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「不動産豆知識25 履行の着手」FM笹谷部長 Vol.181

FMグループ社内報Vol.181【投稿者:笹谷部長】

今日は手付解除のお話です。
売買契約の時には一般的に”手付金”を授受するのが商慣習となっていますが、この手付金の意味と”履行の着手”とは何かについて、お話ししようと思います。

不動産売買における手付金は、他に特別の約定が無い限り”解約手付”になります。
これは、一度締結した契約は、むやみやたらと解除出来るわけでなく、やむを得ず解除する場合には、ペナルティとして相手方に手付金額を支払う必要があるという事です。

そして、この手付解除が効力を発揮するタイミングとして”履行の着手”がキーワードとなってきます。
ほとんどの売買契約書には、手付解除という条文があり、だいたい下記のような文言がデフォルトのフォーマットに入っています。

第〇条(手付解除)売主、買主は、その相手方が本契約の履行に着手するまでは、(~中略~)本契約を解除することができます(因みにソースは民法第557条です)。

ここで良くお客さまに聞かれるポイントがありまして、それは「本契約の履行に着手するまでは」の部分です。
「それって結局のところ、いつまでなんですか?」と質問を受けて答えに窮する経験をした事がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

契約を締結すると権利と義務が生じます。
簡単に言ってしまうと・・・

売主の義務:物件を引渡す事   
買主の義務:売買代金を支払う事    

契約の履行とは、上記の各当事者の義務を履行する事なんですね。
つまり、先程の質問に対する答えとしては、原則「決済までは互いに契約の解除が出来る」となります。(但しこれは宅建業者売主の場合であり、個人間売買の場合には別途手付解除期日を定めることが可能です)

しかし、例外的に履行の”着手”として、手付解除が認められなくなる場合もあるので注意が必要です。
例えば「他人物売買において、売主が他人の不動産を取得して登記を得たこと」、「買主の希望による間取り変更工事がある契約において、当該工事に着工済みである場合」など履行の着手に該当する可能性が大きいケースもあります。

履行の着手は、行為の客観的性質で決めるのではなく、契約の全ての要素を判断の前提とする為、一概には断定出来ません。お客さまに説明する際には「あくまでも一例ですが・・・」と前置きをした上で説明するようにしましょう。

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