隠棲の夢01

隠棲の夢。 2018.6.18

10代の終盤に突如訪れた精神の混乱と落ち込みをきっかけに、ある種の諦観に覆われるようになった。人生なんてあっという間。僕たちは、広大無辺な宇宙の中、瞬くような時間に生きるのみ。ならば、できるだけ俗世から離れて、花鳥風月を友として暮らしてみたい。

かと言って、厭世感や虚無感に包まれてということでもなかったし、刹那主義や享楽主義に染まったわけでもなかった。少なくともギラギラとした競争の輪の中に踏み込まずに、例えば魚釣りにうつつを抜かし、春夏秋冬を数えて命の尽きる時を迎えるのも悪くない。そんなことを想ったのはいつだったか。気づけば、それなりに俗にもまみれて、歳を重ねている。
誰にも倣わぬまま説明のし辛い生業を得て、曲がりなりにも家族ができた。そして願い通りに田舎に暮らし、釣り場はもう目と鼻の先。そうして日常的に山や川と交感しても、その距離感にはいまも迷いがある。否が応でも世間とは繋がっており、身過ぎ世過ぎでSNSさえ操りながら、一方で仙人のごとき超俗に憧れる滑稽。友人たちの笑い声が聞こえてくる。

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・低山部で登った早朝の一目山。こんな絶景が日常にあればと思う。