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前髪と春風と

前髪を短く切りすぎて失敗してしまった朝。
女子高生にとって前髪は生命なのにと、
たっぷり自己嫌悪に落ち、
憂鬱のまま登校している。

そんな私の短い前髪を春風が優しく揺らした。
目の前を桃色の花びらが1枚ゆっくり舞い落ちる。

——桜?桜がこの辺……?

普段から見慣れているはずの通学路。
山を切り開かれた道の山側には、
迫り出す木々に隠れるように、
小さな桜の木が7分咲きとなっていた。

なぜ今まで気がつかなかったのだろう?

……あぁ。
本当は周りなんてよく見てなかったんだ。
今日だって短く切りすぎた前髪ばかりが気になっていたのだから。

温かい春風は、穏やかで優しい。
自分の事ばかりに必死になっていた私や
寒い冬を1人で過ごしたモノ達に思い出させる。

草木を芽吹かせ、春の色で世界を染め上げ
沢山の生命の存在を。

さっきまであんなに気にしていた前髪が
嘘のように気にならなくなっていた……。


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