マガジンのカバー画像

ビクトル・エリセの映画たち

4
運営しているクリエイター

2024年2月の記事一覧

天使のようなあなたへ―ビクトル・エリセ『瞳をとじて』

天使のようなあなたへ―ビクトル・エリセ『瞳をとじて』

               

Ⅰ テオ・アンゲロプロスに倣いて 親愛なるエリセ
 待ちに待ったあなたの新作、拝見しました。あなたがこんなにもテオ・アンゲロプロスを愛しておられたなんて!

 撮影中に俳優が失踪し、後にテレビ番組の企画で追跡するという筋書きは、アンゲロプロスの『こうのとり、たちずさんで』(1991)を想起させます。『こうのとり』では、政治家が突然、失踪し、後にテレビの企画で彼を追

もっとみる
親愛なるビクトル・エリセ―ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』

親愛なるビクトル・エリセ―ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』


Ⅰ  『PERFECT DAYS』の謎 1月、ヴィム・ヴェンダースの『PERFECT DAYS』を観たとき、不思議に思ったことがある。

 主人公の平山(役所広司)は、毎日、仕事の休憩時に神社に行って、お気に入りの木を見る。そして、フィルムカメラで木漏れ日をモノクロ写真におさめる。お気に入りの木の若芽をもらってきて、鉢に植えて育てたりもする。平山にだけ見えるホームレス(田中泯)は、木の枝をしょっ

もっとみる
10分間の奇跡―ビクトル・エリセ『ライフライン』

10分間の奇跡―ビクトル・エリセ『ライフライン』


はじめに わずか10分の映画で、奇跡を描いている、といわれたら、みなさんはどう思われるだろうか? そんなの無理でしょ、と思う方が大半だろう。
 しかし、それを実現してしまったのが、ビクトル・エリセの『ライフライン』である。オムニバス映画『10ミニッツ・オールダー』(2002)に収められており、1940年6月30日生まれのエリセの自伝的要素が強い、白黒映画となっている。

※ニコニコ動画で観られま

もっとみる