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今、映画館で映画をみるということ

井の頭線沿いに引っ越してきて、もう1年以上が経った。この1年で、下北沢トリウッドという45席の小劇場を中心に、最低でも月に1回は映画を見に足を運ぶようになった。もともと映画館に行くことなんて、年に1回あるかどうかくらいだった私が、なぜ年間30回ほど映画館に足を運ぶようになったのか、その理由が自分でもよくわからなかったので、少し考えてみた。今回も完全に自己満備忘録なので、興味のない人は最後のオススメコンテンツの紹介だけ覗いてもらえれば嬉しい。


■日々、コンテンツに溺れる

日々、脳みその疲れがなかなか取れない。在宅勤務が中心になっている今、一日が終わるころに身体自身に余力があることはあれど、私の小さな脳みそに余力が残っていることはない。現代に生きる日本人が1日に触れる情報量は、平安時代の一生分・江戸時代の1年分にも匹敵するということは、有名なお話。

そして仕事終わりには、群雄割拠の動画配信プラットフォームやSNSに見事に余暇時間を蝕まれて終わっていく平日。仕事をこなしてはコンテンツを消費するこの生活は一体なんなんだ?とふと思い、日々の可処分時間の棚卸をしてみた。

こどものころからの時系列で1週間あたりの代表的なコンテンツごとの消費時間を示したのが下図の積み上げグラフだ。テレビは大学生になって以降、めっきり見なくなった。テレビ画面を見る時間はなくなったが、その代わりスマホ画面を見る時間が激増した。最近では毎週末にiPhoneに表示されるスクリーンタイムの通知を見て、本当にゾッとする。虚無。

使用時間の大部分をしめるのは、諸々のSNSと、何よりも動画配信サービスである。平均すると1週間あたり25時間ほど費やしているらしい。1週間のうち、丸1日を動画視聴に充てていることになる。この文章を打ちながらその恐ろしさを改めて実感して、手が震えている。18~22歳の統計に私を紛れ込ませたとすると、上位30%に食い込める視聴時間に匹敵するらしい。え、なんか恥ずかしくなってきた。

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動画視聴時間のプラットフォーム内訳は下図の円グラフのイメージ(肌感覚)。テレビ自体は見ていないが、Tverでの見逃し配信は本当に見まくっている。どれだけの番組数をTverで毎週チェックしているか数えてみた。約50番組という恐ろしい結果だった。ニートかな?

もちろん全ての番組をテレビと同じ再生速度で見ているわけではない。平均して30分ほどの番組としたときに、50番組×30分÷60分≒25時間分。これを1.75倍速再生で視聴して、約15時間まで圧縮している。

図2

報道番組やドキュメンタリーだけでなく、最近ではバラエティー番組についても1.75倍速再生で楽しめるように脳が適応した。笑いには『間』というものがあり、これを少し間違えるだけで面白くなくなるということは、皆さまご存じの通り。その『間』を1.75倍速再生verに変換して楽しめるようになってしまったのだ。倍速再生機能によって、私の脳は改造されてしまった。

脳が改造されたことにより、1倍速の現実世界と比較して、単位時間あたり約2倍の情報やコンテンツを脳に流し込めるようになったが、現実世界への弊害もある。「あぁこの人、話が進むのが遅いな。最後まで聞くに堪えないです。すみません。」と感じる瞬間がかなり増えた。たぶん顔にも出ている。それは普通に私が悪い。

つらつら状況整理をしてきたが、何が言いたいかというと、無理して日々倍速の世界に身を置く寄り戻しとして、1倍速の世界を本能的に取り戻すため、身体が映画館に向かっているのではないかという仮説が立てられないかということだ。SNSのユーザーが増えだした2011年頃から、キャンプに参加する人口がジワジワ増えていた(10~20万人/年)のと似たような関係なのではないのか。


■映画館で取り戻せるもの

映画館では1倍速の現実世界と、邪魔が入ることなく強制的に向き合うことができる。現代人はスマホに10分に1回、1日平均2,600回触っているといわれる時代。2時間とはいえスマホデトックスができる貴重な環境なのだ。

人間の持つ概日リズムは24時間周期とは微妙にずれていて、体内時計を現実世界に同期するために、ちゃんと朝に日光を浴びたりする必要がある。それと同じように、私にとっては、1倍速の現実世界のスピード感に脳と身体を同期できる場に映画館がなっていると考えている。

スマホで映画を見るのと、映画館で映画を見るのとでは、当然祝祭の観点でもまったく別の体験になる。全く素性も知らないけど、この映画を見るという目的を共通で持つ集団が持つ緩いグルーブ感は、失いたくない愛おしい祝祭性を持つ。音楽ライブやお笑いライブに、配信でなく現場に足を運び続けるのも同じ理由である。やっぱりそこにしかないものはある。

結論としては、遺伝子に刻まれた本来生物として持つあるべきスピード感のチューニングのためとか、祝祭から得られる社会的動物性のチューニングとか、そんな目的で身体が映画館という場を強く求めるようになったということである。日々忙殺されて、時間の流れ方が狂っているような人は、NetflixやAmazonPrimeで済ませるのではなく、ぜひ映画館にも足を運んでみてほしい。


■関係ないけど、最後にご紹介

ここ2年くらいで見たコンテンツで面白かったものを最後にご紹介して終わりにする。有名なものばかりなので、新たな発見はないかもしれない。あ、映画の備忘録用としてFilmarksをやっているので、良かったら繋がってほしい。他人が何を見てどう思ったかを知るのはなかなかに面白いもの。


街の上で。最近Netflixでも配信されたのでぜひチェックしてほしい。人生で初めて同じ映画を2回見に行くという行為をした。下北沢が舞台の映画で、冒頭にも紹介した下北沢トリウッドも劇中にも登場する。この作品で初めて監督軸(今泉力哉監督)で映画を掘るように至った。感想はFilmarksの通り。


いとみち。一部標準語も登場するが、津軽弁中心で進んでいくストーリー。半分以上聴き取れなかった。聴き取れなかったはずなのに、細かい心情の変化までなぜか伝わってくるという不思議な体験をした。まだ各種動画配信プラットフォームでは解禁されておらずレンタルのみだが、めちゃくちゃ見てほしい。感想はFilmarksの通り。


サマーフィルムにのって。こちらも上映開始直後に1回、年末に1回、映画館でみた。2021年のクローザーとなった映画。なんで自分が涙を流しているのかよくわからなかった。ただの青春映画じゃないけど、結局最後にはまた青春したくなる。心が若返った。街の上でもそうだが、映画館で見ることに意味があるように思えた作品。感想はFilmarksの通り。


他にもまだまだ紹介したいが3000文字にも到達してしまったので、このあたりで止めておく。あとはFilmarksを見てほしい。世の中に映画が多すぎて圧倒されるけど、これからも「縁」を大事にしながら見ていく。好きな映画に出会って、上映後まだドキドキしながらもパンフレットを買ってしまう体験もまた愛おしい。

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番外編…

古見さんは、コミュ症です。日々色々なアニメと出会うが、古見さんは少し自分のなかでは別格だった気がする。綺麗過ぎたり、可愛すぎる人(例.小松菜奈、ペ・スジ…)を見ると涙が出てくる意味のわからない体質なのだが、アニメのキャラクターでその現象が初めて起きた。あと、だいたいアニメのOPなんてビンジウォッチするときには、数話見たらスキップするのが普通だと思うが、全話OPからEDまで味わった。2期の放送を早くしてほしい。


スタートアップ:夢の扉。弾切れなくどんどん面白いコンテンツが出てくる韓国。Netflixにも無限供給されているが、今のところ一番好きなのはこのドラマ。国内外問わず、時間も問わず、無限に質の高い面白いコンテンツに出会える時代になって良かった。と思う反面、制作する側も消費する側も圧倒的な量と速さに圧し潰されて、案外幸せになれていないようにも見えるところが、にんげんの可愛いところ。こんな世界線を繰り返すのでしょう。

ジャンル問わず、オススメあったら教えてください。

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