

アツコと一緒につるむようになり、色々な変化が出てきた。まず周りがアツコに構わなくなった。小娘が周りに何か言ったことは一度もないが、アツコが小娘といることにより、誰も茶々を入れなくなった。

そしてアツコを嫌煙していた子たちも、アツコと話すようになった。アツコが嬉しそうに他の友達と話すようになり、小娘自身もとても嬉しかったが、反面少し複雑な気持ちもあった。アツコは私とではなく、他の友達と一緒にいるようになるかもしれない。という嫉妬のような感情だった。

初めてだった。

今まで遊牧民のようにその日その時で、お話ししたりする友達は異なったし、深く誰かとずっと一緒にいることはしてこなかった小娘にとって、この感情は初めてだった。

アツコは日に日に友達が増え、引っぱりだこになった。嬉しさと寂しさが入り混じっていたが、アツコもきっとそんな小娘の感情に気づいていたのか、それとも純粋に小娘を一番の友達と思ってくれていたのか。ここぞ!という時は、必ず小娘とペアや一緒のグループになってくれたのである。

痛みが分かる者は他人に優しくできる

アツコは揶揄いを受けていたと述べたが、彼女の素晴らしいところは人気者になった後も、復讐を目論んだりしなかったという点である。

どんなに過去に揶揄われたりしても、「あの時あんなことを私にしたよね?」という態度は、一度たりとも見せなかった。

ある日、
A子ちゃんとB子ちゃんの間でトラブルが起きた。よくある仲違いのようなものだ。何があったのかは、小娘にもアツコにもわからなかったのだが、ある一部始終だけ目に焼き付いていた。下校しようと下駄箱に向かうと、A子ちゃんがB子ちゃんのランドセルを怒りに任せて踏みつけていたのだ。そこにB子ちゃんの姿はなく、私たちはとんでもない光景に立ち尽くし、声をかけられずに静かに見ていることしかできなかった。

するとA子ちゃんは気が済んだのか、そのままその場を去ってしまった。上履きの足跡が綺麗なランドセルの赤色の上に何個も付いている。見ていて心が痛めつけられる思いだった。ポツンと残ったランドセルの側に行き、俯きながら腰を下ろし、それを抱きかかえたのは、アツコだった。彼女は無言で、B子ちゃんのランドセルについた上履きの跡を手でパンパンと叩きながら、汚れをとっていた。

私は何もできずにそれをただただ見つめることしか出来なかった。突然のことで頭も働かない、身体も動かなかった小娘と対照的に、アツコは直様行動に移したのだった。そして何もなかったかのようにそのランドセルをそっと置いて、「帰ろう」と小娘に言った。

究極の作文

卒業間近に1年間の思い出を文章にする時間があった。小娘は当たり障りのないような、今まで努力してきたことや、そこから学んだこと、親への感謝を文章にした。(気がする、あまり覚えていない)

その授業が終わった後、担任が小娘に声をかけてくれた。

「小娘さん、この前の1年間の思い出の文章、とてもよく書けていましたよ。実は、小娘さんに読んで欲しいものがあるの。アツコさんの文章。後で全員の文章をクラスには掲示しようと思うけど、今読んでくれるかしら。」

と、クラス全員の文章の中から、アツコの原稿用紙をそっと取り出し、小娘の見える位置に置いてくれた。

そこには私との思い出が細かく書かれていた。
毎日一緒に帰ったこと。肩を組んで腹を抱えて笑ったこと。言い合いをしたこと。でも最終的には仲直りして、やっぱり一緒に帰ったこと。

そして最後にこう書かれていた。

「小娘、だ〜いすき。小娘、友達になってくれてありがとう。小娘は俺にとって、一番の友達だ。」

アツコの文章を読み終わると、とても嬉しくて、顔に自然と笑みが溢れて、温かい気持ちになった。私もアツコと友達になれて本当に良かった。本当の友達を見つけることができた、そしてアツコも私を一番の友達だと思ってくれていたことを知り、この上ない喜びを感じた。

今もこの文章を打ちながら、涙が出そうだ。(心の声が…すみません)

先生は特に小娘に声をかけずに、
「それだけよ。読んでくれてありがとう。」とだけ言い残して去ったのだった。

いつメンのいない深入りできない遊牧民系女児の小娘と、同じくいつメンのいない一風変わった俺俺系女児アツコは、今考えると、なんとなく境遇も似ていて、最高のケミストリーだったのではないかと思うのである。

そう仕向けてくれた担任の先生にも感謝である。こうして小娘の小学校生活は幕を閉じたのであった。


写真は石垣島のマーペー山からの景色⛰
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