■本と私/「猫を棄てる」 村上春樹
こんな風に沈静な文体で文章、小説が書きたいと思った。
書けそうかも、との淡い光明も得た。
村上春樹がもう70歳を越えているなんて不思議な感覚だ。
私にとっては大学生時代に読んだ頃の、村上さんのままだから。
スノッブでキザな文体が鼻について苦手だった。ウィスキーの銘柄がなんだとか、その時ジャズバーのカウンターには誰何某のレコードがかかっていたとか。なんだかディテールの描写がねっとりと絡みつくようで、
「若さ故なのか男性故なのか、そういうものなのかわからないけれど、私には合わ