見出し画像

鏑木清方 《築地明石町》と竹内栖鳳 《班猫》

2022年の『没後50年 鏑木清方展』に行ったのは偶然で、その前に東京国立近代美術館で開催していた『民藝の100年』を観に行き次回展覧会として案内されていたのがきっかけ。

鏑木清方どころか日本画の展覧会自体が初めてだったわけですが《築地明石町》を観て恥ずかしながら強烈な衝撃を受けました。

こんなに美しい日本画があるのだなと。

左右に展示されてる《新富町》《浜町河岸》も素晴らしいのですが、あくまでも《築地明石町》をもり立てる為にあるような、そこだけ燦然と律している。

釘付けになって見惚れました。

ご存知の方も多いと思いますが《築地明石町》のモデルである江木ませ子氏。実在する方です。

彼女のモテエピソードを、お孫さんの安藤萬喜さんが想い出として語られてます。

当時、御茶ノ水女学校の出身で大変な美女ということで男子学生の間では評判であったらしい。

〜若い未亡人の祖母には、祖父亡き後、かなりの崇拝者がいた、と父から聞いたことがある。上野の国立博物館の前庭で出征した父のために四つ葉のクローバーを摘む姿を見て恋文を書いたかたの話しなど色々あったようだが再婚することはなかった。

いずれも「現代の眼」633号 おばあ様のこと より

展覧会の後半パートには好々爺の清方本人の写真や年表もあり、93歳までの長寿だったと。

絵を描くのが好きで、好きな事を続けることで長生きできたのかなーとも考えてしまいました。(作品とは関係ないですが…)

その後、日本画に俄然関心が向いて山種美術館の『没後80周年 竹内栖鳳』にも行き、そこで《班猫》を観てまた衝撃を受ける訳です。

《班猫》 竹内栖鳳

この《班猫》もほんとに美しい。なんて綺麗で魅力的なんだろうと。

エメラルドグリーンの瞳には吸い込まれそうだし、ふわふわ感満載の背中からしっぽ。

リアルで近くで観れば観るほど凄さが増すんです。どうやればこんなに美しい画を描くことができるのだろうと。

そして2023年の『重要文化財の秘密』@東京国立近代美術館で再度《築地明石町》が観られることに。

《築地明石町》は2022年11月に重要文化財に指定されたばかり。

2019年に東京国立近代美術館に納められてから、2023年の『重要文化財の秘密』までスケジューリングされていたのであればお見事です。

多数の重要文化財の中に展示されてるので前回よりも《築地明石町》の前の人だかりも少く、かなりゆっくり観とれておりました。

そこで、ふと思う訳です。
この作品が家にあったら誰にも渡したくないだろうなと。

44年もの長い間この作品を独り占めしていた元の持ち主も、たぶんそうだったのでは?と。(勝手な妄想です…)

『重要文化財の秘密』のカタログに《築地明石町》についてこうありました。

本作は1927年の帝展で帝国美術院賞をとってますが美人画に対しての批判もあったようです。

そんななか、本作を帝国美術院賞授与に強く推したのは竹内栖鳳だったと。

あの香気高い(中略)一種の都会情景が多分の品調を以て描き出されてゐるところに無限の味い、魅力を感じます

「独特の芸術境 清方氏の事」『美之國』3巻9号1927年11月

《築地明石町》《新富町》《浜町河岸》が三点揃って東京国立近代美術館に収蔵されることに対して鏑木清方の孫である根本章雄さんが寄せたコメントが全ての人の思いを代弁してます。

東京人清方の代表作の収蔵場所としてこれ以上望むべきところはございません。
全く持ってその名の通り“箱入り娘”であった《築地明石町》は素晴らしい“嫁ぎ先”へ収まり最高の“結婚”となった感がございます。

「現代の眼」633号 《築地明石町》との再開の悦び より

《築地明石町》《班猫》とも次回またリアルで観られるの心待ちにしております。たいぶ先かなー。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?