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いまの時代の研究者にはとてもなれない

AIが論文のサマリーを数秒もかからず出してくれるという。

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大昔、自分を研究者と言っていた時があった。自称研究者というわけでもなく、まがりなりにも企業の中央研究所の研究者だったし、履歴書にもRESEARCH SCIENTISTとか書いたりしてたので、まあ研究者だったと思う。

研究者だったときは、とにかく頑張っていっぱい論文を読んでアイデアを出してそれを元に実験をして、実験結果だって論文をたくさん読んだり同僚と議論したうえで自分の頭で比較分析して、その結果を(不得意な)英語を使って論文に書いて投稿する、というのがルーチンだった。英語の論文を一つ読むのにも恐ろしく時間がかかるのでいっぱい読むのは大変だったし、実験もすごく時間がかかり、そして論文を書くといったらさらにものすごく長い時間とエネルギーを使った。

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今は、AIに英語論文のPDFをアップロードして日本語サマリーお願いとすると概要が数秒で出来上がってくるらしい。AIに論文のPDFを読ませて、次の研究テーマのアイデアも出してもらえるらしい。そのテーマでAIがバーチャルで実験して結果をすぐにだしてくれるかもしれない。その実験結果をAIが分析し英語どころか何語の論文にでもしてくれるかもしれない。

そんな大量のAI論文を査読する人も大変だなって、査読の人もAIを使ってるのか。AIをつかって査読した論文のコメントを研究者に送り返すのかもしれない。

そして研究者はまたAIを使ってコメントを反映させた修正論文を作る。全部AI間のやり取りで完結してしまうのかな。

大学の先生達もそうやってAIを駆使した論文をせっせと書いて、その論文を元にせっせとAIで申請書を書いて外部資金もらって、それを短時間でどんどん繰り返したものを業績としてもっといい(給料の高い)仕事を目指すんだろうか。世界中でみんな同じように同じようなAIを使ってこれをやってるなかでどうやって違いをだして競争していくのだろう。どのAIプログラムを使うかで、どう組み合わせるかで違いをだすの?    

研究畑から離れて長いので現状は全く知らないので想像でしかないけど、今の時代の研究者って昔とは大違いの大変さがあるなあ。


論文に関する追記

アメリカにいた時にDRPRの研究者と仕事をしたことがあった。「この論文を探したい」とみせられたリストの論文はどれも昔の論文で、オンラインはもとよりそこらの大学の図書館でコピーできるような、というか最先端でも秘密でもなんでもない有名な古い論文だった。とても優秀な研究者なのに生まれた国のせいでそこらの大学生でも5分でたどり着く論文すら入手できない惨めさと、国と関係ないその人の純粋な知識の渇望の辛さと、そしてその優秀な研究者の人生を考えたらなんだか悲しかった。