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短篇小説集

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ぽつりぽつりと書いてゆく小さな物語をここにまとめます
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#生きる

いちごの家族

いちごの家族

 つぶれるいちごをぼくは見た。
 ふと、なまあたたかくてしめっぽかった、あの夜がよみがえる。
 でもいま、いちごを踏みつぶしたのは、父ちゃんの足ではなく、車いすの車輪なのだ。
 八百屋の店さきで、みかんでもりんごでもなく、いちごにぼくがいざなわれ、ひと山二百円のザルから赤い粒をつまみあげた時のことだった。
「お客さん」
 店のあんちゃんが愛想笑いで呼びかける。
「さわったら買ってってよ」とでも言っ

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