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聞こえるように聞こえている
かつて僕には一人の友人がいた。
名前はそうだな、仮にA君とでもしよう。
小学生の頃、A君といつからか同じクラスになり気が合ったのか友人になった。病気がちだった彼は頻繁に学校を休んでいた。そんなA君にその日のプリントや宿題を届けることが僕の日課だった。言われたことは断れない僕は面倒臭い気持ちと闘いながらも日課をこなしていた。いつか電話で言付けをしたときに後ろから彼の母親からいつもありがとうと言いなさいと言われたA君が僕にありがとうと言ってくれたことを覚えている。
中学に入り僕は剣道部に入り、A君も同じ部活に入った。運動をしたことが良かったのか、彼が学校を頻繁に休むことは無くなった。A君は頭が良く僕とは違い学年でもトップに近い成績だった。とはいえ運動はそれほど得意でも無く僕と同じように補欠に甘んじていた。部活は厳しかったが(時代もあり顧問が手を上げることもあった)それでもなお連帯感というのは不思議なもので理不尽に向かい合うとどこか団結するのだった。顧問の悪口を言い部活の厳しさを嘆いた。その頃休みの日にはお互いの家に行って遊ぶことも多かった。だが彼には同じような成績の友人が徐々に増えて、僕は学校の勉強にはついていけなかったので、うっすらズレを感じていた。
当然トップの成績のA君は順調に県下でも有名な進学校へ進み、僕は平凡な公立高校に進む。毎日会うことは無くなり、大きな連休にごくたまに映画を見に行ったり、ゲームをしたり、一年に数回程度会うくらいの仲になってしまった。同級生とも一緒に会っていたが他の数人とは頻繁に会っているようで僕はどこか疎外感を感じていた。
大学進学後、久しぶりにどうしているのかと思っているとA君が連絡をくれた。今度みんなで会うから遊ぼうと言われ僕も行った。何をしたかなあ。覚えていないけど、色々話をしたような気がする。次の日もたまたま休みだったので明日も暇? 遊ぼうよと彼に持ちかけた。
A君はその場に一緒にいた同級生に言った。
「亮君と2人とか何話していいかわからないから、お前らも来てよ」
家に帰った後僕はA君にメールを送った。
『帰ってから調子が悪くなったので明日の約束無しにしてください。今から寝るので返信はいらないです』
A君から未だに返信は、来ていない。
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