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【書評】『発達障害でつまずく人、うまくいく人』


【基本情報】

  • 著者:備瀬哲弘

  • 出版年:2011年6月25日初版発行/2013年2月10日3版発行

  • 出版社:株式会社ワニブックス(ワニブックス【PLUS】新書)

  • ページ数:全211ページ

【読書のきっかけ】

私は元々幼少期に
「アスペルガー症候群」と診断され

現在も発達障害の特性から
色々躓いていて迷走気味です。

最近になって

発達障害について自己理解を深めていきたい
色々発達障害に関する書籍を読み

またTwitterでも発達障害について発信するなど
発達障害に関する勉強を始めました。

本書との出会いは
発達障害について学び始めた頃

「発達障害について
分かりやすく解説している書籍はないか」と
探している最中に出会いました。

【気づいたこと・感じたこと】

①なぜ発達障害を診断してほしい大人が増えているのか

著者の備瀬哲弘先生は
精神科医やメンタル産業医として
精神疾患を抱えている方々のサポートを行う中

様々な発達障害の特性を抱える人達と
出会ったのが、執筆のきっかけだったそう。

「人の話を聞かない」
「周りの人とズレた行動や言動が目立つ」…

発達障害の人は行動特性のため
周囲から浮いてしまい
不適応を起こしてしまいます。

最近ではネットや書籍でも
「大人向けの発達障害」に
ついての解説書が多数出ているので

事前にネットで発達障害の特性を調べたり
本を読んだりして

「自分は発達障害では?」
診察に訪れる人が増えています。

発達障害の診察に訪れる方も

・診察が発達障害に該当してほしい
(周囲への配慮を期待している)
・診察が発達障害に該当しない事を求めている
(周囲から浮いている自覚はあるものの
自分で認識する事に抵抗がある)
・自分の特性を知り、自己理解を深めたい

と様々な目的を持っています。

しかし日本では

発達障害という概念が
一般にも認知されてきたのが遅く

大人向けの発達障害の診断を行える診療所や
専門の医師が少ない
のが現状。

また、他に
発達障害の特性を持つ社員に対する配慮が
まだ十分ではない職場も多い
です。

私も以前ネットで

成人向けの発達障害を診察してもらえる
クリニックや病院はないか
検索をかけたことがありました。

最近では成人向けに発達障害を診察する
クリニックや病院は増えつつありますが

予約が埋まっていて
初診は2ヶ月先だったり

診察する医師が少ないため
初診の方は一旦お断りしているところが多いな
と感じました。

②発達障害の特性

発達障害の診察には

イギリスの精神科医ローナ・ウィングが
提唱した「三つ組の障害」
診断基準になっています。

【三つ組の障害】
・社会性の障害
・コミュニーケーションの障害
・想像力のズレによる反復やこだわり

本書の中で

「社会性の欠如やコミュニケーションのズレといった行動の特性は誰にでも当てはまる」
とあります。

しかし発達障害の場合

上記に挙げた「三つ組の障害」が
社会生活に支障が出ているかというのが
特に重要な問題になってきます。

③様々な偏りから生じる困り事

発達障害は特性から
行動面や受け取り方に「偏り」が生じ
それが生きづらさの原因に繋がっています。

発達障害さんは
否定的な言葉を浴びせられたり
態度をとられたりなど

ネガティブな評価ばかり受けてきた
という方が多いです。

その影響から周囲に不信感を募らせ
対人関係に敏感になる方が多い
です。

他に
「自分はポンコツな人間だ」と
自分を卑下してしまったり

「みんなが私をバカにしている」と
知的な面で自己防衛したりする
傾向が
出てきます。

私自身も子どもの頃から、発達障害の特性ゆえ
色々失言やミスを重ねてきました。

それが原因で
親から否定的な発言を浴びせられたり
周囲から陰口を叩かれたりと

ネガティブな評価が多かったです。

ネガティブな評価は
自己肯定感の低さに繋がります。

そして、発達障害者は
「自己評価が低い」という方が
とても多いのです。

自分を認められず、卑下したままだと

・他者と上手に付き合う
・適切なコミュニケーションを取る

事ができなくなるデメリットがあります。

そこで周囲の理解を得るのももちろん

自身でも発達障害であることを認識して
自己理解を深めて対処法を見つけていくことが
大切
になってきます。

④発達障害とうまく付き合っていくには

発達障害の特性から生じるトラブルを
ほとんど起こさない人は

  • 自身が発達障害の特性を認識している

  • 会話や行動をマニュアル化する

など自身で色々工夫して
対処している方が多いです。
(もちろん周囲の理解も大きいです)

職場や日常生活面において

  • 人間関係のルールを知る

  • 感情をコントロールする方法を学ぶ

  • 身だしなみを整える

  • エチケットを守る

など工夫するポイントなどを
絞って実行していくことで

時間と共に混乱もなくなり
対処していけるようになります。

発達障害者を家族やパートナー、
職場の人間がサポートしていくには

  • 本人も特性で困っていることを理解する

  • 可能な範囲で手助けする

  • 指示するときは具体的な言葉で指示する

  • パートナー間でルールを作る

など、長い目で見て手助けしていき
フォローするなど本人が困っている時に
随所でサポートに回るのが大切です。

他に同じような立場の人とやり取りするなどもサポーターにとって、大きな力になります。

発達障害さんが社会で生きていくには

本人の努力や自己理解だけでなく
発達障害さんとパートナー、
お互いの相互理解も大切
になると感じました。

【まとめ】発達障害は、発達して変わる!

子どもの頃は、親や先生など
大人達のサポートもありますが

成人すると
自分でやらなくてはならないことも
増えてきます。

また、社会の一員となって
組織の中でやっていくことも求められます。

他者の評価はプラス面よりも
マイナス面に目がいってしまい

マイナス面が自身の評価を決定する面が
大きい
です。

そのため、色々つまずきやすい発達障害さんは
マイナス面での評価が多くなり
さらに傷ついて自信を喪失
してしまいます。

著者の備瀬先生は
成人の発達障害者の存在を
もっと世間に知ってもらいたいというほか

以下の願いも本書に込めています。

ただ、
実際につまずき転んでいる人がいたならば、
数多くの手が差し伸べられるような、
そして、その人が立ち上がり
うまく歩けるまで
複数の目で見守ってあげられるような、
そんな余裕のある社会であってほしいと
願います。
つまずきやすい人が、
たとえ何度転んだとしても、
その度に立ち上がり再びしっかりと、
そして安心して歩き出せる社会は、
きっと「うまくいく人」を
数多く生み出すこともできる、
そんな豊かな社会なのではないかと
私は思います。

『発達障害でつまずく人、うまくいく人』
p220〜p221より抜粋

発達障害とうまく付き合っていくには
本人の自己理解や努力のほか
周囲の理解も大きい
と感じます。

私自身も
現在も発達障害の特性から
色々つまずいています。

その中で、私は本書に出てきた
「発達障害は発達して変わる」
という言葉が好きです。

発達障害とうまく付き合っていく方法を
自分なりに見つけられたら
生きやすさに繋がります。

また、私自身も

誰かが傷ついていたら
その人に寄り添ってサポートできる人に
なりたい
です。

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