キタダ授業記録集 7 短歌に親しむ
いま、中2の授業で短歌をやっています。
「選歌」を楽しみながら学ぶ活動から短歌の世界に分け入っていく、という流れで展開しています。そのなかで、生徒の「読み」がおもしろくてはっとさせられたり、こちらの問いをきっかけに生徒がその歌の世界を「ゆたかに」そして「たしかに」読みとっていけた…そんな一コマ一コマを書き留めていきたいと思います。
①「生まれ出でて命短しみづうみの水にうつろふ蛍の光」
島木赤彦の歌です。「短い命」の主体は蛍。おそらくそう読む人が多いのではないかと思います。わたしもそうです。しかしある生徒が、こう読んできました。
「命を水にうつる蛍の光とたとえているところがいい。いつも自然を見ているからこんなにすごい比喩ができるのだなと思った」
生徒自身はすなおに、直感的にそう読んだのだと思います。
しかし、なかなかに深いものに気づかされる読みです。
うーん、なるほど。と唸りました。
生まれ出でて命短し\
ここまでで切れているため、第3句以降を初句・第2句の比喩ととる読みは、たしかに可能だと気づかされました。そう読む方が、歌の味わいがたしかに増すなあと。繰り返し読んでいると、「湖の水面にうつろう蛍の光をみつめているうちに、蛍のはかない命と同じように、わたしたち人間の命もはかないのだという思いがわいてくるのです」…そんなふうに読めてきます。そして、まさにそれこそがこの歌の本意だろうという気がします。
散文の構造と違って、短歌の言葉は輪舞のように冒頭へ戻ってくる性質をもっていますので、くりかえしくりかえし読むことで、より歌の本意に近づくことができる。そういう、歌そのもののもつ性質にも、生徒の感想のおかげであらためて気づかされたのでした。
短歌の味わいに生徒たちが親しむ時間にしたいと思っています。
つづきはまた後日。