Hiroo Kobayashi

遠くでも、近くでも、心に響く鉄道風景を求めて。日常の中に真実があると信じて、丁寧に向き…

Hiroo Kobayashi

遠くでも、近くでも、心に響く鉄道風景を求めて。日常の中に真実があると信じて、丁寧に向き合いたい。

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はじめに

大学生だった1980年代、国鉄が解体される前後の時期を北海道への旅に費やしました。小さい頃からの憧れだった「原野風景」を天北線に見出して、ずっと沿線に引きこもって過ごしていました。 就職した1990年代、北の大地から海外へ目を向けて蒸気機関車を訪ね歩きました。中国をベースにアジア、南米、ヨーロッパなどの現役蒸機の最後に間に合い、幸せな10年を過ごしました。 家族ができた2000年代、目線を足元に移して名鉄パノラマカーを追いかけました。近くにも夢中になれるものがあることを発

    • 台湾の客車急行を追って #9

      台南で501次を見送ると、午後の554次まで時間がある。今日は土曜日ということで旧新営糖廠(砂糖工場)の「五分車」を見に行く。台南から30分ちょっとの新営駅を出て、台南方向に少し歩くとナローの線路が敷かれている。 もともとこの先のヤード・機関区のあるところから郊外へDL牽引の観光列車が走っていたが、その区間は運休中。逆に台鉄駅側に延伸(復旧)して1kmくらいの短い区間を週末に運行中とのこと。 車両も近隣の別の製糖工場で保存されていた気動車を修繕して持ってきて運転している。

      • 台湾の客車急行を追って #8

        23時をまわって彰化駅近くのホテルに投宿。すぐ横の深夜までやっているローカル食堂で遅い夕食を摂る。台湾の食堂は1品の量が少なめで助かる。足りなければ追加すればいいし、二人で何種類かの料理を気軽に試すこともできる。 3日目の朝。今日で乗り鉄は完了の予定。気合を入れて501発の区間車で出発する。まずは夜明け前のブルーな時間を目指して二水駅へ。普通の駅撮りではあるが、501次を一番好きな時間帯を押さえる。 いったん反対方向(台北方)に戻って、田中から二水を通過する自強号で折り返

        • 台湾の客車急行を追って #7

          台東では2時間弱で折り返し。街外れに新駅ができていて、市街地まで行く時間がない。仕方なく、駅構内の点心とコンビニのビールで一服してから、653次彰化行きに乗る。この列車は彰化まで10時間以上のロングランとなる。 花蓮まで乗車して後続の自強で羅東へ、さらに区間車に乗り換え頭城へ。台東から花蓮までは晴れていたが、海沿いの険しい区間を抜けて宜蘭平野に出ると雨だった。台湾は小さいイメージだが、エリアごとに気候が異なるようだ。 頭城は花蓮以北のローカル感は薄くなり、大都市近郊区間の

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          台湾の客車急行を追って #6

          深夜1時をまわり、花蓮駅を出て近くのホテルにチェックイン。駅前のコンビニでおにぎりを買って部屋で食べる。翌朝も早いので、早々に就寝。ようやく長い一日が終わる。 翌朝は花蓮635発で台東まで乗車。昨日の花蓮行きの編成がそのまま充当される。花蓮から先は広い谷に広がる田園地帯を進んでいく。白い石でできた川幅の広い河原を何度も渡る。 小さな駅でも荷物の積み下ろしがあり、係員がホームで待機している。量的には大したことはないが、荷物車が機能しているシーンを見ることができて満足。乗客は

          台湾の客車急行を追って #6

          台湾の客車急行を追って #5

          宜蘭を11分後に出る特急「普悠瑪(プユマ)」256次に乗ると、終点の花蓮に日付が変わって017着。蘇澳新で554次を追い抜いていて、048着の列車をホームで待つ。到着は1番線で、荷物扱いの事務所が隣接している。 誰もいない深夜のホームで待っていると、荷物扱いの係員が話かけてきた。本日の最終列車でこの後接続列車は無いからだと思うが、荷物車の写真を撮りたいと(なんとなく)伝えると理解してくれたようだ。 明朝の602次台東行きにそのまま引き継ぐらしく、荷物を降ろした後、積み込み

          台湾の客車急行を追って #5

          台湾の客車急行を追って #4

          彰化で554次を見送って、後発の1736発の区間快車に乗る。この先、海線と台中を通る山線に分岐して「莒光」は海線を進み、区間快車は山線へ。区間快車は通勤電車だが、この区間で「莒光」を追い抜いて、新竹に1904着。16分の先着となる。 新竹駅は日本統治時代の駅舎が健在で、その塔のような部分がライトアップされていた。明るい時間に駅舎もじっくり撮ってみたいものだ。ここで編成写真を押さえておく。電気機関車に荷物車2両、その後ろに客車が7両連なっている。 1923に発車した554次

          台湾の客車急行を追って #4

          台湾の客車急行を追って #3

          「莒光」は、本線系の全ての区間で運転されてはいるが、すでに上下12列車が残るだけとなっている。それとは別に、週末には潮州~台東に1往復の夜行列車が運行されている。 「莒光」の一部列車には荷物車が連結されていて、台湾でも最後の荷物の取り扱いが行われている。潮州554次花蓮ヨ602次台東653次彰化ヨ501次潮州で青い荷物車2両が554次~602次の機次にて運用されている。 今回の旅ではまずこの荷物車を鉄道に乗って追いかけて、後半はレンタカーで沿線から撮影することとした。最初

          台湾の客車急行を追って #3

          台湾の客車急行を追って #2

          桃園の空港からメトロに乗って高鐵桃園駅へ。この区間も以前はバスだったので、かなり便利になった。メトロは、さらに台鉄桃園駅に向けて工事中のようだ。ここから、いわゆる「新幹線」で台中までワープする。 新幹線=高鐵は在来線=台鉄と必ずしも接続しておらず、乗り継ぎがしにくい駅もあるが、高鐵台中駅は台鉄新烏日駅と接している。ここでTR Passという台鉄全線乗り放題のチケットを購入する。 TRパスは、特急列車まで乗り放題なのだが、基本全席指定席なので乗車列車の指定券を事前に発行して

          台湾の客車急行を追って #2

          台湾の客車急行を追って #1

          2019年12月にインドを旅して以来、はや4年が経過した。インドから帰ってきて、次は春までに台湾に行くつもりだった。「莒光」という名前の(たぶん)急行が客車で残っていて、ずっと気になっていた。 日本ではもう絶滅してしまったが、世界では客車の優等列車は今でも珍しくない。中国大陸は高速電車化が進みつつも客車列車も健在であるし、ベトナムやタイ、ミャンマーなどの東南アジアでも客車が主流である。 台湾では、日本的に電車特急化で客車の急行がゆっくりと減っていたが、台湾を一周する路線に

          台湾の客車急行を追って #1

          写真展「M monochrom × SL2-Sの視点」(大阪編)やります #4

          夏に東京ピクトリコで開催した写真展「M monochrom × SL2-Sの視点」を大阪でも開催することになりました。南森町アートギャラリーMAGにて10月19日(木)から24日(火)まで開催します。プリントをぜひ見にきていただければ幸いです。 無事本日よりスタートしました。 素敵な駅舎やホーム上の構造物が無数に存在する富山地鉄。分岐駅である寺田にも立派なホーム上屋がある。3番線側には木造でデルタ型に広がる屋根が2番線にかけて架かっている。 雪の日に訪ねてみるとその意味が

          写真展「M monochrom × SL2-Sの視点」(大阪編)やります #4

          写真展「M monochrom × SL2-Sの視点」(大阪編)やります #3

          夏に東京ピクトリコで開催した写真展「M monochrom × SL2-Sの視点」を大阪でも開催することになりました。南森町アートギャラリーMAGにて10月19日(木)から24日(火)まで開催します。プリントをぜひ見にきていただければ幸いです。 もう1枚南海の写真を出展。住吉東駅はなんばから最初の待避線のある駅。構内すぐに踏切があり、停車中の電車と通行人を絡められる場所である。何度か行くうちに雨の傘のイメージが固まってきて、雨が降るのを見計らって通っていた。 退避する電車

          写真展「M monochrom × SL2-Sの視点」(大阪編)やります #3

          写真展「M monochrom × SL2-Sの視点」(大阪編)やります#2

          夏に東京ピクトリコで開催した写真展「M monochrom × SL2-Sの視点」を大阪でも開催することになりました。南森町アートギャラリーMAGにて10月19日(木)から24日(火)まで開催します。プリントをぜひ見にきていただければ幸いです。 いま、復刻カラーで話題の南海6000系。ステンレスの無骨なボディだが、顔や裾には曲線が用いられ、こだわったデザインであることがわかる。本当にロングライフな電車で、私が大学時代に住吉区で過ごした30年以上前とあまり変わらずに活躍してき

          写真展「M monochrom × SL2-Sの視点」(大阪編)やります#2

          写真展「M monochrom × SL2-Sの視点」やります(大阪編)#1

          夏に東京ピクトリコで開催した写真展「M monochrom × SL2-Sの視点」を大阪でも開催することになりました。南森町アートギャラリーMAGにて10月19日(木)から24日(火)まで開催します。プリントをぜひ見にきていただければ幸いです。 かつては自分の全てだった北海道。すっかり足が遠のいていたが、キハ40が3月のダイヤ改定で引退との話しを聞き、久しぶりに渡道(という言葉も懐かしい響きだ)してみた。 釧路から先の「花咲線」、所定ではキハ54が運用されキハ40は走らない

          写真展「M monochrom × SL2-Sの視点」やります(大阪編)#1

          ヒマラヤのナローゲージ(KANGRA VALLEY RAILWAY #2)

          KANGRA VALLEY RAILWAY(カングラ渓谷鉄道)はインド北部ヒマーチャルプラデシュ州を走る軌間762mmのナローゲージ鉄道。起点のPathankotはパンジャブ州にあり、ジャンムーからスリナガル(未開通)方面へ向かう路線上にある。 機関庫訪問の後、ローカルな食堂でカレーの朝食。カレーの日々が始まる。今回は運転手付きの車を手配しているので、オーダーに悩むことはないのだが、選択肢はカレー一択(カレーの種類はいろいろあるにはあるのだが)となる。駅に戻り、朝の列車を待

          ヒマラヤのナローゲージ(KANGRA VALLEY RAILWAY #2)

          ヒマラヤのナローゲージ(KANGRA VALLEY RAILWAY #1)

          ヒマラヤの麓を走るナローがあることに気づいたのはいつのことだったか?蒸気機関車でないテーマを求めて、旅の目的地を時折ぼんやり考えていた。 だいたいいつも行先はひらめくもので、この時もそうだった。 2019年11月、コロナのことはまだ露知らず、インドへ旅立った。インドはダージリンに行って以来、20年以上ぶり。JALの直行便でデリーに着いて、迎えの車で市内へ入る。街の雰囲気は、カオスではないがやはりインドそのもの。クラクションと割り込み、渋滞が道路を埋めていた。旅に出た、という

          ヒマラヤのナローゲージ(KANGRA VALLEY RAILWAY #1)