UIの考察からInstagramが提供する体験の変化を読み解く
様々な競合にあたるサービスとしのぎを削りながら常にアップデートを繰り返しているInstagram。この記事ではInstagramが繰り返してきたアップデートの中で、どのようにサービスの体験が変化してきたかを以下のInstagram独立のサービスサイトを引用しながら考察してみます。
https://about.instagram.com/
Instagramの特徴的な機能
先ほどのサービスサイトにて特徴として挙げられているものは以下の通りです。
ARフィルターや音楽を用いた短い動画を作成することができるリールをはじめ、Instagramが提供する機能単位で書き出されています。
この一覧には含まれていませんが、今回の考察の主軸にしたいのは初期のInstagramから変わらず残り続けている「投稿(POST)」という概念です。
以前、タブバーの投稿(POST)ボタンのアイコンがカメラモチーフから「+」へ変化したことを考察した記事は、記憶に新しいのではないでしょうか。
モバイル写真に主にフォーカスをおいていたInstagramですが、どうやら積極的に新しい領域へと踏み出し、革新的な成長をとげようとしているように見えます。(皮肉にも他のプロダクトの模倣によってですが)
引用元:InstagramにおけるUX氷山の反対側
この指摘の通り、上記の機能一覧やこの記事が投稿された2017年から追加されたリール機能を見ても、モバイル写真以外の新たなコンテンツの発展にフォーカスしていることがわかります。
作品の拡張
こうした変化に伴って、現在のUIにおいて「投稿(POST)」が指すものが何であるのかがどんどん曖昧になってきているように思えます。
例えば、ユーザーがコンテンツを発信するためには、以前より複雑な導線を経由しなければならなくなりました。大きく以下2つの導線があります。
1. ホームタブを選択し右上の「+」アイコンを押して、POST、STORY、REELS、LIVESを選ぶ。
2. もしくはユーザーのプロフィールタブを選択し左上の「+」アイコンを押して(ホームのものとは異なるアイコン)、POST、STORY、SOTRES HIGHLIGHT、IGTV、REELS、まとめのいずれかを選ぶ。
こうしたフローを観察していると投稿(POST)はコンテンツの一種でしかないことがわかりますが、投稿が行われた後にホーム上でPOSTが表示される以下のようなUIはREELS、LIVES、IGTV(表示期限があるSTORY以外全て)にも共通で使用されます。
初期から引き継がれているこのUIはそのままに、表示される中身(コンテンツの種類)は拡張していっていると言えるのではないでしょうか。
〜余談〜
完全に個人的な解釈ですが、上記のコンポーネントは作品を囲う額縁のように見えてきます。後述しますが、Instagramがユーザーの表現を手伝うことを自らの特徴と述べていることを鑑みると、Instagram上で発信されるコンテンツをユーザーの「作品」と表現するのが適切ではないかと考え、タイトルを「作品の拡張」としました。
タブバーの構成
また現在のタブバーの構成を改めて見てみると、Instagramが重要視している体験が変わってきていることが伺えます。
これまでタブバー中央に位置していた投稿(POST)の導線である「+」ボタンがタブバーから消え、上部に移動したことはご存知でしょうか?
現在のタブバーの構成は以下の通りです。
・ホーム
・検索
・リール
・ショップ
・アカウント
アカウント以外は他ユーザーが発信したコンテンツを閲覧したり見つけることを促すコンテンツのコレクションビューへの導線となっています。
つい数年前までは、コンテンツを閲覧する際の要となっていたのは、フォローをしているユーザーのコンテンツが流れてくる(表示されるコンテンツ主が限定されている)「ホーム」であったと思います。
しかし今や世界で10億人ものユーザー数を抱える巨大なプラットフォームになったInstagramには、自らを積極的に表現し膨大なフォロワーを抱えるユーザーも多く存在しています。そうしたユーザーから発信されるコンテンツをフォローせずとも受動的に目に入れる機会を与えるように設計されているのが、残りのタブバーの項目である「検索」「リール」「ショップ」タブなのではないでしょうか。
実際、Instagramを利用していると、リールなどの新しい機能を使用してあらゆるコンテンツを発信する人と、ストーリーや投稿機能のみを使用してクローズドなコミュティ間でしか発信を行わない人とユーザー像が二極化してきているように感じます。
モバイル写真の加工やシェアからスタートしたInstagramは自分自身をどう定義しているのか、どういった体験を提供しようとしているのかを表す言葉として、サービスサイトに掲載されている以下のセンテンスが当てはまるのではないかと思います。
Our features help you express yourself and connect with the people you love.
クローズドに利用したい人、オープンに発信したい人、それぞれに合った方法でユーザーが最大限に表現できる場所を提供しているのではないでしょうか。
コミュニケーションツールとしてのInstagram
また、LINEのような親しい人たちとのコミュケーションに照準をむけていたサービスがユーザーの「表現」を促す機能を追加しているのと同じように、
初期に「表現」に重きを置いていたInstagramが「コミュニケーションツール」としての役割も担おうとしているのは必然と言えるかもしれません。
以前、高校生の妹に今の学生はLINEなどよりもInstagramのメッセージを使ってオンラインの会話を行うことが多いと教えてもらったことがあります。
最新のアップデートでもMessageに関する機能を大幅に変更を加えていることを鑑みると、Instagramがコミュニケーションツールとしても独自の価値を見出そうとしているのがわかります。
さいごに
ユーザーが「表現」を行う場としての発展してきたInstagramですが、企業アカウントもうまくその世界観に馴染んでいることも1つ大きな特徴なのかなと思います。一般ユーザーに限らず様々な単位のアカウントが自らを「表現」ができる場として今後もどのような変化をしていくのか、楽しみです。
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