【超短編小説】 桜でジャンプ
「ウチらの記念。桜の前でジャンプしよう!」
桜が舞い散る4月、入学式のあの日。
同じ中学に入ったミナと校門にある桜の木の前で写真を撮った。
写真はひどくブレていたが、そこには笑顔の二人が映っていた。
3年後、卒業式。
私は、桜の木の前にいた。
ミナは生徒会長になり、クラスも2年生まで一緒だったが、なんとなく遠い存在になった。
校門の前で桜を眺めていると、ミナがこっちにやって来た。
私は「ミナ」と声をかける。
「どうしたん、こんなとこで」
「ミナ、覚えてる?入学式の日、この桜の木の前でジャンプしたこと」
「覚えてるよ。ここで写真撮ったね」
「もう一度、撮ろうよ。記念にさ」
そう言うと、ミナは携帯を持って向こうに行ってしまった。
やっぱり駄目だったか。最近、全然話してなかったもんな。
そう思っていたが、再びミナはこちらに戻って来た。
「撮ってくれるって」
振り返ると、ミナのお母さんが携帯をこちらに向けていた。
「せーの」
私達は思いっきりジャンプした。
その日見た桜は3年前より綺麗に見えた。(完)