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短篇小説集

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ぽつりぽつりと書いてゆく小さな物語をここにまとめます
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2024年7月の記事一覧

忘れじの波

忘れじの波

 ごめんね、聖夜。
 せっかく見つけたのに、こんなことになっちゃって。
 でも、ぼくはあの時、走らなきゃと、それしか頭になかった。
 走ったらどうなるかって、そういうあとさき、考えられなかった。
 ぼくずっと、まるで刺繡を裏地からのぞいてるみたいだったの。
 ばらばらな色の何百何千という糸がこんがらがって、なにがなんだか、わからなかったの。
 ものごとのつながりも境目もあいまいになって、あわ雪のよ

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