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ブランディングは、企業の万能薬じゃない

みなさん、こんにちは。EXIDEA(エクシィディア)の江口です。前回は、ブランディングと利益の関係について書きましたが、今回は、ブランディングの進め方について書きます。

ブランディングの進め方

ブランディングを行う対象(企業・商品・地域など)によって詳細は異なりますが、私が手掛けるブランディングでの主な進め方は、以下の図の通りとなります。

基本的なブランディングプロセス

ブランディング対象によって各項目の実施有無や優先度は異なります。例えば、農作物や伝統工芸など、歴史が関わる商品であれば、文献調査の比重は重くなります。一方で、企業ブランディングでは、労務環境系の組織マネジメントと課題を分ける必要があるので、社内インタビューや従業員アンケートを行うことが多いです。このように具体的に行うことは変わりますが、インプット〜概念化〜具現化と発信〜浸透化の順序は変わらず、どのブランディング案件でも必要不可欠となります。

その課題はブランディングで解決できるのか?

本当は各項目について、説明した方がいいのでしょうが、それはご依頼いただく方の特権とさせていただき(笑)、ここでは大別された項目において鍵となる重要項目について書こうと思います。

まずは、インプットにおいて重要項目となるのが「課題の振り分け」です。ブランディングが失敗する原因はいくつかありますが、そのうちのひとつに「ブランディングで解決できないことを、ブランディングで解決しようとしている」というものがあります。言い方を変えると、目的に対する手段が間違っている状態です。

例えば、生じやすいケースとしては、「従業員の離職率の改善」をブランディングに求めてしまうことです。インナーブランディングという言葉があるので誤解されやすいのですが、ブランディングで離職率は改善できません。なぜかと言うと、離職率は組織マネジメントで解決する問題だからです。

ブランディングによって、採用前後におけるカルチャーギャップを発生させない採用は可能となり、これが原因による離職は減少させることが可能です。しかし、企業内のカルチャーに納得していても、労働環境や給与、職場の関係性が悪ければ、従業員は離職してしまいます。ブランディングによって、ビジョン・ミッション・バリューを策定したけれど、離職率が改善されないという事態に陥るのはこのためです。そのため、根本的に離職率を改善したければ、組織マネジメントを改善するしかないのです。

他にも、「WebサイトにおけるCVやCVRを改善したい」というものもありますが、これはブランディングではなく、単なるWeb施策(Webリニューアル)です。この後、ブランディングで改善できる指標を記述しますが、短期的な成果をブランディングに求めるのは間違っており、ブランディングが失敗する原因にもなります。

以上のように、ブランディングで解決できることと、解決できないことは明確に存在しており、まずは解決したい課題が、どのような方法で解決できることなのか分類する必要があります。

ブランディングで解決できることと解決できないこと

ブランディングで解決できることとは?

1:意図したコミュニケーションによるファン化

それでは、ブランディングで解決できることは何でしょうか? 

一つ目は、リードやユーザーに対して、自社が望むようなブランド価値を感じてもらうことです。リードというのは、まだユーザー(お客)になっていない見込み客のことで、商品やサービスを購入しそうな人たちのことです。ブランディングをすることで、リードに対しての評価や印象を誤解なく、自分たちが望んだように感じてもらい、購買する価値のあるものとして認知しやすくなります。

ブランディングをすると、ファンを作りやすくなる

こういったことは、見込み客であるリードに対する施策だけでなく、実際に商品やサービスを利用しているユーザーに対しても、同様のことが言えます。ブランディングによって、顧客目線の情報発信や商品開発を行うことで、使い心地がよく、他の人たちに薦めたいと思わせたり、実際に薦めてしまったりと行動変容しやすくなります。

もちろん、商品やサービスが良くても、接客した従業員の対応が悪かったり、カスタマーサポートのホスピタリティが劣悪なものであれば、誰も薦めたいとは思わないでしょう。ブランディングでは、こういったホスピタリティもチェックしなければなりません。ブランディングチームは大忙しです(笑)。

2:社内浸透による生産性向上

二つ目は、自社組織に対してブランドマネジメントを行うことで、ブランドアイデンティティを浸透させることです。これは先ほどの図のStep4に当たるところですが、ブランドの考え方や伝え方を社内に浸透させることで、コミュニケーション毀損やブランド毀損のない施策を、効率よく検討・実施することが可能となり、事業の生産性を向上させることができます。

ただし、社内浸透で気をつけなければならないことがあります。ブランドアイデンティティが社内に浸透するためには、社内研修を定期的に行ったり、施策やアウトプットの監査的役割を持ったブランドマネジメント組織が必要となり、継続的な取り組みをしなければなりません。

目の前の利益を役割として担いやすい営業やマーケティングの部署が、その誘惑や義務に負けずに、長期的な利益を優先するのは困難を極めます。それをブランドマネジメント組織が、旗振り役となって導くのです。

ブランドマネジメントと組織マネジメントの違い

さて、今までブランディングフローでの重要項目について書いてきました。

先述したように、ブランドマネジメント、組織マネジメント、デザインリニューアルではそれぞれ解決する内容が異なります。ただし、デザイン業界内でも、ブランディングの対応領域や、ブランディングで効果を発揮するための方法を、誤解している方が多いのが現状だと思います。先ほどの表をご覧いただければわかる通り、売上に関するブランディングの指標となるものはLTV(Life Time Value:ライフタイムバリュー)であり、消費者である顧客の生涯に対する提供価値となります。

ブランディングのKPIになりやすいもの

つまり、ブランディングにおける指標となるものは長期間にわたるものであり、ブランディングは一生続いていくものになります。そのため、逆説的な言い方になってしまいますが、ブランド価値を感じる企業や商品やサービスとは、いいブランディングを行っていて、ブランド価値を感じなかったり、悪いイメージのある企業や商品などは、悪いブランディングをし続けていることになります。

ブランディングとは、こうした企業のイメージをいいものに変えていき、ファンになってもらうことと言えます。そして、実態が伴わないイメージ戦略では、内部からの評判が悪いままですので、組織マネジメントにも着手することになります。

同様に、ブランディングを提供していると、様々な領域に対応することになります。その理由は、本当の課題とその解決方法は何なのか、まずは調査をして、洞察するところからはじまり、これらに対応したことを実践していくためです。つまり、ある特定の方法やフレームワークに無理やり当てはめて考えることはしません。常に、柔軟に、課題という波を乗りこなしていくイメージです。

もしも、ブランディングでお困りであったり、提案された内容に違和感を感じたら、ぜひEXIDEAにご相談ください。一緒に課題という波を乗り越えていきましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
ブランディングって、たいへんだけど、たのしいんです。