広島県尾道市「スパイスカレー アモン」
〜家賃から解放された津田さんの場合〜
スパイスカレーアモンは広島県尾道市。
瀬戸内海のすぐ近くにあり、とても気持ちいい場所にある。
お店を営んでいる津田さんに話を聞いた。
お店の特徴は？
二階建ての古民家を改装したスパイスカレーアモン。
50年以上経っている割にキレイな状態だったので改装はホームセンターなどで資材を購入し、素人でできるDIYのレベルでどうにかなった。
アピールポイントは？と聞くと
”ボロいから近寄りやすいのかな…(笑)”と一言。
自分一人の店だが折角ならと社訓を作った。
”尾道にいっぱいいる猫のように
「まったりのんびりマイペース」”
玄関で靴を脱いで入るアットホームな店内で
日々いろんな人が店を訪れる。
津田さんの場合
津田さんは穏やかでマイペースな雰囲気の30代の男性だ。
地元は東広島・安芸津町。
呉線の電車が走る町で育った。
19歳から21歳まで大阪に出て専門学校へ進み
IT関連の職業に就くことを志した。
実は津田さん、これまでに転職を4回くらい経験したが
ぼんやりと”しんどさ”や”生きづらさ”を感じていた。
とにかくもう雇われて仕事するのが嫌になっていて
辞めたいな…と思う日々。
ふと思いたち、あるとき福山市に住居を購入した。
なんと！不動産の情報検索サイトを使って10万円で譲ってもらったという。
住居を‟買ってしまえば家賃を払い続けなくて済む”。家賃を払い続けなくていいなら、嫌な仕事を無理して続ける必要もない。そんな気付きが、津田さんをときめかせた。いつでも仕事を辞められるんだぞ、と思うと少し気持ちが楽になった。
出店までの流れ
そんなころ、えらいてんちょうの著作『しょぼい起業で生きていく』を読み、その実践として兵庫県川西市でスパイスカレーの販売・卸などを行う久木田（くきた）と出会う。久木田が出店したカレー屋の1号店は「ケプリ」という屋号で、ネット通販でスパイスカレーやコーヒーなどの販売も行っている。あまりにも手軽に自宅でスパイスカレーができるのが好評で、そのスパイスカレーは全国に広がっている。
「ケプリ」は駅からは近いけれど、過疎化した元商店街だった路地の並びにある。出店前に周囲に計画を話したところ「あんな所で店なんて流行るはずがない」と言われながらもオープン。低予算でお金をかけない手作りの起業だった。
カウンターだけの店舗ながらも、寄付によって運営されるこども食堂なども盛況。地元の人の口コミやSNS等での宣伝効果で、現在は他府県からもたくさんの人が訪れるという。久木田はこのような地域を活性化するしょぼい起業を積極的に経営しており、他にラーメン屋「川西麺業」やバー・新たなカレー屋「ミルズ」と次々に開業している。
津田さんはその基となるスパイスカレーの店”ケプリ”を見て
「このスタイルならもしかして、自分にも出来るんじゃないかな？」
と思い始めていた。
そうしていると津田さんに、またとない転機が訪れる。
2019年8月
あるサイトで格安の店舗用物件を見つけたのだ。すぐに内見に出向いて2軒目の購入を決めた。仕事の合間に時間を見つけコツコツと作業を進めた。２階建ての古民家はDIYで改装されていく。
↓
2020年3月
当時勤めていた仕事を辞職。
↓
2020年4月
スパイスカレーアモンをオープン。
物件の購入費と改装費を合わせて１００万円程度で済んだ。
”しょぼい起業”の実現だった。
開業準備中から飲食店営業許可に向けた作業についてや、店を始めるために必要な備品をどのように安く自前で揃えるかなど、久木田と相談しながら準備をしていった。開店後も細かいトラブルはありつつも日々改善を重ね、カレー屋を徐々に軌道に乗せていった。
現在は常連さんが入れ替わり立ち代わり…という流れにまで持ってくることができ、ゆっくりとマイペースながらも順調に経営している。
開業後に気づいたこと
「毎日が気付きですね
こんな生き方があるんだな、って。
雇われの仕事はいつも週5でフルタイム。
それが当たり前だと思ってたんです。
だけど家が余っている地方都市や郊外であれば、じっくり探して余っている物件を格安で購入してしまうことができる。それをお金をかけずに自分で直せば、家賃や事業を始める時の借金のためにたくさんお金を稼ぐ必要もないので焦らなくていい。
毎日をゆっくりと過ごせることは、精神的にとても楽です。”お金を稼ぐことが目的”の生き方ではない、誰かとゆるく繋がりながら暮らしていける今とても幸せです。
昔は商店街でにぎやかだったこの辺りが「しょぼい起業の商店街」としてにぎわうのも、遠い未来の話ではないかもしれない。
取材・編集：はじはたあつこ
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写真提供：一般社団法人はれとこ
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