見出し画像

第5話 通り魔

新年に入り、毎年のようにテレビでは「おめでとうございます」と
繰り返していた。

普段なら気にも留めないが、清乃との仲も変わり、今年は両親に向かって
「おめでとう」と言った。

二人とも苦笑しながら怪訝《けげん》な顔で「おめでとう」と言い返した。

海斗は清乃の家に向かって、向かい風を感じながら自転車を疾駆させた。
清乃の家についた海斗は、彼女の家のチャイムを鳴らした。

何やら慌てているように玄関が開いた。
「はい! 今着きました。はい、はい。伝えておきます」
会話の内容から自分の話をしているようだった。

「今ね。海斗君のお母さんから連絡が来て、この辺りで通り魔が出たらしいのよ」
「通り魔ですか?」
「海斗君に電話したけど、繋がらないから心配して電話してきたのよ」
「すいませんでした。全然気づかなくて……」
「無事ならいいのよ。清乃が待ってるから上がってね」
「お邪魔します」

彼は二階の彼女の部屋に入って行った。
「どうしたの? 何かお母さんと話してたみたいだけど、何かあったの?」
「この近辺で通り魔が出たらしい」
「ほんとに!? 海斗が無事で良かったけど、怪我人とか出たのかな?」

彼女はすぐにPCで調べ出した。調べていくうちに、
清乃の顔つきが青ざめてこわばっていった。

「夜中にコンビニ前にいた高校生3名が、
刃物で斬りつけられて死亡したって書いてあるよ」

「うちの学校?!」
「どこの高校かは書いてないけど、この近辺ならうちじゃないかな?」

「コンビニの店員さんが、すぐに警察に電話をしたけど、無人だったみたい」
どことなく心配そうな清乃の顔つきに気づいた。
「明日からは犯人が捕まるまで、俺が清乃を迎えに来るから心配ないよ」
「私は海斗が心配なの!」

海斗は彼女の言葉で、背中に残った激しい傷が疼《うず》きを見せた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?