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「建築費が上がったからマンション価格は下がらない」は、間違った認識

Fact Stock

「建築費が上がっているから、この価格で売り出すしかないのです」
昨今、新規分譲マンションのモデルルームで接客をうけた方なら、一度は耳にしたフレーズではないだろうか。

少し前なら、十分手が届いたのに。

高騰するマンション価格に二の足を踏む人も多い。
「今後も下がらないなら、いま買うしかないか…」

でも、よく考えてみてください。

建築費の上昇はマンションの販売価格に「どこまで」影響しているのでしょうか?

ちなみに、建築費と物件価格の連動が有るか無いかでいえば、私の答えは「NO」です。

詳しく解説しましょう。


1.不動産価格がみるみる上昇


ここ数年、不動産価格が上昇しているのは御存知の通り。

なかでも分譲マンションの値上がりが著しいです。その背景には、金利が低いことや税制優遇(住宅ローン控除)が受けられる等で旺盛な投資や持家需要があること、また、それに対して新築供給戸数が少ないなど、さまざまな原因が重なり合っています。「建築コストの上昇」もその代表的な理由であることに間違いはありません。

しかし、コストアップが販売価格の設定に影響を与えてはいても、最終的な値付けの判断基準となるものは「周辺相場」に他なりません。

もし、売り出されているマンションの価格が、明らかにこれまでの相場よりも高い値段設定だとしたら、それは売主であるデベロッパーが「この価格でも売れる」と判断したからです。「高い」と感じるなら、それは「少し先の相場が上がるとデベ(売主)が見込んでいる、もしくは「多少高くても、今のマーケット(市況)なら売れるはずだ」という自信があるからです。

もし、マンション分譲の営業マンが「半年か1年後には、3%程度は上昇すると見込んでいます」と言ったら。ほとんどの人は、「はい、そうですか。わかりました」とはなりにくい。「相場より割高ですが、買いたい人がいるから売れると思っている」とも言えません。

万が一、そんなことを言ってしまえば、検討顧客は「じゃあ、上がらなかったらどうしてくれるの?」と聞き返すのでしょうし、みすみす「割高」なものを気持ち良く買おうという人はいないでしょう。

それよりも「原価が上がったのでどうしようもありません」といっておけば、「仕方ないか」と思ってくれる可能性が高いから、そう言っているだけなのです。


2.たとえ建築費が下がっても、売値は下がらない


たしかに、建築コストは上がっています。

デベロッパーの立場でみれば、ゼネコンに見積もりをお願いし、「出されてきた数字をみてびっくりした」という経験が、ここ数年続いています。

それくらい、建築費は上がり続けてきました。

しかし、繰り返すようですが、それでもデベロッパーがマンション開発事業を継続するのは、原価アップを補うだけの利益が取れているからです。つまり、不動産価格の値上がりが建築費や地価高騰を吸収できるほど、上昇をもたらしているからなのです。

もし仮に、建築費が下がったとしても、不動産価格相場が強含みに推移している以上、売値は下げないでしょう。100円で売れるものをわざわざ90円で売る企業はありません。しかも、上場企業であれば株主がいるため、事業や経営の判断で「市場相場を無視したプライシング」など簡単には実施できないはずです。

逆に、相場が下落に転じたらどうなるか。

在庫を捌くため、売主は原価度外視で売るしかありません。実際、「バブル崩壊」や「リーマンショック」後は、そのような状況に陥りました。

不動産価格が下がり続けば、市場の原理で建築コストも下がっていくことが考えられます。デベロッパーから新たな発注が取れなくなるからです。それでも建築コストが下がらなければ、供給する企業がいなくなり、新築住宅の供給は減るだけです。


3.結局のところ、不動産は「相場でしか売れない」


個人に置き換えれば、もっとわかりやすいです。

自分が5,000万円で買ったからといって、その買値が、売るときに関係するかどうか。買った時の値段は買う方にとっては、(多少の興味はあるかもしれないが)買うか否かの判断にはほぼ影響しないです。価格妥当性は、「そのときの(周辺の)市場相場」だけが参考になります

例えば「10年住んだから、その分安くしてもいいのでは」という考えもあるでしょう。でも、不動産相場が2割上がっていれば、「10年も住んだのに、6,000万円」で売り出しませんか?逆に不動産が暴落して5割下落したら、「10年しか住んでいないのに、2500万円」で売り出すしかありません。

結局のところ、不動産は「相場でしか売れない」のです。

新築マンションのモデルルームに行って、もし、5000万円の相場なのに、「建築費が上がったから、5200万円でしか売れません」といわれたら、「目先の相場は、4%上がるとみているわけだな」と解釈して良いです。

ただし、その「目先とは」は1,2年程度のことであって、5年先や10年先のことを指しているわけではありません。あなたが何年住むつもりかわかりませんが、シンプルに考えるなら「200万円割高だけど、どうする?」と自問自答するのが良いでしょう。


4.ストック重視は歴史が浅い


住宅市場を俯瞰してみれば、日本の住宅は質が高いとは言えませんでした。極端な言い方をすれば「作っては壊す」スクラップ&ビルドを繰り返す文化だったといえるでしょう。

国土交通省の施策でいえば、2000年施行の「住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称「品確法」)」から「量から質(ストック)へ」と国の方針転換がなされました。だから、「良質な住宅を長く使う」歴史は、まだ20年程度しかありません。

長期優良住宅法が制定されたのは2008年です。これは「200年住宅」というスローガンが掲げられていました。

同法制定の元年に建った家でも「まだ築13年」です。

近年の脱炭素の流れから、省エネ性能の高い住宅が今後ますます求められます。「質の向上」が進み、その分コストアップされることも十分考えられます。

建築コストの変動も気になるところではありますが、本質的には「質が見合っているか」の見極めが何より大事です。本当に長く快適に住める家なら、多少のコストアップも回収できるだけの費用対効果が望めるはずです。

人生最大の買い物ですから、耐震性や断熱性、維持管理・更新など基本的な住宅の性能は事前に学んでおいてください。

質が低く、建築費上昇に便乗しているだけの企業や現場(物件)がもしあるなら、それは要注意です。

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