【要約】文系AI人材になる − 統計・プログラム知識は不要 −
著者:野口竜司
出版社:東洋経済新報社
「AI」というと技術を扱う理系のイメージが強く、いかにも難しそうだと不安を抱く人も多い。
しかし本書では、これからのAI時代を牽引していくのは、「文系AI人材」なのだと主張する。
理系のバックグラウンドがなくても、AIを使いこなせる「文系AI人材」になるためにはどうすればいいのだろうか?
〈目次〉
1.AI社会で職を失わないために
(1)AI時代には、「行動しない」ことがリスクに
(2)5つの「共働きスタイル」
(3)足りないのは「文系AI人材」
(4)文系AI人材の具体的な仕事内容とは?
2. AIと働くチカラを身につける4ステップ
ステップ1: AIのキホンを丸暗記する
ステップ2:AIの作り方を知る
ステップ3:AI企画力を磨く
ステップ4:AI事例を知ろう
3.文系AI人材が社会を変える
1.AI社会で職を失わないために
(1)AI時代には、「行動しない」ことがリスクに
AIによって職がなくなるかもしれないという議論は、もはや珍しいものではない。
これまでも、新しい技術が生まれ、社会に定着したときには、複数の職種がなくなってきた。
その一方で、新技術を使った新しい職種も登場してきている。AI時代においても、新しいタイプのAI職が多く生まれるはずだ。
今後最もリスクが高いのは、AIによる失職を恐れるあまり、身動きが取れなくなることだ。
変化を恐れずにAI職に就く準備を始めることが必要となる。
AIが普及すれば、AIとの共働きスタイルが広がっていく。
AI職の役割は、AIの特性を知り、人間とAIの共働きをうまくコントロールすることだ。
こうした時代においては、行動しないことがリスクになる。
AIを積極的に使っていくことが、「人間とAIの共働き時代」を安泰に過ごすうえで重要なのだ。
(2)5つの「共働きスタイル」
人とAIの分業スタイルは、分業のバランスによって次の5パターンに分類できる。
①人だけで仕事をする「一型」:具体的にはマネジメント・経営業務、クリエイティブ業務など。
②人の仕事をAIが補助し、人ができていたことを効率化する「T型」:接客や営業、教育、ソーシャルワーク業務など。
③人の仕事をAIが拡張し、人ができなかったことを可能にする「O型」:医療・看護、弁護士といった高度な専門業務やトレーダーなどの予測分析業務。
④AIができない仕事を人が補助する「逆T型」:データ入力業務や運転業務など。
⑤人の仕事をAIが完全に代行する「I型」:注文会計業務や監視業務など。
(3)足りないのは「文系AI人材」
「AIの活用」と聞くと、AIを作ることを思い浮かべる方が多いかもしれない。これまでのAI人材教育はAIを「作る」ことにフォーカスしており、その環境は整ってきたといえる。
一方で、AIを「使う」側の教育環境や人材キャリアをフォローアップする環境は、まだ整っているとはいいがたい。
実際には、AIを作るハードルは下がっている。AIを作るための専門性がなくとも、構築済みのAIサービスを利用すれば、容易にAIを作ったり活用したりできるようになっている。
このような環境下では、AIを作るのか使うのかの判断能力が欠かせない。同時に、これからはAIをうまく「使う」人がビジネスを動かしていくだろう。
AIの導入数が増えれば増えるほど、「AIを作る仕事」以外の仕事が大量に発生する。
「理系AI人材」は、これまで主に「AIを作る」仕事を担ってきた。
また、AIを現場で動かすための「本番稼働AIシステムの構築」や、現場でAIを利用し続けるための「AIシステムの運用管理」も彼らの仕事だ。
これらの仕事以外の、AI活用に必要なすべての仕事を担うのが、「文系AI人材」である。
(4)文系AI人材の具体的な仕事内容とは?
文系AI人材の具体的な仕事内容を見ていこう。
まずはAIをどのようにビジネスで活用するかを考える「AI企画」があげられる。
ビジネス課題の解決や顧客の不便解消のために、AIの活用方法を企画する。
企画の方針によって、次の3つの仕事のいずれかを行うこととなる。
構築済みAIサービスでニーズを満たせない場合は、「AIを作るプロマネ」として、AIプロジェクト全体のマネジメントをすることとなる。
また、「GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)のAI構築環境で作る」ことを決めた場合は、文系AI人材自らがAIを作ることもある。
つづいて、自らAIを作らずに構築済みのAIサービスを使う場合は、どのサービスが自社にフィットするのかといった観点から、「構築済みAIサービス選定」を行うことになる。
「AIの現場導入」や「AIの利用・管理」も、文系AI人材の仕事になっていくだろう。
これらは、構築されたAIを現場に導入するための計画を立て、導入後のAIをどのように利用するかを管理する仕事である。
また、AI活用の大方針を決定したり、AIについての投資判断を行ったりする「AI方針・投資判断」も、文系AI人材が担っていく。
各業界でAI活用が広がってくると、特定業種におけるAIエキスパートとしての仕事も生まれるだろう。
2. AIと働くチカラを身につける4ステップ
ステップ1: AIのキホンを丸暗記する
文系AI人材として活躍するためには、次の4つのステップを踏む必要がある。
そのステップとは、「AIのキホンを丸暗記する」「AIの作り方をザックリ理解する」「AI企画力を磨く」「AI事例をトコトン知る」だ。
文系の人がゼロからAIを学ぶには、この4ステップが最適だという。
本要約では、各ステップの概要を順に紹介していこう。
ステップ1では、文系AI人材に必要なAIの基本知識を身につけていく。その第一歩は、「AI分類」「AI基礎用語」「AIの仕組み」を理解することだ。
まずは、「AI」「機械学習」「ディープラーニング」それぞれの意味を正確に理解し、使い分けができるようにしたい。
次に「学習方式の3分類」である。つまり、教師あり学習、教師なし学習、強化学習の3つを学んでいく。
そのうえで、「活用タイプ別のAI8分類」をおさえよう。
AIは機能別に分類すると4タイプ、役割別に分類すると2タイプに分けられる。
前者は識別系AI(見て認識する)、予測系AI(考えて予測する)、会話系AI(会話する)、実行系AI(身体や物体を動かす)から成る。
これに対し、後者は、人間ができることをAIが代わりに行う「代行型」と、人間ができないことをAIによってできるようにする「拡張型」から成っている。
それぞれを掛け合わせて、「活用タイプ別AI8分類」となることを覚えておきたい。
ステップ2:AIの作り方を知る
自分でAIを作らなくても、AIの作り方についてある程度イメージを持っておく方が、仕事をスムーズに進められる。
ステップ2では、AIがどのように作られているかを理解しよう。
そもそもAIは、大量のデータを丸暗記しているわけではない。
大量のデータがあるとAIの精度が上がるのは、データから特徴をつかんで法則を見つけ出しているからだ。
AIは「データ作成」「学習」「予測」の3つのプロセスを経てできあがる。
たとえば、ある企業内のスタッフが将来出世するかどうかを予測するAIを作るとしよう。
データ作成では、何に対して予測するのか(KEY)、予測する対象を特徴づけているであろう変数(説明変数)、3年後に出世するかどうか(目的変数)を定義する。
そのうえで、それらのデータをできるだけ多く用意する。
次は、用意したデータをAIのアルゴリズムに投入する。アルゴリズムがデータから学習し、学習結果から法則性を見出していくことで、AIモデルができあがる。そこへ一例として、「Zさん」というスタッフの「傾向データ」、Zさんが「挨拶するか」「営業が得意か」といったことをAIモデルに投入する。
すると、Zさんの3年後に出世する可能性を予測してくれるうえに、出世する確率スコアも出してくれる。
注意すべき点は、現代のAIはデータをすべて数値で把握しているのであって、データの意味合いまで理解しているわけではないということだ。
これが、AIは万能ではないといわれる理由の1つである。
ステップ3:AI企画力を磨く
AIのキホンとAIの作り方を学んだ後は、AI企画力を磨くステップ3に移る。
人間が想像できるAIはいずれ実現されていく。AI企画ではそれを念頭に、アイデアを小ぶりなものにしないようにしたい。
おすすめは、「AI企画の100本ノック」だ。
想像力を働かせ、AIでできることややるべきことについて、とにかく多く案を出そう。
様々な視点から異なるアイデアを集めれば、世の中の変化量を大きくするアイデアが見つかるだろう。
その後は、実現に向けてアイデアを収束する段階となる。「AI導入後の変化量」と「実現性」の観点から、アイデアリストをスコア化していく。いくら変化量が大きいアイデアでも、実現性が乏しいのであれば、短期的にはそのアイデアを深追いできないということになる。
AIを過大評価も過小評価もせずに検討し、変化量と実現性の両方を満たすアイデアを選ぶのが望ましい。
ステップ4:AI事例を知ろう
AIの活用事例をとにかくたくさん知っていくのがステップ4だ。本書で紹介されている45種類の事例から、いくつかの例をとりあげる。
通販サイトのLOHACOでは、独自キャラクターの「マナミさん」というチャットボットを導入した。
電話やメールを含めた問い合わせ総数の5割を、マナミさんが対応している。
センターの対応時間外や深夜にも対応が可能だ。電話オペレーターの仕事に換算すると、月に10人以上となる。
次に日経新聞の事例を見てみよう。
同社は創刊から約100年分の新聞記事のテキストデータ化に、AIを利用している。
これまでは原本をスキャンしたイメージデータのみを保存していた。
しかし、AIによるテキストデータ化に乗り出し、その精度は約95%に達している。
精度を上げることで、人手による修正の手間を大幅に省けるようになり、大量の記事を文字で検索できるようになった。
つづいてソフトバンクの事例では、新卒採用業務のAIによる効率化を進めている。
過去のエントリーシートをすべてAIに学習させ、エントリーシートの合否をAIが判定。
不合格判定のエントリーシートは人が再度チェックする。こうした体制にすることで、作業時間を従来の4分の1に削減することができた。
年間で換算すれば680時間を170時間に短縮でき、採用担当スタッフの作業時間の大幅短縮につながった。
3.文系AI人材が社会を変える
AIの基本、作り方、事例に触れてみると、その可能性の大きさを感じることだろう。
様々な可能性を持つAIは、「消費者、会社、働き手」に大きな変化をもたらしていく。
インターネットやデータ環境も、AIによる社会変化を後押しするかのように変化を遂げている。
新しい通信規格である5Gにより、そのスピードは飛躍的に向上するだろう。
こうして高速にデータがつながる社会では、AIのための学習データが量産されることになる。
AIは消費者の暮らしや情報取得、買い物の仕方、移動、対人コミュニケーションなど、あらゆる生活シーンに大きな変化をもたらす。
それに合わせて、会社や私たちの働き方も変わっていく。
この変化を牽引するのは、文系AI人材だ。
企業が求めるのは、AIのことをよく理解し、的確に活用する人材である。
読者の方々には、変化を恐れずにこのAI社会を引っ張ってほしい、というのが著者の願いだ。
引用元: 「type」ホームページ
以上
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