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『異なるアプローチ、結局は同じ結末説』③フリーウエイトとマシンの違い

筋トレの世界は、数多くのアプローチが存在しますが、最終的には同じような結果が得られる。
それが「異なるアプローチ、結局は同じ結末説」です。

このシリーズでは、博士号(体育科学)を持つ科学者で、パーソナルトレーナーでもある筆者が論文をもとに、様々なトレーニング方法の効果を探っていきます。
また、このシリーズでは、最低限の科学性を保ちながら、時には若干飛躍的な主張も交えつつ、読者がトレーニングを続ける意欲を高めるためのエビデンスを提供します。
筋トレ愛好家や初心者の方々にとって、本シリーズが新たな視点を提供し、トレーニングをより楽しく効果的にする手助けとなれば幸いです。

過去のシリーズ

3回目となる今回触れる論文はこちらです。

Schwanbeck, S. R., Cornish, S. M., Barss, T., & Chilibeck, P. D. (2020). Effects of Training With Free Weights Versus Machines on Muscle Mass, Strength, Free Testosterone, and Free Cortisol Levels. Journal of strength and conditioning research, 34(7), 1851–1859. https://doi.org/10.1519/JSC.0000000000003349

2回目に触れた論文と同様に、フリーウエイトとマシンの違いに着目しています。
ただし、2回目と異なり、実験開始時点で筋トレを実施していた人たちを対象とした研究です。

平均2年以上の筋トレ経験を持つ男女(年齢:18-30歳)はランダムに次の2つのグループに分けられました。
・フリーウエイト群
・マシン群

トレーニング実験の概要は次のとおりです。
期間は8週間、
頻度は2日実施-1日休息の繰り返し(2日実施のうち1日目は胸、背中、上腕後の日、2日目は脚、肩、上腕前の日)、
強度、セット数、休息時間は数週ごとに変化するプログラムでしたが、両群ともに同じ。
つまり、器具・種目(フリーウエイトorマシン)以外のトレーニング結果に影響を及ぼす変数はコントロールされていました。

結果です。
大腿四頭筋と上腕二頭筋の筋厚(筋肥大の指標として測定)は両群で増加、ただし群×時間および性別×時間の交互作用はなし。
これは、性別に関係なく両群ともに同じぐらい筋肥大したことを示します。

スクワット、ベンチプレスの挙上重量(フリーウエイトとスミスマシンで実施、ベンチプレスは1RM、スクワットは6-10RM)は両群で増加
このうち、スミスマシンのベンチプレスの1RMのみ群×時間の交互作用があり、マシン群の増加が著しい。

また、この研究では実験期間の前、中間、後の3時点において、トレーニング前と直後に唾液中のテストステロンとコルチゾールを測定しています。
そちらの結果をみると、テストステロンに群×性別×時間の交互作用が認められ、フリーウエイト群の男性ではトレーニング前から直後にかけて増加していました。

面白く、色々と考えたくなる研究です。
まず、この研究から学べることは、トレーニングの効果には一貫性があり、個々の方法論(フリーウエイトorマシン)が違っても、結局は同じ効果が導かれることです。
ということで、この研究も『異なるアプローチ、結局は同じ結末説』を支持しています。
(厳密には、スミスマシンのベンチプレスの1RMなど、一部は違う結果)

一般的に、フリーウェイトでのトレーニングは、動作を安定させるために多くの筋肉を動員し、その結果、テストステロンなどの同化ホルモンの活性が高まり、それが筋肥大を促進するとされています。
この研究では、確かにフリーウェイトを使用した男性のテストステロンはトレーニング直後に増加しましたが、筋肥大の程度はマシンを使用したグループと変わりませんでした。
トレーニングの現場では、急性の影響(例:テストステロン濃度)をもとに慢性の効果(例:筋肥大の程度)を理論付けすることがありますが、それは必ずしも正しいとは限らないようです


目標を達成するためには、自分が続けられるアプローチを見つけ、取り組むことが重要です。
トレーニング経験者であっても、  
マシン種目をやるのが好きな人はマシンをやって良いでしょう。
フリーウエイトが好きな人はフリーウエイトをやって良いでしょう。

執筆家としての活動費に使わせていただきます。