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福音 浩一郎(ふくね こういちろう)
2022年9月7日 10:54
つぶれるいちごをぼくは見た。 ふと、なまあたたかくてしめっぽかった、あの夜がよみがえる。 でもいま、いちごを踏みつぶしたのは、父ちゃんの足ではなく、車いすの車輪なのだ。 八百屋の店さきで、みかんでもりんごでもなく、いちごにぼくがいざなわれ、ひと山二百円のザルから赤い粒をつまみあげた時のことだった。「お客さん」 店のあんちゃんが愛想笑いで呼びかける。「さわったら買ってってよ」とでも言っ