こんなブログがあった。長いけど重要なので引用します。宮崎駿の最後の遺作のヒントになる。


宮崎駿講演会「方丈記私記と私」

2008年10月11日 23時02分10秒

テーマ:ブログ



今日は神奈川近代文学館に宮崎駿監督の講演会「方丈記私記と私」に行ってきました。
最初の募集の時に応募し損ねて諦めていたら読売新聞のヨリモというサイトで講演会のチケットプレゼントの受付をしていて応募したところ当選。貴重な機会でした。


今回の講演会は神奈川近代文学館が企画展「堀田善衞展 スタジオジブリが描く乱世。」を開催していて宮崎監督が堀田善衛のファンである事から企画されたそうです。
企画展の内容は堀田善衛の著作である「方丈記私記」と「路上の人」をアニメ化するとしたらという設定で宮崎吾朗監督が描いています。


講演会は定刻通り14時から開始。本物の宮崎駿はテレビとかで見るより若々しいですね。エネルギーがあります。

宮崎監督「このお話が来たのが一年半前でその時の妻の第一声がなんと不適格な人間をでした。今日は方丈記についてというより自分にとって堀田善衛という人がどれ程大切な人であったか。自分にとってその作品がどういう存在かという事をお話しようと思います。下の展示でスタジオジブリが「方丈記私記」をアニメ化するとしたらという事でイメージボードを描いていますが私はあれを全否定しています。あれで出来るんだったら俺がもうやってる(笑)親子喧嘩してもしょうがないんですけどね。」

という話から開始。宮崎監督の話は一時間位でその後30分程質疑応答。全部喋った事を書き写したい所ですが流石に覚えていないので要点だけ。


1 堀田善衛の存在とは   
宮崎監督「自分はおぼろげながらも空襲を体験していてB29を目撃している最後の世代なんじゃないかと思いますけども敗戦直後幼い子供なりに屈辱感があったんですね。それでもこの国に生きていかなきゃいけないというのがあったんですが二十歳位の時に堀田さんの「広場の孤独」を読んで救われたんです。
自分が大学に入った時はもう学生運動も終わってましたが堀田さんは政治活動やアジアアフリカ作家会議という活動をしていてそういった所からも刺激を受けました。
堀田さんは日本が好きな愛国者なんですけどそれを超越した所に行ってしまった。僕に君の日本は大変だねなんて言うんですから。」


2 方丈記私記をアニメ化するという事
宮崎監督「堀田さんが方丈記私記を映画にしたら面白いと言い出しまして「これあげるよ」と言われたんですが難しいですよなんていったら「路上の人」でもいいよなんて言うんですが。
「方丈記」を自分が読むとああ無常観だなで終ってしまうんですが堀田さんは全然違う風に読んでるんですよね。「方丈記」を書いた鴨長明がその時起きたことを生の事を実際に見た人じゃないと書けない文章だと言うんですね。ルポルタージュだと。
「方丈記私記」という作品は読むと本当に自分が鎌倉や平安時代に行った気がしてしまう位の作品で様々なイメージが渦巻いている。これを映画にするには例えば戸棚を開けたら別世界というファンタジーではなく現実世界と並行して作らなければならない。難しい映画として作ることは出来ますがアニメーションとして子供を意識しない訳にはいかない。中年向けだと言った所で中年だけが見る訳じゃないですから。
でもこの映画をみて子供たちが本当に平安に行った気になって街を闊歩する様な映画を作ってみたいですけどね。」

主要なテーマはこの2つ。

宮崎監督にとっての堀田善衛の様な存在を見つける事が出来ると幸せですね。何か迷った時にあの人なら何と言うのだろうと思うだけで救われる事もあるでしょうしね。


それ以外にも印象に残っているのは次の3つ。

「教養とはたくさんの知識があるという事では無く、例として堀辰夫が更級日記を尊敬される女性作家に更科日記を勧められ読み始めた。最初は分からないが何度も調べながら読む内に平安の女性の心持が分かる瞬間がある。教養というのは何度も読むうちに行間に漂う物を読み取るという体験をする事だ。」


というのと


「平安時代の気候というのは異常気象の時代。彗星が月にぶつかったと言われ太平洋に異変があったと。その頃インカの前の文化が海辺にいたが奥地に移動している。モンゴルも大移動を始めた。世界中でそういう異変が起きた時代でそこに平安時代がある。」


「情報が多い時代ですが自分で情報を選択すればいいんですよ。情報が多いから実際に見に行くという隙間があると思うんですよね。音楽を聴きに行くとか景色を見るとか。」

という3点です。


教養の話は本当にはっとしました。そうか、本を読むというのは知識を獲得するというのはそういう事かと思いました。でも難しいですね。そこまで読み込んで自分の物にするのは。


講演会終了後に企画展「堀田善衞展 スタジオジブリが描く乱世。」を観ました。
イメージボードを見ながらこれ全否定って言ってたなあと思いました。

宮崎駿講演会「方丈記私記と私」補足

2008年10月12日 23時44分49秒


一晩寝た事によって思い出した事を書いときます。忘れない様に。
昨日の宮崎駿講演会の話題です。


宮崎監督「堀田さんの作品に触れて感じたのはただ作品を作りたいというのでは無く、どうして作りたいのか何に自分が与するのかしないのか。やはりきちんと考えないといけない。 自分が作品を作る時の指針となっています」


もう一つ。


宮崎監督「旧約聖書にダビデ王が汝の喜びを抱き汝の酒を飲みただ汝の力を振るうべしという所があります。
仕事というのは全て虚像です。その瞬間は意味があった、甲斐があったと思いますしそうなんだと思いますが。
ただ汝の力を振るうだけですね」


随所に出てきた話題をまとめたので話したままではないですが

自分なりに解釈すると自らに自覚的でなければならない。そして目の前の事に力を注ぐという事でしょうか。

感覚人間な自分はついついノリ一発でやろうとしますが良くないんだなと。
やる事と為したい事との自分の関係や距離を知りベストを尽くす事が大事かなと思いました。

よろしければサポートお願い致します。いただいたサポートはこれからの投資のために使わせていただきます。