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大きな決断と経営者の素養

会社を変えたいという思い

私のところに来る方々は「会社を成長させたい」とか「会社を変革したい」という使命や強い想いを持っています。それは素晴らしい事ですが、いつも最初に聞くのは「なぜそれをあなたができると思うのですか?」という事でもあります。

特に「会社を変革するのが私の使命です」と力強く宣言されていた方が、「異動になりましたので、後任に引き継ぎます!」といって、すぅっとフェードアウトしてしまった時の「あれ?」という感覚。分かりますかねw。

日本は今、空前の人手不足です。その一方で、終身雇用は崩壊、企業は実質40代半ばでの定年制に移行しつつあり、どこの企業も業務のミスマッチを抱え「要らない人材」がだぶついてきています。デジタル化による仕事の変容はすでに始まっているのです。

ですから、我々ひとりひとりが「会社に頼らないキャリア」を考えなければいけないときになっても、まだ「会社を変えなければいけない」という強い思い込みを持ってしまうのでしょうか。会社があなたの忠誠心に応えることはないのに、です。


戦術と戦略の違い

実際のところ、ビジネスという戦場において「戦術を考える」ことは現場のマネージャーの役目です。どうやって部署の成績を上げようかという考えです。しかし、本当にこの戦が必要か?という判断については、これは経営者にしかできない上位の「戦略」に類する分野です。

激動の時代、経営者に求められるのは、戦いのさなかであっても、風向きの変化を察知したら一気に撤退する。そのような「大胆な決断」を行う事です。大胆な決断は大きな犠牲を伴います。犠牲は投下した資本(人命)が回収されないことを意味します。それは苦しい決断であり、それを背負う覚悟が要求されます。

多くの経営者は生まれつき経営者であり、経営者として育つといっていいかもしれません。経営者としての資質は決してビジネスマンとしてのキャリア・ゴールとしてあるものではなく、両者は別種族です。いかに高い山を目指して尾根伝いに歩いていても山脈は経営者という山にはつながらないのです。

平成の時代は、現場のビジネスマンがキャリアパスの延長として経営者になってしまうという事が起きました。そうなると撤退を伴う苦しい決断ができません。現場のビジネスマンは戦術に長けていますが「強い想い」に基づいて真逆の決断を下してきたことはないからです。

結果として、組織は小さい戦場で戦って勝つこと、それを積み重ねることが目的になります。しかし、それはより大きな「想い」の実現のためには本来必要ない戦かもしれません。その小さな勝利のために有能な兵士たちを浪費しているだけなのかもしれないのです。

だからこそ、私は「会社を何とかできる」のは本来の意味での経営者だけだと考えています。創業オーナーであり、経営株主であり、創業一族であれば分かりやすいかもしれません。なぜなら、決断することに対して他人の顔色をうかがう必要が無く、自分で決めて自分でその結果を受け入れることができるからです。


経営者として育つために

ビジネスマンが若くして「会社を何とかしたい」と強く考えているとすれば、実のところそれは、かなりいい兆候だと思います。なぜなら「会社を何とかしたい」という気持ちは、子供が親に甘えるのに似て、経営者に甘えているだけという事にいずれ気づくだろうからです。

そして、強い想いを持った者は、文句を言うのを止めて力強く行動し始めます。実のところ強い想いを持ち行動する者は、どこの組織や部署にいようと関係ありません。自分が一つの細胞のオーナーであることを明確に自覚しているからです。

結果として、脱藩して組織の外に出るという結論もあり、周りを巻き込み大きな動きを作り始めるという結論もあり、自分のオーナーシップの範囲で出来る限りの改革を始めるという事もありでしょう。

全ては「自らの強い想い」の実現のために行うことが重要です。「強い想い」があるからこそ自分にオーナーシップを持ち、大きな決断ができるようになるのです。それこそが経営者への道であり、会社を変えるために必要なことです。

組織の言いなりになるのではなく、自分の頭で考え、自分で行動し、自分で結果の責任を取るのです。そんなあなたを全力で応援します。

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