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「不動産豆知識12 擁壁とガケ条例」FM笹谷部長 Vol.86

FMグループ社内報Vol.86【投稿者:笹谷部長】

皆さんが紹介したり、案内したりする物件の中に時々、地盤にコンクリート製の土留めが施されている物件があるかと思います。
坂が多い地域や高低差が大きい地形の地域に多く見られます。要は土地を構成する土砂が崩れてしまわないよう土砂をキープしておく壁ですね。

この壁の事を”擁壁”と言います。鉄筋コンクリートや間知ブロック、大谷石などで作られています。今日は、こういった擁壁の有る物件を取扱う際の注意点のお話です。

通常、各自治体には「がけ条例」と呼ばれる条例があります。
東京都の場合だと「東京都建築安全条例第6条」に”がけ”という条項があり、内容は次のような感じです。

「高さ二メートルを超えるがけの下端からの水平距離ががけ高の二倍以内のところに建築物を建築(中略)する場合は、高さ二メートルを超える擁壁を設けなければならない」。
自治体によって内容に微妙な違いがありますが、概ね似たような内容です。細かい内容をすっ飛ばして簡単に書くと、要は2mを超えるガケがあった場合、崖の上や崖の下に建物建築をするには、ガケ高の2倍以上の距離をとるか、擁壁を設けなければならいという事になります。

そしてこの擁壁も、建築基準法上の要件を満たした安全上支障のない高さ2mを超える擁壁でなければなりません。
建築基準法の規定に基づき築造された擁壁は、工作物の建築確認を取得しているはずですので、役所で調査すると「工作物の建築計画概要書」等が取得出来るはずです。

さて、ここで賢明な読者の皆さんはお気づきになったかと思いますが、建築基準法の規定を満たしていない擁壁の場合、建築が出来ないという事になります。
擁壁がこちらの敷地上にあるものならまだしも、隣地に設けられた擁壁の場合だと隣地所有者と協議し安全な擁壁を再築造しなければなりません。

こうなると大問題に発展してしまいます。
擁壁物件は近隣相場と比べて比較的安く売りに出ていることが多いと思いますが、こういったリスクを買主に説明し、最悪の場合数百万単位の費用負担が生じる事もご理解頂いておかないと、後になって大変な目に逢う事になりかねないので要注意です。

注意点を纏めてみると以下のようになります。
■擁壁の高さは、ガケ条例の対象となる高さであるかを調べる。
■擁壁の構造は、建築基準法の要件を満たしているかを調べる。
■古い擁壁の場合、土圧によるひび割れやはらみ等の老朽化の具合を調べる。
■擁壁はどちらの敷地に存するのかを調べる。

擁壁物件を紹介する時には、最低でも上記内容は予め下調べをしておき、お客さんから質問されも慌てる事無く自信をもって答えられるようにしておきたいものです。

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