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Explaygroundラボがコロナ対応でチャレンジしたこと

新型コロナウイルスで人々の活動が大きく制約を受け始めてから3ヶ月以上経ちました。Explaygroundでは「遊びから生まれる学び」を旗印に、没頭する中から学びを生み出す活動や、それを支援する活動を「ラボ」として40個近く立ち上げてきましたが、それらのラボもこのコロナの影響で大きな制約を受けています。それに加えて、各ラボメンバー自身も仕事や生活が大きく変わってしまいました。たとえば、ラボのリーダーやファシリテーターなどに大学教員が多数関わってくださっていますが、大学がオンライン授業となったため、担当する授業のやり方やコンテンツをすべて作り直すという作業に追われています。在宅で休校中の子供の相手をしながら仕事もして、という人も急増しました。

そのようなメンバー側の状況変化に加え、幾つかのラボは子どもたちとの活動だったり、教育機関とのコラボ活動だったりするものもあり、それらは活動自体がそのままではできなくなってしまいました。

そのような状況の中、幾つかのラボはそれまでのやり方とは違う、新しい活動にチャレンジしています。今回は、そのような新しい活動を始めた3つのラボのリーダーの人にお話を伺い、動画に収めました。

オンラインの読書空間を作ってみた (Möbius Open Library)

Möbius Open Library (略称:MOL)は、学芸大附属図書館で働くななたんがリーダーのラボです。未来の図書館のあり方を想像しつつ、それに留まらず、知のライフサイクルをどう新しくしていくか、という壮大なテーマに取り組んでいます。今回のこの記事を書いているフジムーも活動に参加しています。コロナ前のMOLは、知が生まれ循環するライフサイクルの箱庭的実験として読書から文脈を作り、それを互いに刺激し合う実験「PechaKucha from 3 Books」などを行ってきましたが、そういった実験もままならなくなり、それどころか世の図書館や学校も入れなくなってしまったので、子どもたちや人々が本に親しむ機会自体も取り上げられてしまうという状況になりました。

そのような状況下でMOLが取り組んだのが、オンラインに読書や本との出会いの空間を作るという2つの取組み、「朝読書ルーム」と「デジタル書架ギャラリー」です。その内容はこちらの動画をご覧ください。

朝読書ルーム」は、主に小学生などの子どもを対象に、平日朝の特定の時間帯にzoomテレビ会議の場を提供し、各自そこに入ってカメラオン&マイクオフで読書をする、というシンプルな企画です。ただ読書するだけなら独りでもできそうなものですが、多くの人が我が身を振り返れば分かるように、独りでいつでもできるとなると(たとえ多少楽しいことでも)なかなかやらないものですし、それ以前にこのコロナの非日常でストレスフルな状況だと生活リズム全体が乱れてしまいがちです。そこにこのシンプルな企画が意外とフィットして、参加した子どもたちの親からは「朝の生活リズムが整った」「読書の後に勉強する流れができた」などと好評をいただきました。子どもたちも互いに自分の読んでいる本のタイトルを教え合ったりしてちょっとした遠隔コミュニティの場になったようです。

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もう一つの取り組み「デジタル書架ギャラリー」は、本との出会いの場をオンラインに作る試みで、最近始めたばかりの活動です。このステイホームの状況では、何か面白い本を、と思ってもオンライン書店で検索するのが中心となり、図書館や書店で書棚の間をブラブラしながら、ふと目についた背表紙から手にとったり、たまたまその隣にあった背表紙に目が行ったり、という出会いが乏しくなってしまいました。それに学芸大図書館(正式名称:東京学芸大学附属図書館)は教育に関する本がとても充実しており、「えっ、このトピックについてこんなにたくさんの本があるの?」ということもしばしばあります。そうした品揃えの背表紙を一覧できる機会はなかなか貴重なので、何とかしてその片鱗でもオンラインで実現したい、という想いから、試しに思いついたことをやってみよう、というプロジェクトです。普通のお仕事では、思いつきを企画にして実施するまではなかなか大変なのですが、Explaygroundは身軽に動くのがモットーなので、とにかくやってみようと。私フジムーも Unity と WebGL を使った「3D書架」の試作で参加しました。

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上記の動画インタビューの後半では、他のラボやExplayground事務局メンバーとのディスカッションが収録されています。その中で面白かったのは、「論文になる一歩手前」の情報についての話。図書館に収められているのは、出版社や学会などの査読や編集が入ったものであり、だからこそ信憑性が高かったり情報が系統だっていたりします。一方でインターネットは玉石混交だけど図書館には無い面白さもある。今後の「新しい知の循環」を考えていくには、その両方を兼ね備えた、あるいは双方の間隙を突くようなアイディアが求められるのかもしれません。

インタビューの中でもありましたが、今回の取り組みはコロナ状況下での「間に合わせ」に終わるのではなくその後のあり方にも繋がっていく取り組みであるなあ、というのがその場での共通の認識でした。

次回は変人類学研究所のチャレンジを紹介します。

(フジムー)

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