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ヒロイックファンタジー 王になりたい!兄弟が邪魔!(以下略

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【短編小説】ヒロイック・ファンタジー+騎馬遊牧民。いずれは敵同士となる定めの星の下に生まれた、王子達が織りなす剣と魔法の冒険譚。「王になりたい!兄弟が邪魔!でも味方がいないから同…
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新しいヒロイック・ファンタジーを!(シリーズもの企画書)

ヒロイック・ファンタジー+騎馬遊牧民。いずれは敵同士となる定めの星の下に生まれた、王子達が織りなす剣と魔法の冒険譚。 王になりたい!兄弟が邪魔! でも味方がいないから同盟する  本シリーズは、騎馬遊牧民王朝の異母兄弟を主人公にしたヒロイックファンタジーだ(本企画に基づく小説は以下のマガジンに収録)。  これまでにも「ふたり主人公(バディもの)」のヒロイックファンタジーはあった。そう、ファファードアンドグレイマウザーだ。エターナルチャンピオンも、だいたい二人だった。わずか二

ヒロイック・ファンタジー小説「兄弟と魔女の指輪」

(裏表紙カバーのアレ)異国で金もコネもなく途方にくれる北方出身の兄弟は、魔女の塔から蘇生薬を盗み出して一山当てようと企む。薬の真贋を塔内のキバタンの剥製で試したところ効果てきめん。鳥は「泥棒!」と騒ぎたて、塔中を飛び回り、魔女は無論、狂い斧の異名をもつその夫まで目覚めさせた。 本記事はすべて無料です。金額表示は一種の投げ銭とお考えください。 Web横書きが苦手な方へ。お手数ですが「えあ草紙」をご利用ください。本ページのURLを所定のフォームに入力してボタンをおすと、縦書き

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【中編小説】兄弟と遊弋書庫【まとめ読み】

(あらすじ)異邦の王子ダームダルクは、傲慢ケチ博士のもとでの修行が嫌になり、博士の発明した滑空機械を盗んで脱走。ところが嵐のせいで機械は壊れるわ、人外の者をのせた船に不時着するわ、とかく自由への道は険しい。そんな七転び八起きの冒険活劇×幻想怪奇。 梗概から読みたい方はここをクリック 夜、館の中 通路のさきで音がした。  垂幕を引きあけ、壁龕に飛びこむ。  ダームダルクは何かを踏みつけた。神経を張りつめていたからこそ気づけた、わずかな応力だ。  バネじかけにのった石が、致死

【中編小説】兄弟と遊弋書庫4/4

(これまでのあらすじ)脱出手段たる滑空機械を見つけられないダームダルクは船長と接触する。機械のことは秘密にしたまま、箱船を海賊から救った礼として陸にかえしてもらうつもりだったのだが、目論見は外れた。  船長もまた秘密主義者であり、船長は船の秘密を守るためダームダルクを軟禁した。  そんなダームダルクのことは全く知らずに、ツァフ博士が動きはじめていた。動く城壁を海に押し出して、箱船を鹵獲するという計画だ。ダームダルクと乗組員たちが海図にない島に気づいたときには手遅れ。島は円状の

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【中編小説】兄弟と遊弋書庫3/4

(これまでのあらすじ)ダームダルクが不時着したのは、巨大な箱船だった。不時着するなり箱船を襲う海賊と戦い、誰にも気づかれることなく、箱船勝利の立役者となる。ところが、戦いのなかで、ダームダルクは修理するつもりだった滑空機械を紛失してしまう。  機械をさがして船内を探索するうちに、乗組員が人外のものばかりだと気づく。彼らの目を盗んですすみ、ようやくあえた同じ人間は、弟のバーキャルク。王位を求めて対立するライバルだ。  弟は船についての情報を教えることで、自分の命をあがなった。奇

【中編小説】兄弟と遊弋書庫2/4

(これまでのあらすじ)草原の王子ダームダルクは、押しかけ弟子として南の島のツァフ博士のもとへ行った。  期待に反して、博士は秘密主義で人殺しもする魔法使いであった。博士はダームダルクを軟禁して、片手間に発明した滑空機械の実験台という役割を押しつける。対するダームダルクは、博士の魔法を盗んで脱出する機会を伺いつつ、実験台の身分に甘んじていた。  博士が人形をして小作人の子どもをためらいなく殺させたある日、とうとうダームダルクは滑空機械で島から脱出した。博士の使い魔である黒猫ハト

【中編小説】兄弟と遊弋書庫1/4

(あらすじ)異邦の王子ダームダルクは、傲慢ケチ博士のもとでの修行が嫌になり、博士の発明した滑空機械を盗んで脱走。ところが嵐のせいで機械は壊れるわ、人外の者をのせた船に不時着するわ、とかく自由への道は険しい。そんな七転び八起きの冒険活劇×幻想怪奇。 #1 #2 #3 #4 #梗概 #まとめよみ 夜、館の中 通路のさきで音がした。  垂幕を引きあけ、壁龕に飛びこむ。  ダームダルクは何かを踏みつけた。神経を張りつめていたからこそ気づけた、わずかな応力だ。  バネじかけにのった

【中編小説】兄弟と遊弋書庫 梗概

 本記事には結末部分を含むネタバレがあります。ご了承ください。 §  草原の王子ダームダルクは、押しかけ弟子として南の島のツァフ博士のもとへ行った。  期待に反して、博士は秘密主義で人殺しもする魔法使いであった。博士はダームダルクを軟禁して、片手間に発明した滑空機械の実験台という役割を押しつける。対するダームダルクは、博士の魔法を盗んで脱出する機会を伺いつつ、実験台の身分に甘んじていた。  博士が人形をして小作人の子どもをためらいなく殺させたある日、とうとうダームダルクは

ヒロイック・ファンタジー小説「兄弟と凍土」

第一幕 開扉  摂政バーキャルクは、宰相ハンバルクと相対している。  二人がいる遊牧民式の冬営用天幕の内部は殺風景で、文官というより武人の居室だ。  壁沿いに物入れがいくつか、あとは机一つと椅子が二つだけだ。  机上には筆記具のほか、何もない。  もう夜で、天窓は閉じてある。外は静かだ。 「誰を身辺に置こうと、俺の勝手だろう」  先ほどからずっと、バーキャルクは、愛刀の柄に指を打ち付けている。  大振りな新月刀で、処刑人の道具といっても信じられるほどだ。  木製の鞘は艶消しの

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ヒロイック・ファンタジー小説「兄と師」

第一幕  荷馬車に積まれた干草の中に若者が隠れている。 「お代は結構、好きなだけ持ってきな」  御者台のほうから、男の声がした。 「いつもすまないね」  若者が横たわる荷台のすぐそばで、女の声がした。  干草がこすれる音がした。女が干草を抱えあげているのだろう。 「手伝おうか」 「そういうのを年寄りの冷や水って言うんだよ」 「ははっ、元気がいいね」  干草を取り出す音がするたびに、若者の体にかかる重みが減っていく。  若者は、息を殺して潜んでいる。  意外とすぐに音が止む。

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ヒロイック・ファンタジー小説「兄弟と古屋敷」

第一幕 私たちの廃屋探検も、これで最後の一部屋だ。かつての客用寝室もまた、軋みや腐食、カビ臭さと薄暗さに満ちていた。  金になりそうな家具調度は、全て失われている。唯一、残っていたのは玻璃の姿見だ。当時も今も硝子で作った鏡は貴重品である。競売のために持ち出すには壊れやすい厄介物とみなされたのだろうか?  祖父の遺産目録に目を通して、玻璃鏡のことは知っていた。だが、実物を見るのは初めてだった。  なんとはなく鏡を見つめると、兄さんが剣を振りかぶる様子が映っていた。ちょっとした

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ヒロイック・ファンタジー小説「兄弟が坑道に潜り妖にまみえること」

騎馬遊牧民の兄弟は、空腹を抱えて放浪を続けるうちに、怪しげな旅の男に出会った。相手が、いわゆるぽん引き、人買いであると看破した兄弟は、一芝居うつことにした…。 第一幕 アーク兄弟は、草原の父王の影から遠ざかるかのように、南へと馬を進めていた。  北から海岸沿いにアウンタ女王領に入って以来、口にしたのは味気なく薄い粥だけだった。農園には狼煙台と監視の目があり、野鳥の巣の卵は毒蛇に先を越された。毒牙に噛まれる危険を犯してまで、枯れ葉の中の卵に挑む気にはなれなかった。  国境

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ヒロイック・ファンタジー小説「兄弟と追手達」

騎馬遊牧民の兄弟が怪物を退治したと、証拠なしで言い張り賞金をせしめた。ところが、兄弟には追っ手が差し向けられた。仕留めたはずの怪物が実は生きていたのだろうと推測した兄弟は、騎馬遊牧民の騎射術を活かせる山の狭い桟道を、逃走経路に選ぶ。 第一幕 アーク兄弟は山道を登っている。蒸し暑い南国の密林が、高燥たる北国の草原育ちの二戦士に、大きな試練を与えていた。  兄弟が引いている二頭の馬には、重そうな箱が二つずつ括りつけてある。  山の高さと険しさをおそれて猿も鳥も引き返すという伝説

¥100